ファウンドリ企業の投資加速が生み出す、日本企業の新たなビジネスチャンスとは?

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2025年現在、半導体産業は地理的なリスクや供給網の再構築を背景に、製造拠点の多極化が進んでいる。米国のCHIPS法をはじめとする各国の政策支援により、TSMC、Intel、Samsungなど海外の主要ファウンドリ企業は、アジア以外の地域への投資を加速させている。この動きは、装置・材料・エンジニアリング分野で高い技術力を持つ日本企業にとって、新たなビジネスチャンスとなり得るのはないだろうか。

本記事では、主要地域での最新投資動向を整理し、これを新たなビジネスチャンスとするために、日本企業がどのような戦略を取るべきかを考察する。

世界各地で進むファウンドリ投資と日本企業の参入機会とは

ここでは、世界各地で進む主要ファウンドリ企業の投資動向を地域別に見て、それに対し日本企業は如何に対応すべきかを見ていく。

1.米国:TSMCとIntelが主導する大規模投資

米国では、CHIPS and Science Actの支援を受け、TSMCがアリゾナ州フェニックスに3つの工場を建設中。第1工場は2025年前半に4nmチップの量産を開始予定で、第2工場では2028年に2nmチップの生産を開始する計画だ。総投資額は650億ドルを超え、米国史上最大の外国直接投資となっている。

また、Intelもオハイオ州ニューアルバニーに2つの先端工場を建設中で、初期投資額は280億ドルに上る。このプロジェクトは、米国最大の民間投資の一つとされ、将来的には1000億ドル規模に拡大する可能性がある。

これらの動きにより、装置・材料・建設・人材育成などの分野で、日本企業の参入機会が拡大している。特に、前工程装置やクリーンルーム関連技術に強みを持つ企業には、大きなビジネスチャンスが期待される。

2.欧州:TSMCとIntelがドイツに新工場を計画

欧州では、TSMCがドイツ・ドレスデンに自動車・産業向けの特殊技術工場を建設する計画を発表した。この工場は、Bosch、Infineon、NXPとの合弁で、2024年後半に建設を開始し、2027年末までに生産を開始する予定。

また、Intelもドイツ・マクデブルクに300億ユーロ規模の先端工場を建設予定で、ドイツ政府から100億ユーロの補助金を受ける見込み。

欧州市場では、環境規制やサステナビリティへの対応が求められる中、日本企業の高効率装置や省エネルギー技術が評価されている。また、現地でのパートナーシップ構築や法規制対応も重要な課題となる。

3.アジア:インドとシンガポールでの新拠点

アジアでは、インド・グジャラート州にMicronが組立・テスト工場を建設中で、第一期の建設は2023年に開始された。

また、UMCはシンガポールに新たな300mmファブを建設中で、2024年末に生産開始を予定している。

これらの地域では、後工程装置や材料、クリーンルーム構築などの分野で、日本企業の技術力が求められている。現地の品質基準や納期対応力が、競争力の鍵となる。

世界の再編成に日本企業はどう挑むか

このように、半導体産業の地理的な再編が進む中、日本企業はそれに対しどういう戦略で挑むべきだろうか。それには以下のような戦略が必要だと思われる。

・地域ごとの投資計画と補助金制度の正確な把握

・現地の環境・安全・品質基準への迅速な適応

・技術対応力だけでなく、柔軟なサプライ体制の構築

これらの戦略を通じて、日本企業はグローバルなサプライチェーンの中で存在感を高めることが可能となる。特に、装置・材料・エンジニアリング分野での高い技術力を活かし、各地域のニーズに応じたソリューションを提供することが鍵となるのだ。

                  TMH編集部 坂土直隆

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