連載:半導体の世界をのぞいてみよう⑩迷わない「半導体業界への入り方」:会社名より“役割”で選ぶキャリア

SEMICON.TODAY
この記事を読むのにかかる時間: 5

半導体業界は「理系の世界」「専門用語だらけ」という印象で、“取りつきにくい狭き門”に見られがちです。けれどその実態は、難しい研究開発だけはなく、さまざまな役割があり、そんなに取りつきにくい産業ではないのです。

設計、製造、検査、量産立ち上げ、品質、調達、物流、契約、顧客対応まで、それぞれの役割が上手く噛み合ってはじめて製品が世に出ることができるのです。そして、この“分業の厚み”こそが、半導体業界の入口を広げているのです。

そこで本稿では、半導体業界への入り方を、まず役割で整理し、選び方と学び方までご紹介します。

最初に決めるのは「会社」ではなく「役割」

半導体業界は広く、同じ会社でも役割が違えば求められる力が変わります。最初の判断軸は、会社自体ではなく「自分が担当する役割」になります。

ざっくり分けると、次の4つの役割になります。

• 作る:材料、製造装置、前工程・後工程、検査・テスト(例:材料メーカー、装置メーカー、ファウンドリ、OSAT など)
• 設計する:回路設計、検証、EDA、IP、ソフトウェア(例:ファブレス、IDMの設計部門、EDA企業 など)
• 売る/運ぶ/守る:営業、マーケ、調達、品質保証、法務、SCM(供給管理)(例:半導体メーカーの事業部、商社、物流、管理部門 など)
• 使う(セット/システム側):完成品メーカー側の設計・生産技術など(例:自動車、産業機器、スマホ、データセンター関連 など)

※加えて、顧客先で支える(FAE/フィールド支援)のように、層をまたいで価値を出す役割もあります。

ここでよくある誤解が、「作る=理系だけ」「半導体=一社の中で完結する」と思い込むことです。実際は、材料・装置・製造(ファウンドリ/IDM)・後工程(OSAT)・物流・商社・完成品メーカーが連なり、仕事は必ず次の工程へ“バトン”を渡します。

選ぶコツは、「自分が解きたい課題の種類」を言葉にすることです。

• 原因を切り分けて改善するのが好き(品質、プロセス、テスト)
• 関係者を束ねて前に進めるのが得意(調達、SCM、PM、営業)
• “仕様”に落として形にするのが好き(設計、検証、EDA、ソフト)
• 現場の立ち上げや設備の最適化が得意(製造、装置、保全、生産技術)

