パワー半導体が実現する脱酸素社会!進化する技術や拡大する市場を考察

最新技術動向
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急成長するパワー半導体:拡大する市場と技術革新

現在、パワー半導体が注目を集めている。パワー半導体はエネルギー効率向上とカーボンニュートラルの実現に不可欠である。シリコン(Si)に加え、シリコンカーバイド(SiC)や窒化ガリウム(GaN)の実用化が進み、EV(電気自動車)や再生可能エネルギー分野で急成長している。
また、パワー半導体は第 4 次産業革命の延長線にある「第 5 次産業革命(インダストリー 5.0)」や、バイオテクノロジーを活用した「バイオエコノミー社会」に大きな影響を与えるとも予測されている。
では、パワー半導体がこのように急成長している要因や、未来の産業へ影響を与えると期待される技術革新とはどのようなものだろうか? その背景には「脱酸素社会実現」を目指す各企業の動きがある。
本記事では、その最新技術と市場動向、および未来予測を解説する。

EV や再生可能エネルギー分野の需要拡大で進化するパワー半導体

パワー半導体とはどんなもの?

まずは、パワー半導体はどのようなものなのか、その基本概念から見ていこう。パワー半導体は高電圧・大電流を制御する半導体デバイスであり、電力変換やモーター制御、電源管理などで使用されるものを指す。
その世界市場規模は 2023 年時点で約 220 億ドルに達し、2030 年には 500 億ドルを超えると予測されている(出典:Yole Development)。
この成長を支えるのは前述したように、EV や再生可能エネルギー分野での需要拡大である。その電力効率の向上という大きな特性は、エネルギー消費の削減、カーボンニュートラルの実現といった「脱酸素社会実現」のための、次世代モビリティや産業機器の進化に直結するからだ。

進化が進むパワー半導体の技術

次に、技術動向を見ていこう。半導体は素材面からシリコン(Si)半導体、シリコンカーバイド(SiC)、窒化ガリウム(GaN)に分けられる。ここでは、パワー半導体も大きくこの三つに分け、それぞれのデバイスの技術特性を解説する。

1. シリコン(Si):コストパフォーマンスに優れ、多用途に利用

Si はコストパフォーマンスに優れ、多用途に利用されている。最新の Si 技術では、超低抵抗の MOSFET(メタル–オキサイド–半導体電界効果トランジスタ)や IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)の開発が進み、エネルギー損失の低減が実現している。

2. シリコンカーバイド(SiC):EV 市場の原動力に

SiC は高耐圧・低損失という特性を持ち、EV や再生可能エネルギー分野で採用が拡大している。特に Tesla の SiC MOSFET 採用は市場の注目を集め、ウェハの大量生産が進行している。

3. 窒化ガリウム(GaN):次世代高速スイッチングで電動航空機への応用進む

GaN は高周波スイッチング特性に優れ、5G 通信基地局や高効率電源で活用される。低コスト化が進み、データセンターや電動航空機への応用も期待されている。

2028 年には 400 億ドル超と予測される市場規模

1. 市場規模と成長率
パワー半導体市場は 2023 年に約 230 億ドル、2028 年には 400 億ドル超へ成長すると予測される(出典:Yole Développement)。特に SiC と GaN は年率 20 %以上の成長が見込まれている。

2. 主要企業の動向
SiC 市場では Wolfspeed(米)、Infineon Technologies(独)、STMicroelectronics(スイス)が大規模投資を実施。
GaN 市場では Navitas Semiconductor(米)、GaN Systems(カナダ・2023 年に Infineon が買収)、NXP Semiconductors(蘭)が成長。さらに TSMC(台)や Samsung Electronics(韓)も参入し、その動向が注目されている。

おわりに:脱酸素社会の実現に

以上のように、パワー半導体は脱炭素社会の実現に不可欠であり、SiC・GaN デバイスの需要は今後も拡大すると予測される。技術革新と企業戦略の動向を注視し、今後の成長を見極めることが求められる。

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