米投資銀行EDA金融アナリストが語る最新業界動向

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米グリフィン証券のソフトウェア研究部門マネージング・ディレクター、Jay Vleeschhouwer氏は、電子設計自動化(EDA)業界の金融アナリストとして、半導体業界の設計分野を注意深くウォッチし、この業界に向けた洞察に富んだ分析を提供しています。

Vleeschhouwer氏はまた、Design Automation Conference(DAC)において、EDA業界の年次報告「State of EDA」を毎年発表しており、今年の発表を終えたタイミングで、トレンド、EDAとAEC(建築・エンジニアリング・建設)の違い、セキュリティ、チップレットについて話を聞くことができました。以下にその要約を紹介します。

Smith:SynopsysとAnsysの合併が完了した今、どのような変化が予想されますか?

Vleeschhouwer氏:Synopsysは現在、エンジニアリングソフトウェア業界における売上高と受注残高で最大の企業となりました。この業界の市場規模はAEC、EDA、および技術系ソフトウェアの全体で300億ドルを超えます。直近の四半期レポートの合併後を想定した受注残高は、業界最大の約98億4,000万ドルにのぼります。

重要な問いは、Synopsysが厳密にはEDAとは言えないAnsysの5分の4の事業をどのように統合し、雇用し、展開するのかという点です。つまり、AnsysのEDAの大部分を構成するAnsoftとApache以外の事業のことであり、コンバージェンスというテーマに関わる問題です。

また、あらゆる買収において問われるのは、買収した事業や製品ポートフォリオをそのまま維持するのか、しないのかというバランスです。言い換えれば、うまく機能しているならそのまま継続させ、さもなければ、迅速に吸収・統合し、買収側のポートフォリオに活用していくという選択です。

このロードマップについては、EDAに特化した側面とコンバージョンの側面から、さらに詳しく考えを聞きたいと思います。

Smith:2025年に予想外の新トレンドはありましたか?

Vleeschhouwer氏:簡潔に言えば、主な技術やビジネス上のトレンドに関しては、これまでと大きく変わらない状況が続いています。もちろん最近の大きな外的影響といえば、関税の導入や新たな輸出規制、あるいは輸出規制の変動があります。これが過去数週間から数か月間に起きた最も大きな変化だと言えるでしょう。

当社がこれまでレポートで強調してきた多くの技術やビジネスの成果に関しては、何年にもわたってトレンドの変化は見られません。業界データからも、複数のEDAカテゴリが成長を持続していることが見て取れます。複数のカテゴリにわたって製品の採用と成長が広がっていることは、非常に重要な傾向です。

この傾向は、EDA業界の最大手4社それぞれに利益をもたらしました。技術的にも納得できる理由があり、今後もこの状況は続くことが予想されます。この重要な長期的トレンドに関しては「変化なし」と言えるでしょう。それ以外の点で2025年に特徴的に見られた興味深い動きは、今年のDACでスタートアップ企業の存在感が増したことです。EDA分野では久しぶりのことです。

興味深いことは、スタートアップが活発になったのはEDAだけでなく、エンジニアリングソフトウェアのもう一つの分野であるAEC(建築・エンジニアリング・建設)でも同様だった点です。AECは半導体や電子システムとは無関係ですが、それでも過去四半世紀近くで最も多くのスタートアップが登場しています。

ただし、これらエンジニアリングソフトウェアの2つの分野におけるスタートアップの動機は大きく異なっています。EDAスタートアップの動機には共通性がありますが、AECの場合は異なっており、それが分析的に非常に興味深い点です。

Smith:EDAとAECのスタートアップの動機の違いは何ですか?

