管理職になるか、技術を極めるか――キャリアの二刀流時代へ

SEMICON.TODAY
この記事を読むのにかかる時間: 3

生成AIサーバーの拡張と先端メモリの増産が続く中、従業員の報酬・昇格・役割の設計は、“個人の悩み”を超えて企業競争力の中核になった。TSMCは2025年10月16日に通期見通しを前年比30%台半ばへ再度引き上げ、設備投資下限を400億米ドルに据えた。Micronは4月17日にAIデータセンターを軸に事業再編、SK hynixは9月12日にHBM4の内製認証完了→量産準備を公表。Samsungは2024年12月17日に「IEEE Fellow」選出を発表した。このような事実が示すのは、管理(People/Program/Profit)と専門(Architecture/Algorithm/Advanced Process)の二つのスキルを対等・並行して一人の人材に求める「ダブルラダー制度」の結果であると言える。

本稿は、転職や転属においてダブルラダーが多くなってきた今日、中堅エンジニアがどのような戦略で“上”を目指せばよいのかを考察する。

なぜ今ダブルラダーか

半導体は先端ロジックとHBMが成長エンジンとなる。TSMCの30%台半ば成長とCapEx下限400億米ドルは、供給拡大を人材制度で下支えする意思表示と読める。実際、2024年分の四半期ボーナス+翌年7月利益分配という二層構造は、短期の行動と中期の成果の双方を誘導する設計だ。

メモリでは、MicronがAI需要の“見せ方”に合わせてBUとKPIのひも付けを組み替えた。SK hynixはHBM4で「技術節目の更新を対外発表」し、評価・予算・ロードマップの同期を印象づけた。SamsungのIEEE Fellow発表は、社外権威による証跡が社内専門職の信頼性を補強する構図を映す。

結論として、外部価値(学会・顧客・標準化)と内部評価(報酬・等級・配分)を一体運用できるレールが求められるようになった。ダブルラダーが求められるのはそのためなのだ。

専門職ラダーの実像

専門職の社内フェローは高度な専門知識と技術を持つ社員に与えられる役職であるが、その価値を決めるのは肩書きではない。その裁量の大きさと事業KPIへの到達の速さなど、つまり実能力でしかない。量産現場では、以下のような能力が必要となる。

• 歩留まりの閾値突破(例:+2.0pt/90日移動平均/月産10万枚/対象N5)
• サーマル抵抗の規格内化(▲0.15K/W/60日/FC-BGA量産3機種)
• テープアウト回数の削減(A0→A1で再設計▲2、PPA+7/▲5/+4%)

といった“難所”を克服する能力ことが直接の価値になる。顧客量産承認(PPAP/8D)・標準化WG採択・査読論文/特許など外部の承認は、社内評価の説得力を一段引き上げる。評価は分母・期間・起点値を伴う再現可能な物語で語る——これが専門職ラダーの“実務の芯”である。

キャリア形成の見分け方

では、自分には管理職と専門職とどちらが、向いているか、悩む人もいるだろう。ここでは、その見分け方を提案する。

まず、直近8週間の勤務ログを可視化すること。そして、その中で、自分の提案(会議・配置・コスト)が、総稼働の50%超で納期遵守率/計画達成率が改善しているなら管理職がおすすめだ。逆に連続2〜4時間集中して、考えた提案で歩留まりやPPAの傾きを上がることができるなら専門軸が主戦場となるだろう。

ダブルラダーは“育てる”制度

ここでのポイントは三つだ。第一に、市場の強い追い風を背景に、企業は上方修正・資本配分・外部評価を束ねて人材制度を強化している。第二に、専門職の価値は肩書きではなく裁量×KPI連結で測る段階に入った。第三に、個人が選ぶべきは“どちらが上か”ではなく、自分が事業KPIへ最短で価値を変換できる位置であること。

ダブルラダーは“選ぶ”制度ではない。“育てる”制度なのだ。

*この記事は以下のサイトを参考に執筆しました。
参考リンク

TOP
CLOSE
 
SEARCH