【2025年11月版 半導体入門】止まらない「AI建設ラッシュ」と、自動車業界を襲う「部品不足」の正体

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2025年11月、半導体業界は「AI(人工知能)」を中心とした熱狂的なブームと、私たちの生活に身近な製品における「供給の混乱」という、二つの異なる顔を見せています。

今月、業界で何が起きているのか? 初心者の方が押さえておくべき4つのポイントを解説します。

データセンターは「AI工場」へ。空前の建設ブームと省エネ競争

今、世界中でAIを作るための巨大なデータセンター建設が進んでいます。これらは単なる計算機室ではなく、AIを大量生産する「AIファクトリー(工場)」と呼ばれ始めています。

● 巨大なAI工場の設計図: 米国NVIDIA(エヌビディア)は、“AIファクトリー設計・運用のブループリント(設計指針)”を発表しました。ギガワット級(発電所並み)の電力使用も想定されると説明しています。

● デジタルツインで省エネ: AIファクトリーは膨大な電気を使います。そこで、建てる前にコンピュータ上で工場を完全に再現(デジタルツイン)し、空気の流れや電力効率を徹底的にシミュレーションして、無駄を削ぎ落とす手法が不可欠とみなされ始めています。

● メモリの壁を突破: AIの頭脳を支える「HBM(広帯域メモリ)」という記憶装置の進化も止まりません。韓国のSK hynixは、性能をさらに高めた次世代品「HBM4(最新世代。数字が大きくなるほど新しい)」の量産準備が整ったと発表しました。これにより、AIはより大きなAIモデルをより速く動かしやすくなります。

日本の半導体、「復活」への狼煙(のろし)

日本もこの競争に負けじと、国を挙げて大きな動きを見せています。

● ラピダスが“公式事業者”に選定: 北海道で最先端半導体(2nm世代)の製造を目指す「Rapidus(ラピダス)」が、政府から「半導体の安定生産の確保に必要な措置を適切に実施する能力が最も高いと認められる事業者の選定に関する公募」に応募し、正式な事業者に選ばれました。ラピダスは今年度中に経済産業省の政策実施機関である独立行政法人情報処理推進機構(IPA)に対し、1,000億円の出資を申請する予定です。夢のプロジェクトがいよいよ現実の「量産」へと動き出しました。

● 次世代スパコン「富岳NEXT」: 理化学研究所は、スーパーコンピュータ「富岳」の後継機の開発戦略を明らかにしました。次はAIや量子コンピューティングに適したアルゴリズムを搭載し、世界有数の半導体企業であるNVIDIAが開発に参画します。同じ電力規模の中で、実際の研究アプリの処理速度を“最大100倍級”に高める目標も掲げ、2030年の本格稼働を目指します。

自動車業界の悩み:「最新」より「確実」な部品へ

AIが盛り上がる一方で、自動車業界では少し違う現象が起きています。

● 「Nexperiaショック」: オランダの半導体メーカーNexperia(ネクスペリア)の製品供給が、政治・安全保障を背景に企業統制が揺れ、同社の欧州—中国拠点間の供給が途切れて車載向け部品で混乱が起きました。これにより、自動車メーカーなどは「部品が届かない」というリスクに直面しています。

● EV(電気自動車)の減速と「シリコン回帰」: EVの販売が少し落ち着いてきたことで、EV向けに使われる最新の「SiC(炭化ケイ素)」という高性能半導体が余り気味になっています。逆に、ハイブリッド車などで使われる従来の安くて実績のある「シリコン製」半導体が再評価され、車種・コスト・供給安定性を踏まえ、SiCと既存シリコン(IGBT等)の使い分け最適化が進んでいます。

2026年は「スーパーサイクル」到来か?

業界全体では、来年2026年に向けて非常に明るい予測が出ています。

● 過去最高を更新か: SEMIの見通しによると、半導体を作るための装置(例:ウェーハを加工する装置)の世界売上は、AI向けの先端ロジックや高性能メモリへの投資を背景に、2026年に約9%増の1260億ドル(ウェーハ製造装置)へ伸びると予測しています。これを業界では、「AIがけん引する好況が複数年続くかもしれない」という見方があり、長期的な好景気を意味する「スーパーサイクル」と呼ぶ人もいます。

まとめ:私たちの生活への影響は?

2025年11月は、半導体を作るための装置(例:ウェーハを加工する装置)の世界売上がAIという「最先端の波」がさらに高まる一方で、自動車などの「身近な製品」を作るための部品供給網(サプライチェーン)が、政治や技術の変わり目で揺れ動いた月でした。

AIが便利になる期待と同時に、車や家電の生産が滞るリスクもはらんでいる、そんな複雑な状況が続いています。

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