Vleeschhouwer氏:AECは、商業ビル、住宅、インフラ、つまり道路や橋、空港、トンネル、土木、公共事業に関わる分野です。私たちがこの市場で注目している企業には、AutodeskやBentley Systemsがあります。Autodeskは、機械系CAD製品の一部がPCB設計ツールと統合されていることから、EDAとも少し関係があります。

いずれにせよ、AEC分野で見られるスタートアップの動機は、主に既存の大手製品に対する顧客の不満が声高に表明されていることに起因しています。これはEDAとは異なります。EDAでは、既存ツールに対する不満がスタートアップを必要とするほど強いとは言えず、それが起爆剤になるとは考えにくいのです。

私たちは今、半導体設計や電子システム設計が複雑かつ急速に進化するの目にしており、その背景には、AECよりもはるかに幅広いEDAツールとその機能があります。そこには、既存ツールを補完するニッチな製品の機会が多く存在します。ご承知のように、EDAでは既存ツールを置き換えるのは非常に困難です。

業界は現在、Ansys、Cadence、Siemens EDA、Synopsysの「ビッグ4」に集約されており、それがSynopsysとAnsysの合併により今では「ビッグ3」となりました。受注残高は増え続けており、15年間にわたってBBレシオ(受注出荷比率)はポジティブです。数字上は、既存ツールに対する不満や満足度の低さは見受けられません。

一方、AECでは顧客のプロファイルやツールの使われ方が異なります。EDAよりもはるかに多くの顧客が存在し、建築事務所や建設会社などが何千社もあります。AECソフトウェアの導入数はEDAの10倍以上です。

Autodeskのあるツールが、モダンさなどの観点から顧客の注目を集めており、これがスタートアップの参入機会を生みました。このツールに対する不満が全くないわけではありませんが、そのツールブランドは成長を続け、業界最大のユーザーベースを獲得しました。

結局のところ、市場で最大の製品が堅調に成長を続けています。このケースではAutodeskですが、ベンダーはツールの改善が必要な点を認識し、そのために投資をしています。いずれにせよ、スタートアップが存在する理由や市場へのアプローチには違いがあります。

Smith:現在、大きな話題となっているのは2D、3D、そしてチップレットです。チップレットベースの設計における市場はどこにあるのでしょうか?

Vleeschhouwer氏:EDAベンダーのコメントによると、ツールの開発と提供に関してはまだ初期段階です。この分野がビジネスに占める割合を正確に測定する方法はありません。しかし、大きな成長余地があるという点は良いことです。

多くのツールが整備されるにつれ、技術の実現から製品の提供というサイクルが繰り返されてゆくでしょう。この現象はさらに拡大していくと考えられます。ベンダーには、どれだけのビジネスがこの新技術から生まれているのか、より明確な説明を期待したいところです。

新しい技術的現象が新たな成長の起爆剤となるため、ベンダーはその貢献度についてより明確な説明を投資家に求められるでしょう。

Smith:ESDアライアンスでは、設計フローのセキュリティ確保に対する関心が高まり始めています。これは非常に大きな問題です。設計フローはより複雑化しており、協力、連携、新しい標準規格が求められています。

Vleeschhouwer氏:その通りです。Siemens EDAは、従来型の製品ライフサイクル管理(PLM)において最大手であり、製造業や産業市場にとって重要なプロセス全体の管理を担っています。その代表的な製品がTeamcenterです。興味深いことに、Siemens EDAはまだTeamcenterとCalibreの統合ができていません。これは本来、当然なされているべきことであり、今でもそうだと思います。

TeamcenterとCalibreは、Siemens Industry Softwareが保有する2つの10億ドル規模のブランドです。Calibreは半導体製造向けのツールとして圧倒的なシェアを持ち、少なくとも市場の3分の2を占めています。Teamcenterは従来型PLMの市場リーダーです。この2つのブランドが同じ企業に属していることを考えると、それらを連携させる取り組みは非常に興味深いものになるでしょう。

Jay Vleeschhouwer 氏について

Jay Vleeschhouwer氏は、米グリフィン証券のソフトウェア研究部門マネージング・ディレクターです。ソフトウェア、半導体、コンピュータハードウェアを含むテクノロジー分野のリサーチアナリストとして40年以上の経験があります。Vleeshhouwer氏は、Design Automation Conference(DAC)で毎年「State of EDA」を発表しています。2025年の発表スライドはこちらからダウンロード可能です:DAC presentation (June 2025) 2.pdf 

注:ESDアライアンスは、アリゾナ州フェニックスで開催される SEMICON Westにおいて、10月7日(火)午後1時から4時(米国時間)に3時間のデザイントラック「The Convergence of Semiconductor Manufacturing and Design」を開催します。

Robert(Bob)Smithは、SEMI のテクノロジーコミュニティであるESD アライアンスのエグゼクティブディレクターです。

出典: 元記事を読む

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