28nmの先に進めない?レガシープロセスの限界とその打開策とは

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未来が不透明なレガシー半導体 

近年、半導体業界ではレガシープロセス(特に 28nm以上のノード)の重要性が再評価されている。大手ファウンドリである台湾のTSMC(台湾積体電路製造股份有限公司) や 米国のGlobal Foundries(グローバルファウンドリーズ) などは、28nm や 40nm プロセスの生産能力を拡張する方針を打ち出しており、市場ニーズは依然として強い。
しかし、「28nm の壁」とも呼ばれる技術的・経済的な制約が存在し、これを打破しない限り、レガシープロセスの持続的発展は困難であると思われる。
本記事では、レガシープロセスが直面している課題と、これを克服するための技術的アプローチ策を掘り下げる。 

レガシー半導体に立ち塞がる28nm の壁とは? 

レガシー半導体に立ち塞がる28nm の壁とは? 

「28nmの壁」とは、半導体の微細化の段階における、コストと性能のバランスの大きなターニングポイントを指す。例えば、28nmと16nmの間には、性能が向上する一方でコストも上昇するという大きな壁が存在する。これを「28nmの壁」という。
そして、28nm以降のノードでは、トランジスタスケーリングの恩恵が縮小し、いくつかの要因がこの壁を形成していると言える。それを以下にまとめる。

  • リソグラフィ技術の限界: 28nm以下の微細化にはEUVリソグラフィが必要となるが、高額な設備投資が求められるため、レガシープロセスでは導入が難しい。 
  • コスト効率の低下: 28nm以下のプロセスでは製造コストが大幅に増加し、中規模のデバイスメーカーにとってROIが低下する。 
  • 電力と熱問題: リーク電流や配線遅延が深刻化し、従来の設計手法では性能と消費電力のバランスが取りにくい。 

2. レガシープロセスが優位を保てる用途 

とは言え、レガシープロセスは、特定の用途で依然として優位性を保っている。以下にその用途をまとめる。 

  • コストバランスと電力効率: IoTデバイスやアナログ半導体では28nm以上のプロセスが最適であり、微細化よりも生産コスト削減が重要となる。 
  • 自動車・産業用途でのニーズ: 車載半導体や産業用チップでは長寿命と信頼性が求められ、レガシープロセスが適している。 
  • サプライチェーンの安定性: 先端ノードに依存しすぎると供給リスクが増すため、多くの企業がレガシープロセスの活用を再検討している。 

3. 「28nm の壁」を超えるための技術的アプローチ策とは

これらの課題に対し、業界はただ手をこまねいているだけではない。この壁を打破するために業界が取り組んでいる各技術的アプローチ策を以下にまとめる。 

  • FD-SOI(Fully Depleted Silicon on Insulator) 低消費電力・高性能を両立し、特にIoTやエッジコンピューティングに適している。 
  • 異種統合(Heterogeneous Integration) 3D IC技術を用いて、先端ノードとレガシープロセスのチップを統合することでコストと性能のバランスを最適化する。 
  • RISC-Vとカスタム設計の活用 カスタムプロセッサ設計の台頭により、レガシープロセスを活かした競争力のあるチップ開発が進んでいる。 

レガシープロセスの未来を拓く鍵とは? 

このように「28nm の壁」は確かに存在するが、これは決して終わりを意味するものではない。前述したようにFD-SOI や異種統合などの技術を活用し、既存の製造設備を活かす戦略がレガシープロセスの未来を拓く鍵となるだろう。 

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