「SpinSam」で1時間あたり約41枚のウェハ処理を達成!

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半導体や精密機器向けメディアである 3D Insights Podcast の Françoise von Trapp 氏が、半導体および SMT 製造市場向け音響・光学・X線検査システムメーカー Nordson Test & Inspection の音響製品部門でシニアプロダクトラインマネージャーを務める Bryan Schackmuth 氏をゲストに迎え、半導体ウェハとパッケージ検査において音響検査がどのように重要なツールになりつつあるかについてインタビューした。今回はその一部をご紹介する。

互いに補完し合う関係 3 種類の検査方法

―まず現職や経歴についてお願いします。

Bryan Schackmuth:
現在私は韓国在住で、Nordson Test & Inspection の音響製品部門でシニアプロダクトラインマネージャーを務めています。弊社はより大きな ATS (アセンブリー・テスト・システム)セグメントに属しており、ATS は EPS (Syntec ディスペンシングなど)、XRT (X線およびテスト)、そして私が所属する OSM (光学センサー計測)部門で構成されています。主力製品は音響および光学検査装置、ウェハセンサーです。
私はもともと米国に本社を置く超音波顕微鏡メーカー Sonoscan に 28 年間在籍しており、Nordson による買収を経て、昨年からプロダクトラインマネージャーの役割を担っています。音響マイクロイメージングが市場に出始めた 10〜15 年前はまだ Sonoscan に在籍しており、当時はオフラインの手動システムが主流でしたが、検査ニーズが高まったことで、10 年ほど前から生産ラインへの導入が進み始めました。

―では、光学、X線、音響という 3 種類の検査方法について、概要を説明していただけますか?

Bryan Schackmuth:
音響検査は超音波を使用します。周波数は通常 15 MHz から 300 MHz 程度です。超音波の重要な点は空気中を伝搬しないこと。空気ギャップに当たるとほぼ 100 % 反射し、大きな信号が返ってきます。数百 Å の厚さの空気ギャップでも超音波を遮断するのに十分です。この特性により、音響検査は接合状態の評価に非常に適しています。本来接合されているべき材料が剥離している場合、それを検出できます。
X線検査は密度の変化を検出するのに優れています。非常に細い亀裂は X線では検出困難ですが、はんだボール、ワイヤーボンド、ビアなど密度変化が大きいものは容易に検出できます。
光学検査は表面レベル、つまり目視で確認できる欠陥の検出に適していますが、試料内部は観察できません。
これら 3 つは競合ではなく互いに補完し合う関係にあります。故障解析ラボではアプリケーションに応じて X線・音響・光学検査装置、あるいはそのすべてを所有していることが多いのが現状です。ただし X線検査にはメモリデバイスへの影響という制限があり、注意が必要です。

初期段階の欠陥スクリーンニングの精度向上が進化のカギを握る

―音響検査、つまりソノグラムというと、いつも医療分野での使用を連想します。医療分野では密度を測定するために何らかの液体が使われていると思いますが、貴社製品ではどのように液体を使用するのですか?

Bryan Schackmuth:
おっしゃる通り、超音波は空気中を伝搬しないため、試料に超音波を伝搬させる媒質が必要です。医療分野ではゲルを使用し、トランスデューサーを皮膚に接触させて検査を行います。
音響顕微鏡検査では試料に触れられないため純水を使用します。試料を水槽に浸す方法と、弊社システム独自のウォーターフォール方式があります。ウォーターフォール方式では検査箇所にだけ水をカスケード(滝状)またはジェット噴射することで、水への曝露を最小限に抑えます。外部に露出した欠陥がある場合でも、水の浸入リスクを軽減できます。

―ウェハーレベルパッケージングのトレンドとして、これらの検査方法の進化を促しているものとは何でしょうか?

Bryan Schackmuth:
初期段階の欠陥スクリーンニング精度の向上でしょう。市場は可能な限り多くの機能をフォームファクターに集積化する方向に進んでいます。各製造段階で欠陥が発生する可能性が高まるため、早期に欠陥を検出できれば歩留まりを向上させ、後工程に欠陥品を送る無駄を省けます。

回転スキャン方式を採用している「SpinSam」

―これまで音響技術は長年にわたってどのように改良されてきたのでしょうか?

Bryan Schackmuth:
従来の音響顕微鏡は XYZ ラスタースキャン方式でした。インクジェットプリンターが紙の上を左右に往復しながら印刷するイメージです。
一方、回転スキャン方式を採用しているのが弊社の主力製品「SpinSam」。中央からスキャンを開始し、ウェハを回転させながら外周へ移動します。レコードプレーヤー、あるいは CD プレーヤーのような動きです。「SpinSam」は 2024 会計年度末にリリースされたばかりで、300 mm ウェハの 100 % 検査に対応。回転スキャンにより 100 µm の分解能で 1 時間あたり約 41 枚のウェハを処理でき、従来比約 8 倍のスループットを実現しています。

「SpinSam」は競合のない唯一無二の製品

―SpinSam は業界で唯一無二の製品なのでしょうか?競合製品はありますか?

Bryan Schackmuth:
回転スキャン技術という点で SpinSam は唯一無二と自負しています。競合製品(弊社の旧製品を含む)はすべてラスタースキャン方式です。ラスタースキャンではウェハ上に可動部品が多く、パーティクル落下のリスクがありますが、SpinSam はトランスデューサーが中心から外周へ移動するだけでウェハ上に可動部品がありません。クリーンルームでのパーティクル発生を最小限に抑えられます。
SpinSam は 100 µm 分解能で 1 時間あたり約 41 枚処理という性能を、今年末までにさらに 2 倍へ高めることを目標にしています。今後の Nordson Test & Inspection に期待したいところです。

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