2025年12月2日、世界半導体市場統計(WSTS)は「2025年秋季半導体市場予測」を公表した。会議は2025年11月18日〜20日にイタリア・ローマで開かれ、2025年9月までの実績値を基に予測が取りまとめられた。WSTSは加盟各社が統計を参照し、マクロ経済や主要電子機器の動向も踏まえて予測を作成する一方、反トラスト法への配慮から将来の価格動向や需給バランスの討議を禁じている。
本稿では、WSTSの公表値を中心に、2025〜2026年に向けた市場の「伸び方」と、その結果として浮かび上がる技術・サプライチェーン・規制論点を考察する。なおWSTSの「市場」は、生産拠点や企業国籍ではなく「半導体メーカーから第三者に販売された地域」を意味する。
2026年の世界半導体市場は9754.6億米ドル

WSTSは世界半導体市場を、2025年に前年比22.5%増の7722.43億米ドル、2026年に前年比26.3%増の9754.60億米ドルと予測した。2026年は「1兆米ドル手前」の規模であり、2年連続で20%超の伸び率が並ぶ見通しとなる。
WSTSの国際公表資料では、2025年の市場規模は夏季予測から約450億米ドル上方修正された。第三四半期の実績が予想を上回ったことを受け、ロジックとメモリを中心に成長率の見立てを引き上げたとしている。予測が「どの製品が上振れたか」を明示している点は、量よりも品目構成が市場の伸びを決める局面であることを示す。
背景としてWSTSは、2024年に前年比+19.7%と市場が拡大した要因を、AI需要を見越したデータセンター投資に連動するメモリ製品およびGPU(Graphics Processing Unit:並列演算に強いプロセッサ)などロジック製品の伸長として説明した。2025年は大手IT企業によるデータセンター投資が勢いを増し、データセンター以外でもAI機能を搭載したスマートフォンやパソコン(エッジAI)が成長に寄与すると整理した。2026年も同様に、データセンター投資が牽引役になる前提を置いた。
一方でWSTSは、関税影響の顕在化や地政学的リスクによる不透明感に言及しつつ、各国政府の支援策が最終需要を下支えしていると記載した。市場拡大は単線ではなく、政策要因と地政学要因が同時に織り込まれた形となっている。
ロジックICとメモリICが「伸び率」と「金額規模」を同時に押し上げる

製品別では、WSTSの予測がロジックICとメモリICに強く傾いている点が最大の特徴である。2025年のロジックICは前年比37.1%増の2958.92億米ドル、メモリICは27.8%増の2115.68億米ドルで、両者合計は市場全体の65.7%を占める。2026年はロジックICが32.1%増の3908.63億米ドル、メモリICが39.4%増の2948.21億米ドルとなり、合計シェアは70.3%へ拡大する。
WSTSは、AI関連アプリケーションとコンピューティング、データセンターインフラ需要がロジックとメモリの上方修正をもたらしたと説明した。成長の中心が「演算(ロジック)」と「データ供給(メモリー)」へ同時に偏る局面であり、同時に需要の二極化が続くとの整理も併記した。
他の製品群は、2025年にアナログが前年比7.5%増、マイクロが7.9%増、センサ&アクチュエータが10.4%増、オプトが3.7%増と、伸び率は1桁台〜10%前後にとどまる。ディスクリートは-0.4%と小幅減少が続き、WSTSは自動車用途の弱さが背景にあると記載した。2026年は全製品群でプラス成長を見込むが、伸び率の中心はロジックとメモリに置かれている。
市場全体に占める集積回路(IC)の比率も上がる。IC合計は2025年に6778.52億米ドル、2026年に8742.91億米ドルで、世界市場に占める比率は87.8%から89.6%へ上昇する。
地域別は米州が突出して高い伸び率に

地域別予測では、米州が2025年に前年比29.1%増の2519.26億米ドル、2026年に34.4%増の3385.74億米ドルと最も高い伸び率を示す。アジア太平洋は2025年に24.9%増の4213.54億米ドル、2026年に24.9%増の5262.93億米ドルで、金額規模としては最大地域である。
欧州・中東・アフリカは2025年に5.6%増、2026年に11.6%増と緩やかな回復が示された。
日本市場は2025年に4.1%減の448.35億米ドル、2026年に11.9%増の501.64億米ドルとなる。円ベースでは、2025年が6.3%減の66361億円、2026年が11.6%増の74049億円。為替前提は2025年148.0円/米ドル、2026年147.6円/米ドルとされた。
WSTSの地域別数字は「販売された地域」の集計であり、製造地や輸出入統計とは別物である。
サプライチェーンと規制の論点

WSTSは反トラスト法により、将来の価格動向や需給バランスの討議を禁じられていると明記した。市場見通しが金額ベースで提示される一方、価格要因と数量要因の内訳は示されない。
第一に、ロジックICとメモリICの合計シェアが2025年65.7%から2026年70.3%へ拡大する見通しは、サプライチェーン上の重点が「先端計算向けのロジック」と「高付加価値メモリ」の供給能力に寄ることを示す。
第二に、販売地ベースの統計では、商流・在庫配置・最終組立地の変更が地域別数値の振れとして表れる。政策要因が「どこで売り、どこで持つか」に直結する以上、統計の読み方もサプライチェーン設計と不可分である。
第三に、複数統計の整合も重要である。ガートナーは2025年の世界半導体売上高を7934.49億米ドルと公表し、AI向けが約3分の1を占めたと説明した。WSTSと近いレンジで、AI投資を起点とする成長局面が複数統計で確認された。
第四に、デロイトは2025年見通しで生成AIとデータセンター投資が牽引役とし、PC・モバイルは弱含みと整理した。WSTSも同様にロジック/メモリの高成長と、ディスクリートの弱さを併記しており、「二つの市場」が存在する状況を裏付ける形となっている。
2025〜2026年はロジックICとメモリICの「集中成長」に

WSTSの秋季予測は、世界市場が2026年に9754.60億米ドルへ拡大し、1兆米ドル規模が視界に入ったことを明確にした。同時に、成長の中身はロジックICとメモリICに集中し、2026年には両者で市場の70.3%を占める構図が示された。
関税影響や地政学リスクが明示された以上、数値は需要の強弱だけでなく商流・在庫配置・販売地の選択を反映し得る。市場予測を「金額の伸び」だけでなく「どの領域に集中する伸びか」として読むことが、技術開発と供給網の論点整理に直結する。
参考リンク
- WSTS 2025年秋季半導体市場予測について
- Global Semiconductor Market Approaches USD 1 Trillion in 2026
- Gartner Says Worldwide Semiconductor Revenue Grew 21% in 2025
- 2025 global semiconductor industry outlook | Deloitte
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