半導体市場における二大分野である「ロジック」と「メモリ」は、機能も市場の在り方も異なる。ロジックは情報の処理や制御を担い、AIや自動運転といったアプリケーションに直結する。一方、メモリは情報の蓄積を担い、データセンターやスマートフォンの容量拡大に応えてきた。そして、近年では生成AIブームを背景に、この両者の競争は激しさを増している。
本稿では、SIA(米国半導体工業会)および主要企業の公開決算資料に基づき、メモリとロジックの市場動向と競争関係をまとめた。特に2023〜2024年のトレンドを軸に、セグメント別の成長性と今後の注目ポイントを考察する。
ロジック半導体の堅調な拡大:AI・自動運転の中核
SIAが2024年7月に発表した最新データによると、2024年5月のロジック半導体売上高は前年同月比17.5%増となっており、特に生成AIに使われるプロセッサ(NPU、GPU、ASIC)や、車載向けSoCが牽引役となっている。
AI関連では、データセンター向けのGPUだけでなく、スマートフォンに搭載されるNPU(ニューラルプロセッシングユニット)、産業用機器に導入されるエッジAIチップなど、幅広い応用領域での需要が急伸している。Qualcommは「Snapdragonシリーズ」にAI処理向けNPUを統合しており、モバイルロジックの高度化が進んでいる。
加えて、自動運転関連の市場では、Tesla、Mobileye、NVIDIAなどが展開するSoCが、L2+以上の自律走行技術の鍵を握っており、膨大なセンサーデータをリアルタイム処理するロジック性能が求められる。これに対応する形で、TSMCやSamsungは先端ノード(3nmおよび2nm)の量産体制を整備しており、ファウンドリ各社の戦略もロジックシフトを加速させている。

メモリ市場の急回復:HBMとデータセンターがカギ
一方で、メモリ市場も2024年に入り明確な反転傾向を見せている。SIAによれば、2024年5月のメモリ売上高は前年比43.3%増と、全カテゴリの中でも最も高い成長率を示した。
この成長の中心にあるのが、高帯域幅メモリ(HBM)である。HBMは、従来のDRAMと異なり、3Dスタッキング技術を用いて複数のDRAMダイを垂直方向に積層し、シリコン貫通電極(TSV)を通じて高速かつ広帯域のデータ転送を実現する技術だ。HBMはAIチップに不可欠なコンポーネントとなっており、NVIDIAの「H100」やAMDの「MI300X」などに搭載されている。
Micronは2024年3月、世界初のHBM3Eを量産開始したと発表。SamsungやSK hynixも同様に、HBM3/3Eの製造能力を拡張しており、生成AI向けインフラ投資がメモリ供給能力を一段と引き上げている。
また、NANDフラッシュも低迷期からの回復基調にある。企業向けストレージやSSDの需要増に加え、AI処理に必要な高速キャッシュ用途でも活用されつつあり、製造各社はQLC(4bit/セル)技術の歩留まり改善を進めている。

メモリ vs ロジックの勢力バランス
WSTSの詳細統計は一般非公開だが、SIAおよび各社決算資料から見えるのは、「メモリとロジックはともにAIを軸に成長しているが、用途が異なる」という点である。ロジックが「演算の脳」として機能するのに対し、メモリは「記憶容量と帯域の拡張」という役割を担っている。
例えば、NVIDIAのAIチップ『H100』はロジック半導体だが、同時にHBM3と組み合わせることで性能を発揮する。AppleのMシリーズチップのように、SoCの内部にメモリを統合する「ユニファイドメモリアーキテクチャ」も注目されており、ロジックとメモリの融合が加速している。
また、パッケージング技術の進化も両者の関係性を変えつつある。先端パッケージ「CoWoS」や「Foveros」を用いることで、異なる機能をもつチップを1つのモジュールに統合し、ロジックとメモリの垣根が物理的にも曖昧になっている。
このように、両者はもはや単純な競合ではなく、協調的に性能を最大化する存在として進化を遂げている。
構造的特性を正しく見極め、変化の波を先取りせよ
メモリとロジックでは製造工程が異なる。メモリはパッケージングの進化(例:HBMの3D積層)が成長を左右し、ロジックは先端ノード(例:2nm、GAA構造)の対応が求められる。これらの技術投資は独立して行われがちだが、AI向け統合設計では「協調的な設備戦略」が効果的である。
また、メモリ市場は価格変動が激しく、在庫リスクも高い。一方、ロジックは顧客ごとのカスタマイズが多く、開発費回収リスクを伴う。それぞれの特性を理解し、ビジネスモデルに応じたリスク管理が求められる。
両セグメントの構造的特性を正しく見極め、変化の波を先取りすることこそが、企業の競争力を左右する鍵となる。その上で、ロジックとメモリの“共進化”をいかに事業戦略に取り込めるかが、次世代の覇者を決める分水嶺となるだろう。
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参考リンク(すべて2024年公開・一般閲覧可能なソース)