AI 時代の Apple の挑戦 「A シリーズ」・「M シリーズ」は未来を築けるか?

主要企業のビジョン戦略
この記事を読むのにかかる時間: 3

AI時代のAppleの挑戦

AI 技術の進化に伴い、半導体業界は大きな変革を迎えている。この変革に対応するため米国Apple(アップル) は、自社設計の SoC(System on Chip:システム・オン・チップ)である「A シリーズ」と「M シリーズ」を発表した。「A シリーズ」は、iPhone、iPad、iPod touch、Apple TVデジタルメディアプレーヤーの一部モデルに搭載されており、また「M シリーズ」は、MacやiPad向けに搭載されている。そして、同社はこの二つのシリーズを通じて AI 処理能力を強化し、独自の戦略を展開している。特に GPU の最適化と AI アクセラレーション技術の向上は、Apple の競争力の源泉となっている。
本稿では、「A シリーズ」と「M シリーズ」を中心に、Apple の AI 半導体戦略を分析し、今後の展望を探る。

A シリーズ・M シリーズの進化と Apple のAI 強化戦略とは

1. A シリーズの進化とAI機能の動向

Apple は 2010 年に、iPhone 4、iPad (第1世代)、Apple TV (第2世代)に搭載するためのSoC「Apple A4」を発表した。これが「Aシリーズ」のスタートであった。以来、独自の開発を続け、2024年9月には「A18/A18 Pro」を発表している。
近年の iPhone 向けA シリーズには、AIや機械学習の処理を高速化するためのチップである「Neural Engine(ニューラルエンジン)」が搭載されている。また、2023年の「A17 Pro」は、3nm プロセスを採用。AI 演算性能が前世代比で 20%向上した。さらに、「A18/A18 Pro」は大規模生成モデルの実行に最適化された16コアのNeural Engineを搭載しており、機械学習における速度を最大2倍に高速化している。

2. Mシリーズの進化とAI機能の動向

一方、M シリーズはMacやiPad向けに開発されるチップSoCファミリーとして、2020年発表の「Apple M1」からスタートした。シリーズ当初より16コアのNeural Engineを搭載しており、2024年発表の最新製品「Apple M4 Pro/ Max 」は、前世代より最大2倍高速なNeural Engineはもちろん、同社の生成AIサービス「Apple Intelligence」に対応するAI機能も搭載。文章の書き直し、校正、要約、画像の編集、メモの作成、文字起こし、検索などにも力を発揮する。

このような進化は、Apple がスマートフォンや PC の枠を超え、AI 半導体の分野で存在感を高めていることを示していると言えよう。

3. Apple の GPU 戦略と独自開発の理由

また、Apple は、2020 年の「Apple M1」の発表とともに、同社独自 GPU の開発を推進、米NVIDIA(エヌビディア) や 米AMD (エーエムディー)、米Intel(インテル)といった大手AIチップにメーカーに依存しない戦略を採っている。
この戦略では、 AI 処理に特化した設計による特定の AI 推論処理を高速化することに注力している。このためハード・ソフトの最適化、つまりiOSとmacOS を統合することで高効率化を目指しているのである。
また、サプライチェーンの独立性を向上することで外部ベンダー依存を軽減し、長期的なコスト削減を図っている。

AI 半導体市場での Apple の競争力とは

現在、AI 半導体市場では、NVIDIA や AMD がリードしている。これに対抗するためApple は「オンデバイス AI」、つまりスマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイス上で直接AI処理を行う技術に特化することで差別化を図っていると言える。これは、同社がもともとモバイルデバイスのメーカーであり、チップを搭載する側の技術は他の追従を許さないことからだろう。
このような戦略でApple は、 2024 年から 2026 年にかけて 10 億ドル以上の AI 半導体投資を計画(出典:Bloomberg)している。この動きは、Apple が AI 半導体分野での存在感をさらに強めることを示唆している。

Apple の AI 半導体戦略の未来とは

以上の考察からApple の AI 半導体戦略は、以下のような展開が予測される。

  • M シリーズのさらなる AI 最適化:次世代チップで AI 専用アクセラレータを強化。
  • AI 専用 SoC の開発:Siri や Vision Pro などへの応用が進む可能性。
  • クラウド AI との統合:オンデバイス AI とクラウド処理のハイブリッド化が進む。

Apple は、AI 半導体市場において独自の道を切り開いている。今後の戦略が業界全体に与える影響は大きく、その動向から目が離せない。

TOP
CLOSE
SEARCH