生成AI向け半導体の増産においては、前工程の投資だけでなく、ウエハ段階のテスト工程が量産能力(出荷可能量)を左右しやすい。HBM(High Bandwidth Memory)や先端ロジックでは、微細ピッチ化・多ピン化・高電流化・高速信号化が同時に進み、テスターとウエハを接続するプローブカード(ウエハの検査工程に用いられる検査器具)の性能と供給がボトルネックになり得る。
韓国のKorea Instrument(KI)は、プローブカードを主力とし、MEMS(微細加工)型を中核に据える企業である。公式情報からは、設計から製造・組立までを内製化し、メモリと非メモリの両領域で“総合ソリューション”を志向する姿が読み取れる。
本稿では、このKIの現状から「プローブカード」競争の現在地を探る。
プローブカードは電気設計・精密機構・製造技術が一体になった製品

KIの会社概要では、1996年設立、拠点は京畿道華城市、主力事業はプローブカードとAMB基板としている。プローブカードについては、設計(回路・材料・工程)と熱/電力/信号/3Dシミュレーション、MEMSプローブの自社ライン、超精密アライメント、そして自動挿入・ボンディングまでの工程能力を“中核技術”として並べている。
ここで重要なのは、プローブカードが単なる「部材」ではなく、電気設計・精密機構・製造技術が一体になった“工程装置に近い製品”だという点である。要求仕様が上がるほど、外部委託の切り分けが難しくなり、開発と量産のフィードバックを回せる体制そのものが競争力になる。
外部との連携で性能アップ

KIが自社掲載のインタビューで強調する点は、微細化でプローブが細くなるほど、電流容量(高電流対応)や機械的耐久(接触寿命)の確保が難しくなる点である。HBMや高性能ロジックでは、信号品質(SI)・電源品質(PI)も含めて要求が上がり、接触の再現性やばらつき管理が歩留まりに直結しやすい。
同社は、ロジック向けについて「グローバルなテストメーカーと高速プローブカードを共同開発している」と述べ、装置・テスタ側とセットで最適化する“共同開発モデル”を拡げたいとしている。テスト領域は、単独で性能を作り込むよりも、顧客装置・計測系と擦り合わせて勝つ色合いが強い。
顧客主導になりやすいという難点も

一方で、公開情報から見て取れる弱点もある。インタビューでは「メモリはサムスン電子との協業が比較的前提条件になりやすい」との趣旨が語られており、メモリ領域では顧客主導の仕様・評価に沿う色合いが強いことが示される。
これは量産採用が取れれば強い反面、顧客集中や市況変動の影響を受けやすい構図にもつながり得る。
また、同社自身が「LSI(ロジック)では要求がより専門化し、装置メーカーとの共同開発が必要」と整理している通り、非メモリ領域は“認定と摺り合わせ”の負荷が重い。先端ロジックのテストは仕様変更の頻度も高く、開発費・評価期間・量産立上げの不確実性が増す。メモリから非メモリへ需要の比重が移る市場トレンドは、製品ミックス転換という経営課題も内包する。
DRAM/HBMの取り込みと、さらにLSIへの拡張へ

KIは同インタビューで、DRAMとHBMの供給に入ったこと、並行して台湾・中国を含む地域でLSI領域へ拡張する準備を進めていることを述べている。メモリとLSIの両輪で市場を広げ、事業リスクを分散させる方針を明示した。
会社概要のCEOメッセージでも、AI・車載電装・HPCの進展でテスト要求が高度化しているとして、先行技術開発への継続投資、製造能力の強化、顧客エンジニアリングとの一体運用で変化に対応する方向性を示している。
KIの強みはテスタ側との共同開発まで含めて勝ち筋を描いている点

KIの位置づけは、HBM時代に顕在化する「テスト工程の供給力」を、MEMSプローブカードと一貫製造体制で取りに行く企業である。
強みは、微細ピッチ・高電流・寿命といった難所を論点化し、テスタ側との共同開発まで含めて勝ち筋を描いている点にある。HBMの増産局面では、前工程のキャパシティ拡張だけでは不十分で、ウエハテストの立ち上がり速度と歩留まりが出荷能力を規定する。プローブカードは、その接点に位置する“見えにくい供給制約”となりつつある。
*この記事は以下のサイトを参考に執筆しました。
参考リンク
- KOREA INSTRUMENT 会社概要
- A Challenge for Sustainable Growth: Korea Instrument Global Probe Card Strategy
- Annual Probe Card Report Summary – May 2025 | TechInsights
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