レガシー半導体の値上がりが止まらない理由とは?

最新技術動向
この記事を読むのにかかる時間: 2

レガシー半導体が「黄金時代」に突入? 

近年、レガシー半導体の価格上昇が続いている。先端半導体の開発競争が激化する一方で、40nm以上のプロセスノードを持つレガシー半導体の需要が高まり、価格は右肩上がりだ。特に、自動車、産業機器、医療機器向けのチップでは供給不足が常態化し、企業は安定供給の確保に奔走している。本記事では、なぜレガシー半導体の価格上昇が止まらないのか、その背景と今後の展望について考察する。 

レガシー半導体が値上がりする4つの理由 

1. 供給制約:生産設備の維持・更新が困難に 

レガシー半導体を製造するファウンドリーは、先端プロセスへの投資を優先しており、旧世代プロセスの生産能力は縮小傾向にある。例えば、TSMCは5nm以下のプロセスに年間300億ドル以上の投資を行う一方、28nm以上の設備投資は限定的だ【出典:TSMC 2024 Q1決算報告】。このため、旧世代プロセスでの生産ラインは老朽化し、維持コストが増加。結果として、供給が限られ、価格が高騰している。 

2. 需要の急増:自動車・産業機器・家電分野の成長 

自動車業界ではEV(電気自動車)やADAS(先進運転支援システム)の普及に伴い、マイコンやパワー半導体の需要が急増している。特に、IGBTやMOSFETといったパワー半導体は、EV1台あたりの搭載数が増加し、市場は年間10%以上の成長を見せている【出典:IEA EV Outlook 2024】。また、産業機器や家電製品でもスマート化が進み、レガシー半導体の使用が拡大している。 

3. 長期契約と在庫戦略:調達の難易度が上昇 

大手半導体メーカーやOEM企業は、供給不足への対策として長期契約を増やしている。例えば、Infineonは自動車メーカー向けに最大10年の長期供給契約を締結し、レガシー半導体の安定供給を図っている【出典:Infineon IR資料】。この結果、スポット市場での流通量が減少し、短期的に必要な企業がプレミアム価格で購入せざるを得ない状況が生まれている。 

4. 地政学リスクと貿易規制:製造拠点の偏在 

近年、米中対立の影響で中国製半導体の輸出制限が強化され、日本や欧米の企業が代替調達を求めるケースが増えている。特に、中国のSMICが米国の制裁対象となったことで、28nmプロセスの供給に不透明感が広がっている【出典:Bloomberg 2024年1月報道 】。また、台湾TSMCや韓国Samsungに依存するサプライチェーンも、地政学リスクを抱えており、供給網の多様化が求められている。 

今後の展望と企業の対策 

レガシー半導体の価格上昇は今後も続く可能性が高い。しかし、企業は以下のような戦略を取ることで、影響を最小限に抑えることができる。 

  1. 長期契約の活用:安定供給の確保に向け、主要サプライヤーとの長期契約を結ぶ。 
  2. 代替品の検討:より新しいプロセスノードや異なるアーキテクチャへの移行を検討する。 
  3. サプライチェーンの分散化:地政学リスクを考慮し、複数の供給元を確保する。 
  4. 自社生産への投資:一部の企業は、自社での製造ラインを確保する動きも見せている。 

レガシー半導体の「黄金時代」は、供給制約と需要の急増によって生まれた。しかし、企業の戦略次第では、この変化をチャンスに変えることも可能だ。今後も市場動向を注視しながら、適切な対策を講じることが求められる。 

TOP
CLOSE
SEARCH