「どの役割の課題を解く仕事に近づきたいか」を先に決めると、会社選びが一気に楽になります。

未経験でも採用されやすい枠割とは

半導体は専門用語が多い一方で、現場が大切にしているのは「意思決定の順番」と「関係者の合意の取り方」です。

つまり、未経験でも採用されやすいのは、仕事の進め方に“独自の型”があり、自分のこれまでの経験の転用が効く領域といえます。

1.営業/マーケティング:顧客が何に困っており、何を求めているか、うまく整理する力

半導体営業で真価を発揮できるのは、“話がうまい人”というより、顧客が何に困っており、何を求めているかという前提条件をきちんと整理して、顧客に提示できる人です。

用途(車載か民生か)、品質基準、供給責任の範囲、変更管理(仕様変更のルール)をうまく整理できるかが勝負になります。

2.調達/SCM(供給連鎖管理):リスクを言語化して関係者を動かす力

半導体はリードタイムが長く、代替が効きにくい部材や工程が多い分、在庫・複数購買・契約条件・優先順位の設計で“止まり”を防ぎます。

ここで効くのは、リスクを言語化して関係者を動かす力です。前職が物流、購買、事業企画、コンサル、管理部門でも十分に転用できます。

3.品質保証:関係者をつなぐ調整力が重要

品質は、設計・製造・テスト・使い方(実装や環境)まで跨ります。だから価値になるのは、技術知識そのもの以上に、関係者をつなぐ調整力です。

理系知識は後から積み上がりますが、「事実と推測を分けて説明する」癖は早い段階から武器になります。

4.データ分析/業務改善:統計やBIツールなどの経験が有利

半導体の現場は、判断の根拠をログやデータに残す文化が強い傾向があります。歩留まり改善、納期遅延の予兆、在庫の偏りなどを可視化し、意思決定を早める役割です。

統計やBIツール、SQLなどの経験があれば業界外からでも入りやすく、現場用語は“分析の対象”として後から身につきます。

5.法務/コンプライアンス:止めないための“ルール”を現場の言葉で設計する

NDA、契約、輸出管理、知財など、“止めないためのルール”を整える役割です。

半導体は国境をまたぐ取引が多く、仕様変更や供給停止が損失に直結しやすい分、契約条件の設計が事業の強さになります。

法律の知識だけでなく、現場の言葉(納期、歩留まり、認定、変更管理)で会話できることが差になります。

学び方は“ニュース→工程→数字”の順で

半導体の勉強は、専門書を最初から読もうとすると挫折しがちです。おすすめは次の順番です。

  1. ニュースを読む:何が起きたか(投資、増産、規制、供給不足、顧客獲得など)
  2. 工程に落とす:そのニュースは前工程・後工程・設計・材料・テストのどこの話か
  3. 数字を見る:数量、リードタイム、歩留まり、価格、在庫など「制約」を表す指標は何か

この順番で読むと、難しい言葉に出会っても「どの工程の話か」が先に分かるため、理解が積み上がります。逆に用語集から入ると、言葉だけが増えて“仕事の絵”が作れません。

さらに一段伸ばすなら、ニュースを読むときに「誰のKPIが動くか」を想像してみてください。

• 増産投資:製造・設備・調達・建設・人材のKPIが同時に動く
• 規制強化:法務・輸出管理・購買・顧客対応のKPIが動く
• 不良発生:品質・プロセス・テスト・営業のKPIが動く

また、学びの入口としては、産学連携の研究・人材育成の枠組みや、職種に直結した研修拠点が公表されることがあります。こうした取り組みは「どのスキルが現場で不足しているか」を知る材料にもなります。

整えるべきは「職務経歴」より“会話の解像度”

半導体は分業が厚い分、現場での学習速度と、関係者とのすり合わせ力が成果を左右します。そこで半導体業界に飛び込む前に整えるべきは、職務経歴の飾り込みより“会話の材料”です。

ポイントは3つあります。

• 自分の軸:どの役割に入りたいか/なぜそこか/何で貢献できるか
• 相手理解:応募先が何を売り、どこで価値を出しているかを「工程の言葉」で説明できる
• 制約の感度:納期・品質・認定・供給責任・変更管理のうち、どれが効きやすい業界かを理解している

ここで大切なのは、答えを暗記することではありません。自分の言葉で“構造”を説明できることです。

自分が「現場で動く」「机上で設計する」「顧客先で調整する」のどれに近い働き方が合うかまで含めると、選択がぶれにくくなります。

必要なのは“才能”より“役割などの選び方”

半導体分野は難しく、高学歴の秀才しか入れないと思われがちですが、その実態は分業で動く巨大産業です。最初に必要なのは“才能”より“役割などの選び方”なのです。

だからこそ、会社名から考えるのではなく、自分の価値を生かせる流れ(設計→製造→検査→量産→供給→顧客)を思い浮かべ、自分に最適な役割を一つ選ぶ。

次に、その役割で使う言葉(工程・品質・納期・認定)でニュースを読み、会話では「制約」「ボトルネック」「連携」の観点で整理して話せる状態にする。

ここまで揃えば、半導体業界は“難しい”から“面白い”に変わるでしょう。

参考リンク

この記事に関連するおすすめ求人特集:

※最新の採用状況により、リンク先の求人が更新されている場合があります。

TOP
CLOSE
 
SEARCH