日本の半導体装置出荷統計から読み解く―復権へのロードマップ

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半導体製造装置需要の高低は、世界経済やIT需要の波とともに大きく変動する。そして、短期指標である月次出荷統計は、業界の“今”を鋭く映し出す貴重な情報源だと言える。

本記事では、経済産業省の生産動態統計に基づく月次出荷額の推移から、回復の兆しと方向性を読み解きつつ、SEAJによる装置販売予測や世界市場との比較を通じて、日本の半導体の現在の世界におけるポジションを読み解き、復権へのロードマップを考察する。

1. 月次統計から見る出荷のリアル

経済産業省の生産動態統計「製品月表:半導体製造装置及びFPD製造装置」は、月次の生産・出荷金額(百万円単位)を公開しており、そこから露光装置や薄膜形成装置など装置カテゴリ別の動向分析も可能である。

例えば、アクシスリサーチ研究所が運営するwebサイト「GD Freak」による経産省データの再集計では、2025年5月時点の製造装置の生産金額は前年同月比1.6%減の2,178億円でありながら、直近1年間では9.6%増の積上げを示している。このような月次のデータの差から、業界の短期循環と回復期の周期を把握できる。

2. SEAJが予測する日本製装置の回復と成長

日本半導体製造装置協会(SEAJ)が2025年7月に発表した最新予測によれば、2024年度の日本製半導体製造装置販売額は前年比29.0%増の4兆7,681億円と大幅な増加を見せ、2025年度には同2.0%増の4兆8,634億円、2026年度には同10.0%増の5兆3,498億円、そして2027年度には同3.0%増の5兆5,103億円に達すると見込んでいる。

この予測の背景にあるのは、AI関連の装置需要と、先端メモリ・ロジックの世代交代を見据えた投資ラッシュだ。2024年度は、メモリ価格の反転上昇と生成AIブームが拍車をかけ、装置需要が一気に回復。特に、TSMCなどの台湾ファウンドリによる2nm世代(GAA構造)の立ち上げ投資と、HBM対応DRAMラインの拡張が市場拡大を牽引した。

2025年度に入ると、前年の反動減を懸念する声もあったが、SEAJでは、引き続きプラス成長が維持されると見通しを立てている。これは、AI向けサーバの増加や、スマホ・PCにおけるエッジAIの本格化により、ロジック・メモリの両分野で継続的な装置投資が期待されていることによる。

さらに、2026年度以降は地域的な広がりも加速。欧米や日本国内でも2nmプロセス対応の投資が動き出すとみている。また、それとともに、300層以上のNANDや、BSPDN(背面電源供給)といった新技術への対応装置が需要を押し上げると、SEAJでは分析している。

このように、2023年から2027年までの装置市場は、年平均成長率(CAGR)4.9%と安定した拡大傾向にあり、日本製装置のグローバル競争力が問われる局面に差し掛かっていると言える。中でも、GAAやHBMに対応できる露光・成膜・エッチング装置の高度化、歩留まりを支える検査装置の開発力が、各社のシェア拡大の鍵を握るだろう。

3. 2024年末の販売高は短期急回復へ

SEAJが発表した2024年12月の暫定値によれば、日本製半導体製造装置の販売高は、前年同月比44.7%増、前月比9.3%増の443.4億円(3か月移動平均)に達し、年初からの増勢に拍車をかけている。

これにより、2024年度全体の販売額は速報値ベースで前年比22.9%増の約4兆4,356億円に達し、予測を上回る可能性も示されている。

4. WSTSの予測が示す方向性

WSTSの市場予測によれば、2024年の世界半導体市場は前年比19.7%増の6,305億ドルとなり、2025年は11.2%増の7,009億ドル、2026年は8.5%増の7,604億ドルと3年連続の成長が見込まれている。

この成長を支えるのは、AIサーバ向けGPUやHBM(高帯域メモリ)、エッジAI搭載のスマートデバイスなどであり、装置需要もこれに追随する形で技術進化を求められている。

5. ファブレス/ファウンドリ構造と月次出荷の相関

月次出荷額には、ファブレス企業からファウンドリへの設計発注や、メモリ市場の回復・サイクル動向が反映されやすく、いわば“先行指標”としての価値がある。AI向けロジック半導体の増産や、DRAM/NANDの在庫調整を通じた投資回復は、装置受注・出荷額の月次推移に直接反映する。

また、SEAJが示すGAA(Gate-All-Around)構造や背面電源供給ネットワーク(BSPDN)、高積層メモリ技術への対応も、先端装置需要の論点として注目される。

月次の装置出荷統計は再興のための精密な羅針盤

このように日々更新される月次の装置出荷統計は、小さな数字の積み重ねながら、日本の半導体装置業界が再興するための精密な羅針盤と言える。今日本の半導体装置業界にとって必要なのは、安定した投資環境の整備と技術革新への支援や、ファウンドリとの連携強化やAI・メモリ領域への迅速対応によって、グローバル競争力を高めることである。

*この記事は以下のサイトを参考に執筆しました。

【出典一覧(タイトル:URL)】
半導体製造装置の国内出荷額、12月は前年比44.7%増の443.4億円
半導体製造装置の国内生産金額(GD Freak分析)
SEAJ 2025年7月装置販売高予測(公式資料)
半導体製造装置生産・出荷動向(経産省 生産動態統計)
WSTS 半導体市場予測(世界市場成長)


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