株式会社SCREENセミコンダクターソリューションズ(SCREEN)は、前工程のウエハ洗浄で長期の出荷実績を積み上げる一方、先端パッケージ工程では“マスクレス描画”を武器に直接描画露光装置を展開している。2025年12月3日には、先端半導体パッケージ向け直接描画露光装置の最新モデル「DW-3100」を発表し、1µm以下の解像度と、反り・歪み・位置ズレを踏まえた露光最適化を打ち出した。
本稿では、同社の製品・協業発表を基に同社の戦略を、①先端パッケージ工程の要求変化、②洗浄装置の足場、③次世代露光(High NA EUV)を見据えた共同開発の3点から考察する。
先端パッケージが押し上げる「設計反復」と“マスクレス”の価値

AI半導体の進化に伴い、半導体パッケージは大型化し、異種チップ混載(ヘテロジニアスインテグレーション)への対応が求められる局面に入ったとSCREENは説明する。
この領域では、設計変更の頻度が上がりやすく、フォトマスク前提の工程はリードタイムとコストの負担が膨らみやすい。そこで「マスクレスで必要なパターンを描く」直接描画露光は、試作だけでなく多品種・短サイクルの量産でも意味を持ちやすい。
DW-3100:解像度だけでなく“ばらつき吸収”を武器に

DW-3100は、独自のGLV(Grating Light Valve)技術を用いたマスクレス露光という基本を継承しつつ、光学系刷新により1µm以下の解像度を実現したとされる。
注目点は、解像度の数値以上に「現物のばらつき」への踏み込みにある。先端パッケージ工程では、ウエハの反り・歪み、チップ位置ズレなどが歩留まりに直結する。
SCREENはDW-3100に画像処理による補正技術を搭載し、反りや歪み、位置ズレを認識した上でウエハ/チップごとに露光を最適化できるとしている。また、アライメント方式としてグローバル/ローカル/Die-by-die(チップごと)への対応、ウエハ加え角型パネルへの対応など、工程条件の幅を広げる仕様が示されている。
さらに、直接描画の特性を生かした各チップへのユニークID付与によって、製造履歴管理の支援にも言及している。
洗浄装置:「各カテゴリ世界シェアNo.1」を掲げる

前工程側では、SCREENが2025年7月1日に、半導体洗浄装置の累計出荷台数が15,000台を突破したと発表した。枚葉式洗浄(SUシリーズ)、バッチ式洗浄(FCシリーズ)、スピンスクラバ(SSシリーズ)を中心に構成し、洗浄の各カテゴリで世界シェアNo.1(同社調べ)を掲げる。
微細化が進むほど、洗浄は“付帯工程”ではなく、欠陥密度やばらつきを左右する性能要件になりやすい。後工程で先端パッケージ化が進んでも、前工程の清浄度不足は最終歩留まりや信頼性に跳ね返るため、洗浄の投資意義は相対的に下がりにくい構図がある。
High NA EUVを見据えた共同開発:IBM協業と米国R&D拠点

次世代露光として、オランダASML社が独占製造しているHigh NA EUV技術を見据えた戦略が必要となる中、2025年9月24日、SCREENとIBMは次世代EUVリソグラフィ向け洗浄プロセス開発に関する合意を公表した。
露光世代が進むほど、微小な異物や微細欠陥が露光・パターン形成へ与える影響が大きくなり、洗浄プロセスの要求は上がりやすい。装置メーカーが顧客・研究機関と共同でプロセス開発に踏み込む動きは、装置単体の性能競争を「工程内での再現性・適用範囲」へ拡張するものといえる。
またSCREENホールディングスは2025年12月16日、米国ニューヨーク州に研究開発拠点「ATCA(SCREEN Advanced Technology Center of America)」を設立したと発表し、ウエハ洗浄技術開発の加速を推進している。
環境性能:imecとの協業で“生産性以外”の評価軸を取り込む

プロセス高度化は電力・薬液・温室効果ガスなど環境負荷の論点も伴う。SCREENは2025年3月12日、ベルギーの研究開発機関imecとの新たな共同研究開発契約を公表し、環境負荷(ecological footprint)を意識した技術開発を進める方針を示した。
装置の評価軸が「性能・生産性」だけでなく「環境要件を満たす運用性」へ広がっている。
工程最適と環境要件を同時に満たす装置像を描くSCREEN

SCREENの直近の発表を時系列でみると、同社の重心は「前工程の洗浄高度化」と「先端パッケージ工程の描画柔軟化」にあることがわかる。
後工程側では、DW-3100が1µm以下の解像度に加え、反り・歪み・位置ズレを認識して露光を最適化する設計を前面に出し、マスクレス露光を“工程の現実解”へ近づけた。
前工程側では、累計15,000台の洗浄装置出荷実績を足場に、次世代EUVに向けた共同開発(IBM)や米国でのR&D拠点整備(ATCA)を進め、露光世代の更新に合わせて洗浄要件が上がる局面を取り込もうとしている。
さらにimecとの協業で環境性能の論点も重ね、工程最適と環境要件を同時に満たす装置像を描く。
参考リンク
SCREEN(公式)
IBM(公式)
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