再評価されるレガシー半導体
「半導体業界では最先端プロセス技術の開発が注目を集める」。これが半導体業界に対する通常のイメージであろう。ところが、それだけではないのだ。
今、成熟した技術であるレガシー半導体が再評価されている。なぜならレガシー半導体は、依然として重要な役割を果たしており、さらにその需要が高まっているからだ。
特にIoT デバイスや自動車産業など、多様な分野での需要が高まっている。このような背景の中、主要なファウンドリ企業である台湾のTSMC(台湾積体電路製造股份有限公司)、同じく台湾の聯華電子(UMC:ユナイテッド・マイクロエレクトロニクス)、米国のGlobal Foundries (グローバルファウンドリーズ)の3社が、レガシー半導体に対して独自の戦略を打ち出している。
本記事では、これら 3 社の取り組みや戦略を分析し、レガシー半導体市場の現状と今後の展望を探る。
ファウンドリ 3 社のレガシー半導体戦略とは
1.TSMC の戦略:地元のサプライチェーンとの連携強化で安定した供給体制を構築
TSMCは、もともと最先端プロセス技術の開発で知られているファウンドリである。しかし、このところレガシー半導体の製造にも力を入れている。多様な顧客ニーズに応えるためには、成熟したプロセス技術を活用した製品も必要だからだ。特に、IoT や自動車向けのアプリケーションでは、信頼性とコスト効率が求められるため、同社はこれらの分野での需要に対応するため、レガシー技術の生産能力を維持・拡大している。
また、TSMC は台湾を中心に製造拠点を展開し、地元のサプライチェーンとの連携を強化することで、安定した供給体制を築いている。
2.UMC の戦略:中国市場での存在感を高め、レガシー半導体の需要に対応
UMC(聯華電子)は、幅広いプロセス技術を提供し、顧客の多様なニーズに応えているファウンドリである。同社は、台湾、日本、シンガポールなどに製造拠点を持ち、グローバルな生産体制を構築している。
レガシー半導体の分野で強みを持ち、成熟したプロセス技術を活用してコスト効率の高い製品を提供している。さらに、中国のファウンドリであるHe Jian Technology Co.,Ltd.(和艦科技有限公司)を買収し、中国市場へのアクセスを強化した。この買収により、UMC は中国市場での存在感を高め、レガシー半導体の需要に対応している。
3.GlobalFoundries の戦略:特化型ファウンドリとして差別化を進める
GlobalFoundries は、特化型ファウンドリとして、差別化されたサービスを提供している。同社は、米国、ヨーロッパ、アジアに製造拠点を持ち、グローバルな生産能力を備えている。特に、特殊なプロセス技術やアプリケーションに焦点を当て、レガシー半導体の分野でも独自のポジションを築いている。
2019 年には、TSMC との間で特許侵害訴訟が発生したが、同年 10 月には両社が和解し、広範な特許クロスライセンス契約を締結した。この合意により、GlobalFoundries は知的財産の保護と顧客へのサービス提供を強化している。
今後もレガシー半導体の需要は継続

このように、レガシー半導体は、依然として多くの産業で不可欠な存在となっている。そんな中、TSMC、UMC、GlobalFoundries の 3 社は、それぞれの強みを活かし、レガシー半導体市場で独自の戦略を展開している。
3社の戦略や取り組みは、半導体業界全体に重要な示唆を与えており、今後もレガシー半導体の需要は継続すると予想される。