韓国メモリ2強の戦略差が浮き彫りに──Micronを追うSK hynixとコスト重視に傾くSamsung

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2025年Q2(4–6月)は、HBM(High Bandwidth Memory)を中心にメモリ大手の明暗がくっきり分かれた。韓国勢では、SK hynixはHBM3Eの量と歩留まりで抜け出し、四半期として過去最高の売上・利益を更新。一方のSamsung Electronicsは、HBMの立ち上げ遅れと対中規制の逆風がのしかかり、半導体部門の利益が大きく縮小した。

対比軸としてMicronを見ると、HBM3Eの“スケール出荷”を武器に過去最高売上を更新。HBM/DDR5/NANDという三つの技術軸で、どこにリソースを振るか――この意思決定が日本の装置・材料サプライヤの受注計画にも直結する局面になっている。

本稿では、SK hynixとSamsung Electronicsの韓国メモリ2強の戦略を分析する。

SK HynixとSamsungの2025年Q2(4–6月)の決算

SK hynixは売上高2兆2,232億ウォン、営業利益9兆2,129億ウォンと、いずれも四半期で過去最高。背景はHBM3E(12-High)を中心としたAIメモリ需要の強さと、DRAM・NANDの出荷・価格の想定上振れだ。

Samsungは連結ベースの営業利益が前年同期比で大きく減少した。とくにデバイスソリューション(半導体)部門は、売上規模こそ維持したものの、HBM出荷の遅延と米国の対中輸出規制の影響で、利益が大きく目減りした。

一方、Micronは会計年度Q3(同暦Q2相当)で過去最高売上を記録。HBM売上は前期比で「約50%増」となり、HBMがDRAM全体の収益性を底上げした。

HBMは「採用認証×高積層×量産歩留まり」の三点セットが揃わないと収益に直結しにくい。今四半期は、その“揃い具合”がそのまま損益の差として可視化されたと言っていいだろう。

HBMの分水嶺

SK hynixはHBM3Eの12-Highを主力に、品質と供給安定性で先行。AIサーバー各社の量産立ち上げに歩調を合わせ、設計・調達の現場で「まず選定候補に入る」地位を確立した。

Samsungは年初に有力顧客の承認前進(8-HighのHBM3E)という朗報があった一方、Q2の出荷タイミングが想定より遅れ、半導体部門の採算を直撃した。重要なのは、“承認の獲得”と“量産スループットの確保”は別物という現実だ。後者をいかに短期で追いつくかが、下期の分岐点になる。

MicronはHBM3Eの量産“スケール”を実証。データセンター向けの売上は過去最高圏に達し、次四半期も増勢見通しを掲げた。

HBMは8-High/12-Highなどの積層設計にパッケージ・熱設計・歩留まりが絡み、事実上“総合格闘技”。現時点の序列は、SK hynixが一歩先、Micronがスケールで肉薄、Samsungは巻き返しの途上という構図だ。

DDR5の裾野拡大-HBMの“外周”を固める本流市場

HBMがAIサーバーの中核を担う一方、汎用サーバー/PCの本流ではDDR5が急速に普及している。Samsungは決算で高密度DDR5の構成比拡大を明言。Micronも1γ(ワン・ガンマ)世代の16Gb DDR5の出荷を開始し、最大9,200MT/s、前世代比で速度15%・電力20%以上の改善を謳う。

前工程では微細化による成膜・エッチング・洗浄のタクト最適化、後工程ではバーンイン/メモリテストのスループット増が重要テーマ。基板・コネクタ・電源系では、PI/SI(電源・信号完全性)の要求水準が上がり、計測・検査の高精度化ニーズが持続する。HBMに比べ収益性は控えめでも、“広い裾野”でビット需要を安定的に吸収するのがDDR5だ。

NANDのPLC化は限定的か

NANDでは、当面の量産の主力はQLC(1セル4ビット)であることに疑いはない。SK hynixは321層の量産開始を発表し、コストと密度の両面でブレークスルーを示した。Samsungは第8世代V-NANDの適用領域を自動車向けまで拡大し、信頼性と高密度の両立を前面に押し出す。サプライチェーン側では、SanDiskがQLCベースの大容量SSD(256TB)のプラットフォームを公表し、QLCの“現実解”としての存在感を強めている。

一方で、PLC(1セル5ビット)はコスト面の魅力が語られるものの、直近1年の主要各社の公式発表・決算資料ベースでは明確な量産時期の示し方は限定的だ。目先はQLCの歩留まり・コントローラ最適化でTCOを詰めるフェーズが続くとみるのが妥当だろう。

Samsungは、HBMでのキャッチアップを進めつつ、NANDや汎用DRAMでのキャッシュ創出(在庫・製品ミックス最適化)に軸足を置く再設計を進めている。短期はHBMの認証・歩留まり回復が最優先、中期はHBM4世代に向けたパッケージ技術(狭ギャップ充填、ハイブリッドボンディング等)とコスト競争力の再設計が鍵になる。これが、Samsungがコスト重視の戦略をとっている理由と思われる。

顧客の設計思想に自社の技術を“合わせに行くか”を明確化しよう

以上、韓国メモリ2強の現状と戦略を見てきた。いずれにしても、2025年後半は「HBMの量産スループット × DDR5の裾野 × QLCのTCO」の三本柱で案件が動くだろう。どの顧客の設計思想に自社の技術を“合わせに行くか”を明確化できるかが、勝敗の鍵を握るのだ。

*この記事は以下のサイトを参考に執筆しました。

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