半導体の歴史と「再注目」の背景
半導体は「産業の米」と呼ばれてきた。家電から自動車、通信機器、医療機器に至るまで、あらゆる産業の基盤を支えるからだ。1980年代、日本はこの分野で世界シェアの約50%を誇り、NEC、日立、東芝といった企業が世界ランキングの上位を占めていた。研究開発力と製造力を兼ね備えた日本の半導体産業は、当時「世界一の技術立国」を象徴する存在だったといえるだろう。
しかしその後、状況は急速に変わった。1990年代以降、韓国のサムスンや台湾のTSMCが台頭し、米国勢も設計・ファブレス分野で復活を遂げた。日本企業はメモリ分野の競争から後退し、合併・統合・撤退が相次いだ。2020年代初頭の時点で日本の世界シェアは2割を切り、「かつての半導体大国」と評されるようになった。
ところが近年、半導体は再び脚光を浴びている。背景には米中対立やサプライチェーンの分断といった地政学リスクの高まりがある。安全保障そのものとして半導体が位置づけられ、日本でも国策を挙げての再興プロジェクトが次々と動き出した。TSMCが熊本に建設した日本初の拠点「JASM」、Rapidusによる次世代ロジック半導体開発、経産省による巨額補助金──こうした動きが続き、メディアでも「半導体ルネサンス」という言葉が聞かれるようになった。
つまり、半導体は再び注目産業に返り咲いている。しかし注目されるのは企業や技術だけではない。そこで働く「人」、すなわちキャリアパスの広がりにも関心が高まっているのだ。
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