2026年1月版 半導体エンジニア向けレポート

微細化技術の進展と新たな材料
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今月は「CES 2026」での発表を中心に、AIインフラの実装(帯域・電力・製造能力配分)に関する論点が前面化しました。特に「HBM4」の具体化、シリコンフォトニクスへの注目、そして製造プロセスの先端ノード競争に伴うサプライチェーンの再編が、装置・材料・実装領域を含む供給網の論点として浮上しています。

AI「物理実装」フェーズへの突入――HBM4、シリコンフォトニクス、2nmプロセスの現在地

2026年1月、ラスベガスで開催されたCES 2026は、AIが「クラウド上のチャットボット」から、ロボットや自動運転車などの「物理世界(Physical AI)」へ及ぶ応用領域の拡張を示す発表が相次ぎました。

これに伴い、半導体業界ではメモリ帯域、電力効率、そして製造キャパシティの配分を巡る競争が続いています。今月の技術・産業トレンドを5つのポイントで解説します。

1. メモリ:HBM4の「16層」時代とSKハイニックスの独走

AIシステムの性能を左右するHBM(広帯域幅メモリ)は、次世代規格「HBM4」の量産準備が進んでいます。

SKハイニックスのHBM4:CESにて「16層 48GB HBM4」を公表しました。同社は米国にAIソリューション特化の新法人「AIカンパニー(仮称)」を設立し、Solidigmを再編してeSSD事業と連携させるなど、AIインフラへの体制整備を強化していると説明しています。

「スーパーサイクル」と供給制約:SKハイニックスの2025年度決算は、売上高97兆ウォン(約10.5兆円)、営業利益47兆ウォン(約5.1兆円)と過去最高を記録しました。一方で、マイクロンはAI向け需要へのリソース集中を理由に、小売向けCrucialブランドのDRAMメモリモジュール事業から撤退する方針を公表しました。AIサーバー向け需要が生産能力を圧迫しており、供給タイト化が長期化する可能性を指摘する見方があります。

キオクシアの体制変更:キオクシアは新社長に太田裕雄氏が就任予定(2026年4月1日付)です。サンディスクとの製造合弁契約を2034年まで延長し、生成AI需要に対応した3次元フラッシュメモリの安定生産体制を固めました。

2. ロジック・プロセス:2nm量産と「ドライレジスト」技術

ロジック半導体の微細化は2nmノード(N2)が主戦場となり、新材料の導入が進んでいます。

2nmの技術的課題:2nm世代では、微細化に伴う確率的欠陥(Stochastics)が課題です。ラムリサーチは、EUV露光の線量低減とパターン忠実度向上を実現する「ドライレジスト技術(Aether)」が、先端DRAM向けのEUVドライレジスト技術として採用された(tool of record)と発表しました。

TSMCの動向:TSMCは2025年第4四半期決算で純利益が前年同期比35%増と好調を維持。2nmプロセスについては、量産計画の詳細は各社の公式開示を中心に整理する必要があります。

インテルの収益構造と再編:インテルは第4四半期決算で純損失を計上し、18Aプロセスの立ち上げを進める一方で、財務体質改善のために資本政策の見直しや投資配分の調整が論点となっています。ファウンドリ事業の立て直しが急務です。

3. 次世代インターコネクト:「シリコンフォトニクス」への関心拡大

AIデータセンターの電力消費が「国家レベル」に達する中、電気配線を光に置き換えるシリコンフォトニクスが実用段階に入りました。

光インターコネクトへの移行:データ伝送のエネルギー効率を改善するため、プロセッサと光通信機能を統合する「コパッケージド・オプティクス(CPO)」への注目が高まっています。ラムリサーチは、シリコンフォトニクス特有のナノスケール導波路形成に向けた精密エッチング技術の開発を進めています。

三菱電機の増産:三菱電機は、AIデータセンター向け光デバイス(EML)の生産能力を2028年度に3倍(2024年度比)に引き上げる計画です。パワー半導体への投資の一部を、成長著しい光デバイスへ振り向けるポートフォリオ転換を進めています。

4. AIインフラと「フィジカルAI」

NVIDIAはCESにて、ロボットや自動運転車などの「フィジカルAI」向けプラットフォーム「Rubin」や基盤モデル「Cosmos」を発表しました。

ロボティクスと自動運転:NVIDIAの技術は、自動車・ロボット領域への適用例を含めて紹介されました。AIがデジタル空間から物理的な筐体の制御へと領域を広げており、センサーフュージョンやエッジ推論チップの需要を押し上げる可能性があります。

エネルギーの壁:AIデータセンターの電力確保が主要課題の一つとなり、キオクシアとGoogleが水力発電の活用で連携するなど、電力調達が半導体工場の立地や操業の前提条件になりつつあります。

5. 装置・材料・サプライチェーンの地政学

米中対立やサプライチェーンのブロック化は、技術開発や工場建設に直接的な影響を与え続けています。

マイクロンのメガファブ:マイクロンはニューヨーク州で米国史上最大規模となるメモリ工場の起工式を行いました。AI向けメモリの国内自給率向上を目指す米国の国策を代表するプロジェクトです。

中国の動向:中国は「AI+製造」イニシアチブを掲げ、2027年までにAIコア技術の自給自足を目指しています。一方で、半導体関連の輸出規制強化の動きもあり、日本企業にとって希土類(レアアース)などの調達リスクが懸念されています。

総括

2026年の半導体開発は、単なる微細化競争から、「HBM4やシリコンフォトニクスによるシステムレベルの帯域・電力最適化」と、「AI需要に特化したリソース配分(レガシーの切り捨てと先端への集中)」へとシフトしています。

電力制約やサプライチェーン要因が、量産計画や開発投資の前提条件として扱われる場面が増えています。

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