技術職から戦略職へ──半導体業界でキャリアを再構築する方法

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エンジニアの価値は経営でも発揮できる

📍【SEMICON.TODAY編集部 独自取材】

近年、半導体業界では技術力だけでなく、経営的視座や戦略的な意思決定力が求められている。経営企画や新規事業開発、アライアンス推進といった“戦略職”への関心は、技術バックグラウンドを持つ人々の間でも着実に高まりつつある。

日本政府の支援拡大、グローバルなサプライチェーンの再編、そしてAIなどの先端技術との融合──これらの構造変化が、技術者のキャリアに新しい選択肢をもたらしている。

従来は「技術を深める」キャリアが主流だったが、いま求められているのは、「現場の知見を戦略に変換できる人材」だ。技術と経営の間を繋ぐ“橋渡し人材”──それが、これからの半導体人材にとっての新しいプロファイルである。

キャリア越境のリアル:SBIインベストメント 髙木氏に聞く

こうした動きの一例として、今回取材に応じてくれたのが、SBIインベストメントで半導体分野の投資を担当する髙木氏である。彼は大阪大学基礎工学部で物性物理を学び、量子鍵配送(QKD)という先端領域の研究に取り組んでいた。

新卒で入社した日立ハイテクでは、山口県の現場でプロセスエンジニアとしてエッチング装置の開発に従事。その後、米国ポートランドに3年間赴任し、大手半導体メーカーとの共同開発に携わるなど、まさに「技術の現場」を知る人物だ。

学生時代には株式投資に興味を持ち、仕事の合間に簿記の資格も取得した。こうした経験が、ファイナンスへの初期的な理解と関心を育むきっかけになった。また、エンジニア時代には、顧客の課題を分析し技術で解決する“技術コンサル的”な業務を通じて、技術だけにとどまらない価値創出のあり方にも気づいた。

自分の技術的知見をもっと広く社会に活かせる道はないかと模索する中でVCという選択肢に辿り着きましたちょうどSBIが半導体分野に注力し始めたタイミングだったのも大きかったです

この転機は、専門性を活かしたいという意欲と、業界の構造変化というタイミングが重なった結果だった。VCならば、自身の技術的バックグラウンドを活かしながら、資本と技術の間に立ち、より広範な産業変革に携われる──そう感じたという。

現在、髙木氏は半導体・通信領域を中心としたスタートアップを担当している。実際の投資プロセスでは、ソーシングから始まり、DD(デューデリジェンス)を経て投資委員会へと進んでいく。さらに、投資実行だけでなく、バリューアップからExitまでの一連の支援もしていくとのことだ。

市場を読む力──“どこで戦うか”を見極める技術者の眼

戦略職を目指すうえで、最も本質的かつ早期に身につけるべき視点は「市場を読む力」だ。技術がどれほど優れていても、それを“どこで活かすか”を見誤れば成果にはつながらない。

だからこそ、「この技術は、どの領域で、誰に、どんな価値をもたらすのか?」という問いを立てる力が、戦略職では第一に求められる。

この視点は、多くの技術職経験者がすでに内包しているケースが多い。たとえば、技術ロードマップや製品開発において培われた構造的思考は、そのまま市場分析や戦略立案にも応用できる。

スマートフォン、自動車、産業機器といった用途別の産業構造や、IDM・ファブレス・ファウンドリといったプレイヤーの役割を理解することで、戦略設計の起点が見えてくる。

一方で、ファイナンスや戦略の基礎知識は、こうした思考を補助する“共通言語”として機能する。経営層や他部門と議論するために必要なのは、高度な専門知識ではなく、「何が論点かを理解し、会話が成立する」レベルの素養だ。

簿記、経済産業省のビジネススキル研修、企業内のBizDev研修制度など、体系的な学びの選択肢は徐々に増えている。

つまり、戦略職に必要な力とは、「技術を使って何をするかを考える力」と「その価値を他者に伝える力」にほかならない。そしてその中心にあるのが、“市場を読む力”、つまり洞察力なのだ。

技術を土台に、視座を変えることで見える世界がある

髙木氏のように、技術という専門性を軸にキャリアを越境した人材は、半導体業界において今後さらに価値が高まっていくだろう。

設計開発現場での経験がVCの仕事にも確実に生きていますだからこそ同じようなバックグラウンドを持つ人にもこの世界に飛び込んでほしいです

この言葉には、技術職として現場を経験した者だからこそ持てる“解像度の高い戦略眼”が、いかに新しい領域でも通用するか──その確信が込められている。

VCや経営企画といった仕事は、決して特別な領域ではない。市場構造や顧客課題を構造的に捉えられる「技術の眼」を持つ人は、戦略職においても真の競争力を発揮できる。

大切なのは、“知らない世界に飛び込む”のではなく、“自分の強みを別の文脈で活かす”という発想である。変化の時代において、自分のキャリアを再構築する力こそが、新たな専門性の証明になる。

(参考:SBIインベストメント株式会社 公式サイト

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