中国のパワー半導体の実力と闇 トランプ政権の影響とは

政策動向
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近年、電気自動車(EV)や再生可能エネルギーの普及に伴い、世界的にパワー半導体の需要が急速に拡大している。この需要の拡大を受け中国のパワー半導体も急速に成長しており、世界市場における存在感を高めている。
とはいえ、中国のパワー半導体にも将来の展望が不透明な面もある。それは、中国自体と米国の関係である。両国の関係はドナルド・トランプがアメリカ大統領に就任後、悪化の一途をたどっており、それは中国の半導体産業へも影響を及ぼしている。
本記事では、中国のパワー半導体市場の現状と、トランプ政権下での米中関係によって今後市場がどうなっていくのか、探ってみたい。

データで見る中国のパワー半導体市場と米中関係の影響 

2022 年の中国パワー半導体市場規模は1,368.86 億元に 

中国のパワー半導体市場は、2018 年以降、新エネルギーや次世代通信ネットワークなどの新興産業の需要増加により、急速に拡大している。2019 年には貿易摩擦の影響で市場全体の収益が一時的に減少したが、2020 年後半からは国内需要が再び増加し、生産能力不足も相まって価格上昇が見られた。
その結果、2022 年の中国におけるパワー半導体市場規模は1,368.86 億元となり、前年比 4.4%の増加を記録した。さらに、フランスの市場調査会社によれば、世界の IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)市場は 2019 年から 2026 年にかけて年平均成長率(CAGR)13.1%で成長し、2026 年には 121 億ドルに達する見込みである。
また、中国は世界最大の IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ) 消費市場であり、2026 年には国内市場規模が 35億ドルに達すると予想されている。

トランプ政権下での米中関係が半導体産業へ与えた影響

半導体製造装置の輸出規制を強化

このように好調な中国のパワー半導対市場だが、懸念材料もある。2017 年に発足したトランプ政権は、対中強硬政策を推進し、関税措置や輸出規制などを通じて中国の半導体産業に圧力をかけた。特に、2020 年には中国の通信機器大手であるHuawei(ファーウェイ)に対し、サプライチェーンを分断する措置を講じ、半導体製造装置の輸出規制を強化した。
これらの制裁措置により、中国の半導体産業は一時的な供給不足や技術的な制約に直面したが、同時に国内生産能力の強化や技術自立の推進といった動きも加速した。このため、中国政府は、半導体産業の自給率向上を目指し、大規模な投資や政策支援を行っている。

懸念されるパワー半導体市場への影響~トランプ政権下の対中政策

パワー半導体やアナログデバイスを得意とするのはご存じのように欧州半導体のメーカーが多い。これらの欧州のメーカーは、このところ中国市場や企業との連携を進めている。
今のところトランプの対中政策にはパワー半導体は入っていない。しかし、もし米国政府がパワーデバイスも対中規制の対象にした場合、中国のパワー半導体も無事にはすまないことは明白である。これまで連携を深めてきた欧州メーカーたちとも関係も立ち消えになることも考えられるからだ。
これまで見てきたように中国のパワー半導体市場は、政府の積極的な支援と国内需要の高まりにより、今後も成長が期待される。しかし、その一方でトランプ政権下の対中政策の強化による、懸念材料や市場に大きな悪影響が訪れるリスクは依然として存在するのだ。

最新の情報収集と適切な戦略策定で、変化の波を乗り越える 

このような中国のパワー半導体の懸念材料は、我々日本企業にとっても対岸の火事ではない。日本企業にとっては、中国市場の成長機会を捉えつつ、リスク分散の観点から他の市場や供給源の多様化を図ることが重要だと言える。

これまで見てきたように、中国のパワー半導体市場は、好材料と懸念材料が交錯する複雑な環境下で推移すると予想される。日本の業界関係者は、最新の情報を収集し、適切な戦略を策定することで、この変化の波を乗り越えていくことがベストだと考えられる。

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