モノリシックからチップレット時代へ JCETが拓く新たな半導体ビジネス

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半導体業界は今、大きな転換期を迎えている。従来のいくつかの機能を一つのチップにまとめた「モノリシック」設計から、それぞれの機能ごとに複数チップを組み合わせた「チップレット」設計への移行が加速し、ファウンドリ(半導体製造の前工程)とOSAT(後工程のパッケージング・テスト)の役割分担が曖昧になりつつあるのだ。

その中で、中国最大のOSAT企業であるJCET(長電科技)は、ファウンドリとの連携を強め、業界の新たなモデルを牽引している。その背景には、AI、5G、自動車向け半導体の需要が急増し、より高性能かつコスト効率の良いパッケージング技術が求められていることがある。そして、JCETはアドバンストパッケージング(先進パッケージング)技術を武器に、ファウンドリと協業し、SoP(System on Package)やHeterogeneous Integration(異種チップ統合)を実現する統合型ソリューションの提供に注力している。

この記事では、JCETの最新戦略と、半導体業界におけるインテグレーション志向の進化について、定量データや最新事例を交えながら解説する。

JCETの躍進と業界構造の変化

1. 2024年には世界OSAT企業の第3位にランクイン

JCETは2024年、世界第3位のOSAT企業として記録的な売上高を達成し、その成長率は19.3%と高い伸びを示している。

2024年の世界トップ10 OSAT企業の合計売上高は415億6,000万ドル(約6.5兆円)、JCETはその中で50億ドル(約7,800億円)を売り上げ、中国企業として初のトップ3入りを果たした。

業界トップ10 OSAT企業(2024年)

順位企業名売上高(億ドル)前年比
1ASE185.4
2Amkor63.2-2.8%
3JCET50.0+19.3%

(出典:TrendForce, 2025年5月13日)

JCETの成長の背景には、AI PCやミッドレンジスマートフォン向けの新プラットフォーム投入、自動車向け半導体の需要拡大がある。特に、アドバンストパッケージング技術の強化が大きな原動力となっている。

2. チップレット時代に不可欠なアドバンストパッケージング技術

半導体業界では、前工程(ファウンドリ)と後工程(OSAT)の分業が長らく主流だった。しかし、チップレット技術の台頭により、両者の連携が不可欠になっている。この連携に必要なのがアドバンストパッケージング技術だ。これは、複数の異なる機能を持つチップ(チップレット)を一つのパッケージ内に統合するというもの。これにより、従来のモノリシック設計では実現が難しかった高性能・高密度・低コストの半導体が実現可能になる。

チップレット技術のメリット
• コスト削減:各チップレットを最適なプロセスで製造し、組み合わせることで全体コストを抑えられる
• 柔軟性:異なる機能を持つチップを自由に組み合わせられる
• 高性能化:多機能チップの設計・製造が容易になる

半導体業界向けの情報プラットフォームTechInsightsによると、コンピューティング分野のチップレット市場規模は2024年に435億ドル、2030年には1,449億ドル(CAGR 31%)に成長すると予測されている。

チップレット市場規模の推移(コンピューティング分野)

市場規模(億ドル)
2024435
20301,449(予測)

(出典:TechInsights, 2025年6月)

3. JCETのファウンドリ連携戦略

JCETは、ファウンドリとの連携を強化し、前工程と後工程の垣根を越えた統合型ソリューションを提供している。2024年には、江陰市(中国)に新たな高級製造拠点を建設し、ワーファーレベル・マイクロシステム統合技術やハイデンシティ・フリップチップ技術を活用した先進パッケージングの量産体制を強化した。

また、JCETは自動車向け半導体にも注力しており、上海に自動車グレードの先進パッケージング工場を建設。国家集積回路産業投資基金などから44億元(約900億円)の資金を調達し、自動運転や電動化向けのセンサー・パワー半導体のパッケージング能力を拡大している。以下に2024年のJCETの主要投資・プロジェクトを示す。

JCETの主要投資・プロジェクト(2024年)

プロジェクト名内容・特徴 投資額
江陰高級製造拠点ワーファーレベル・マイクロシステム統合技術非公表
上海自動車グレード工場自動車向け先進パッケージング44億元

(出典:JCET公式、Zhong Lun Law Firm)

4. JCETのインテグレーション志向のビジネスモデル

JCETは、ファウンドリとOSATの協業を通じて、顧客のニーズに応じたカスタマイズ型ソリューションを提供している。特に、高性能コンピューティング(HPC)、ストレージ、コネクティビティ、パワーマネジメント分野で、ワンストップのパッケージング・テストサービスを展開している。

2024年のJCETの売上高のうち、アドバンストパッケージングが72%以上を占め、コンピューティング分野は前年比38.1%増、自動車分野は20.5%増と、高付加価値領域での成長が顕著である。

JCETの売上構成(2024年)

分野 売上成長率(前年比)
コンピューティング+38.1%
自動車+20.5%

(出典:JCET公式)

JCETが示す新たな業界の方向性

半導体業界は、モノリシック設計からチップレット時代へと大きく舵を切りつつある。その中で、JCETはファウンドリとの連携を強化し、アドバンストパッケージング技術を活用した統合型ソリューションを提供することで、業界の新たなモデルを提示している。

今後も、AI、5G、自動車、IoTなど多様な分野で、より高度なインテグレーションが求められるだろう。JCETの戦略は、半導体業界のビジネスデベロップメントやマーケティング担当者にとって、大きな示唆を与えるものと言える。

(参考:JCET公式 2024年アニュアルレポート(英語)

(参考:TrendForce 2024年OSAT企業ランキング

(参考:JCET 江陰高級製造拠点プロジェクト(Semiconductor Digest)

(参考:JCET 上海自動車グレード工場プロジェクト(Zhong Lun Law Firm)

(参考:TechInsights チップレット技術市場レポート

(※本記事は 2024 年~2025 年 6 月時点の公式発表・信頼性の高い調査データを基に作成しています)

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