連載:半導体の世界をのぞいてみよう⑧後編 半導体工場は何をしているの?——後工程は「切って、つないで、守って、動くか確かめる」

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前編では、ウエハの上に回路を作り込む「前工程」を見てきました。後編では、前工程を終えたウエハを“使える部品(半導体)”に仕上げる「後工程」を紹介します。

半導体づくりの流れは、大きく分けると次の順番です。
材料(ウエハ)→ 前工程(回路を作る)→ ウエハテスト(プローブ)→ 後工程(切り出し・組立)→ 最終テスト → 出荷

後工程は、見た目は「組み立て」ですが、実際は品質・信頼性・量産性を作る工程です。スマホや車、データセンターで“長く安定して動く”かどうかは、後工程の出来に大きく左右されます。言い換えると、後工程は「回路を部品にする」だけでなく、「部品として壊れにくくし、合格品だけを確実に出荷する」ための仕組みづくりでもあります。

後工程の全体像:チップを「部品」に変える5ステップ

後工程でやることは、ざっくり言うと次の4つです。

1.選ぶ:ウエハの状態で、合格するチップを見分ける(プローブ)

企業の発表でも、後工程の代表的な工程として「プローブ」「組立」「テスト」が並んで語られます。加えて、接続のための「バンプ」も重要な工程として扱われます。

関わる仕事(例)
• 生産技術:工程の流れを設計し、ムダなく回るように整えます
• 装置エンジニア/保全:組立・検査装置の安定稼働、止まりにくい現場を作ります
• 品質保証(QA):合否の基準、異常時の判断、顧客要求への対応を仕組みにします

2.切る:ウエハからチップを切り分ける

「切る」は一見シンプルですが、実務的には“切る前の準備”まで含みます。たとえばウエハを薄くして(薄化)取り回しや放熱を成立させ、切断後にチップを1個ずつ拾い上げて、次の組立工程へ渡せる状態に整えます。ここで欠け・割れ・反りが増えると、その後の歩留まりに効いてきます。

3.まず「合格品を選ぶ」:プローブで、ウエハのまま動作確認

ウエハには、同じ回路のチップがたくさん並んでいます。後工程の最初は、ウエハの状態でチップの基本的な電気特性を測り、合格/不合格を仕分けることです。これが「プローブ(ウエハテスト)」です。

ここでのポイントは、製品としての“すべての使い方”を試すというより、限られた時間で「出荷に回してよい個体か」を見極めることにあります。プローブの結果は、どの位置のチップが合格かを示すマップ(良品マップ)として管理され、後工程で「合格品だけを流す」ための起点になります。

さらに重要なのは、結果をデータとして残し、前工程の改善にもつなげる点です。後工程は「つくる場所」であると同時に、「品質を見える化する場所」でもあります。たとえば不良が特定の領域に偏っていれば、前工程の装置状態や条件の癖を疑う手がかりになります。

関わる仕事(例)
• テストエンジニア:どんな手順で、どこまで確認するか(検査内容)を設計します
• 解析・改善担当:不良の傾向をまとめ、原因の切り分けを支援します
• 製造オペレーション:検査の段取り、ロットの流れを止めない運用を担当します

4.「つなぐ・守る」:外の世界と接続し、壊れにくい形にする

切り分けたチップは、そのままでは機器に載せられません。外の回路(基板)と電気的につなぎ、物理的にも守って、ようやく“部品”になります。

接続の代表例が「バンプ」です。これは、チップ側に小さな突起を作って接続する方式で、量産で安定して作るために工程・装置・検査の組み合わせが重要になります。

ただし、接続方法はバンプだけではありません。用途やコスト、必要な端子数に応じて、ワイヤボンディングとフリップチップ(バンプ接続)を使い分けます。先端品ほど端子数や帯域が増え、熱も厳しくなるため、接続方式とパッケージ構造が性能・歩留まり・供給能力に直結しやすくなります。

また、パッケージは「入れ物」ではなく、衝撃・湿気から守る、熱を逃がす、電気的につなぐなど、いくつもの役割をまとめて担います。加えて、チップと基板では材料の伸び縮み(熱膨張)が異なるため、温度変化で応力がかかります。後工程の“守る”は、単に樹脂で覆うのではなく、熱・応力・湿気といった現実のストレスに耐える形へ落とし込むことでもあります。近年は“先端パッケージ”への投資がニュースになるほど、パッケージが性能や供給網の焦点になっています。

関わる仕事(例)
• パッケージ/実装エンジニア:接続方法や材料、構造を検討し、量産できる形に落とします
• プロセスエンジニア(組立):接続・保護の条件を整え、ばらつきを小さくします
• 材料・信頼性担当:樹脂などの材料や熱の影響を評価し、長期安定性を支えます

5.最後に「確かめる」:テストで“出荷できる品質”に仕上げる

組立が終わったら、出荷前に最終テストを行い、製品としての合否を確定します。ここが「最後の関門」です。

後工程のテストは、ただの動作確認ではありません。量産現場では、限られた時間の中で必要な項目を見切り、品質とスループット(流れる速さ)の両方を成立させます。だからテストは、工程そのものがノウハウになりやすい領域です。テスト時間が長くなるほど安心感は増えますが、生産性とコストには跳ね返ります。どこまで確認し、どこをサンプル検査や信頼性評価に回すかは、製品の用途(車載か、民生か、データセンターか)でも変わります。

また「長く安定して動く」を確保するために、最終テストだけでなく、温度や動作を与えて不良を早期にあぶり出す考え方(スクリーニング)や、信頼性試験の結果を工程へ戻して改善する取り組みも重要になります。後工程が“品質の最後尾”であるほど、ここでの判断と改善が、そのままブランド信頼に直結します。

関わる仕事(例)
• テスト開発エンジニア:検査手順・判定基準を作り、検査時間を最適化します
• 品質保証(QA):出荷判定のルールを運用し、再発防止を管理します
• 自動化/IT担当:検査データを集め、現場で使える形に整えます

後工程は「半導体を“安心して使える部品”にする」仕事

後工程は、前工程で作ったウエハを「部品として使える半導体」に仕上げる工程です。ウエハの状態で基本特性を確かめて合格品を選び、チップを切り分け、外部とつなぎ、樹脂などで守り、最後にテストで出荷品質を決めます。つまり後工程の本質は「つなぐ・守る・確かめる」にあります。

ここでの工夫は、性能だけでなく“安定供給”にも直結します。先端パッケージやテスト拠点への投資、AI向け製品でパッケージ工程が注目されるのは、後工程がサプライチェーンの重要な要所になっているからです。

参考リンク

【組立・テスト拠点(企業公式)】
TI、マレーシアのマラッカ に第 2 の組み立て・テスト工場を開設
Amkor Technology Breaks Ground on New Semiconductor Advanced Packaging and Test Campus in Arizona; Expands Investment to $7 Billion
Press Kit: Intel Foundry Direct Connect 2025 – Intel Newsroom
Amkor Signs PMT with U.S. Dept. of Commerce for Arizona Advanced Packaging and Test Facility

【報道(供給網・先端パッケージの論点)】
Amkor shares rally in late trade, to work with Nvidia on packaging(Reuters)

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