インテル2026年第2四半期:売上25%増「15年超ぶりの伸び」——GAAP110億ドル赤字の正体と、DCAI・ファウンドリーが示す復調の中身

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結論:トップラインの復調は本物であり、GAAPの巨額赤字は「米政府保有スキーム」に伴う非現金の評価損として切り分けて読むべき決算である。売上高は161億ドル(前年同期比25%増)と、CEOのリップブー・タン氏が「15年超ぶりに最も強い増収」と語る水準に達し、4月時点のガイダンス上限(148億ドル)を13億ドル上回った。Non-GAAP営業利益率は17.2%(前年同期△3.9%)、Non-GAAP EPSは0.42ドルとガイダンス(0.20ドル)の2.1倍で着地した。

一方、GAAPベースでは110億ドルの純損失(EPS△2.16ドル)を計上した。主因は、CHIPS法セキュアエンクレーブ契約に基づき米商務省へ交付される「エスクロー株式」に係るデリバティブ負債の公正価値変動125億ドルという非現金の評価損であり、営業損益はGAAPでも18億ドルの黒字(利益率11.1%、前年同期△24.7%)へ転換している。営業キャッシュ・フローは70億ドルの収入だった。

事業の中身では、DCAI(データセンター・AI)が前年同期比59%増収・営業利益約4倍でクライアント部門を利益で逆転し、Intel Foundryは31%増収・営業赤字を11億ドル縮小した。CFOは「歩留まり向上とサイクルタイム短縮による数量の上振れ」を挙げ、装置・クリーンルーム・基板への投資を「大幅に増やす」と表明。AIサーバー向けCPU需要と18A世代の立ち上がりが、再建ストーリーを数字で裏づけ始めた四半期である。

財務ダッシュボード。売上高161億ドル、前年同期比+25%、Non-GAAP EPS 0.42ドル、ガイダンス0.20ドルの2.1倍、Non-GAAP営業利益率17.2%。

米ドル建て・US GAAP(未監査)。Non-GAAP指標の定義・調整内訳はプレスリリース記載のとおり。

1. 業績の変遷——横ばい圏を抜けた売上、EPSは4四半期連続で切り上がり

四半期売上高は2025年を通じて13億ドル台後半の横ばい圏(Q2’25:129億ドル→Q1’26:136億ドル)で推移してきたが、当四半期に161億ドルへ一段跳ねた。前四半期比でも18%増であり、Q1’26決算時点でCEOが「6四半期連続で自社想定を上回った」と述べていた流れに、当四半期も「ガイダンス超過」(CFO)が加わった形である。Non-GAAP EPSも△0.10ドル(Q2’25)→0.23→0.15→0.29→0.42ドルと回復基調を鮮明にしている。

Quarterly sales (blue bars, billions) and Non-GAAP EPS (orange line) from Q2'25 to Q3'26e, showing sales rising from 12.9 to 16.3 and EPS moving from -0.10 to 0.38, with quarterly data points labeled.

出典:インテル各四半期決算リリース(Q2’25・Q2’26は同梱資料、Q3’25〜Q1’26は各期リリース)より作成。
2025年通期売上529億ドルとの整合を検算済み。Q3’26はガイダンス。

増収の質も確認しておきたい。会社の説明では、上振れは「旺盛な需要と実行力の改善、とりわけ工場の歩留まり向上とサイクルタイム(製造リードタイム)短縮による数量の上振れ」によるものだ。需要だけでなく供給側の改善が数量を押し上げたという説明であり、Q1’26時点で「顧客需要が出荷能力を上回る」状況が続いていたことを踏まえると、当四半期の上振れ幅はインテルの供給改善速度を測る指標として読める。なお前年同期比較には、2025年9月のAltera(FPGA子会社)非連結化の影響が含まれる点に留意が必要である(「その他」セグメントの33%減収は主にこの要因)。

2. 利益の質——GAAP△110億ドルの正体は「米政府エスクロー株式」の評価損

GAAPとNon-GAAPの乖離が今回ほど極端な決算は珍しい。GAAP純損失110億ドルからNon-GAAP純利益22億ドルへの調整を分解すると、圧倒的な最大項目は「エスクロー株式の時価評価損」125億ドルである。

Bar and line chart showing quarterly revenue (blue bars, in billions) and Non-GAAP EPS (orange line) from Q2'25 to Q3'26e, with values: Revenue 12.9, 13.7, 13.7, 13.6, 16.1, 16.3 and EPS -0.10, 0.23, 0.15, 0.29, 0.42, 0.38. Caption notes US GAAP / Q3'26.

出典:プレスリリースのGAAP/Non-GAAP調整表より作成。
「持分投資損益等」は持分投資損益と事業売却損益の合計、「税効果・非支配持分」は両調整の合計。

エスクロー株式とは、米政府との新株予約権・普通株式契約(Warrant and Common Stock Agreement)に関連し、CHIPS法セキュアエンクレーブ契約の履行と資金受領に応じて米商務省(DOC)に交付される、エスクロー(第三者預託)に置かれた自社株式を指す。会計上はデリバティブ負債として時価評価され、当四半期はその公正価値変動(期中に交付済みの株式と期末時点で預託中の株式の両方を含む)が125億ドルの評価損となった。現金流出を伴わない会計上の損失であり、実際に当四半期の営業キャッシュ・フローは70億ドルの収入である。米政府による資本参加という特異なスキームが、損益計算書に大きなノイズを持ち込む構造は今後も続くため、インテルの決算はNon-GAAPベース(および営業損益・キャッシュ・フロー)で定点観測するのが実務的だろう。

その営業損益の改善は著しい。GAAP売上総利益率は27.5%から40.4%へ12.9ポイント上昇し、リストラ等費用は前年同期の18.9億ドルから1.7億ドルへ縮小。GAAP営業損益は△31.8億ドルから+18.0億ドルへ、Non-GAAPでは△5.0億ドルから+27.7億ドルへ好転した。粗利率の急回復と費用規律(Non-GAAP営業費用は前年同期比8%減の40億ドル)の両輪であり、後述する人員削減の効果が数字に表れている。

3. 会社計画と進捗の読み解き——ガイダンス大幅超過と、控えめなQ3見通し

Bar chart of quarterly revenue (blue) and Non-GAAP EPS (orange) from Q2'25 to Q3'26E; values: 12.9B/-0.10, 13.7B/0.23, 13.7B/0.15, 13.6B/0.29, 16.1B/0.42, 16.3B/0.38.

出典:Q1’26決算リリース(2026年4月23日、ガイダンス)
および同梱のQ2’26決算リリースより作成。

4月時点のQ2ガイダンス(売上138〜148億ドル・Non-GAAP EPS 0.20ドル)に対し、実績は売上161億ドル・同EPS 0.42ドル。レンジ上限を13億ドル上回る大幅なビートである。これを受けたQ3’26ガイダンスは売上158〜168億ドル(中央値163億ドル、前四半期比+1%)、GAAP売上総利益率41.0%・Non-GAAP同42.0%、GAAP EPS 0.31ドル・Non-GAAP EPS 0.38ドルと、水準は維持しつつ伸び率は慎重な設定だ。Q2のEPS実績0.42ドルに対しQ3想定が0.38ドルである点は、粗利率が改善想定(41.8%→42.0%)であることを踏まえると保守的にも見えるが、会社は理由を開示しておらず、続く四半期の「想定超過」が続くかどうかが焦点となる。通期の営業費用計画はGAAP約230億ドル・Non-GAAP約165億ドルと開示されている。

4. KPI・先行指標——DCAIが利益でクライアントを逆転、Foundryは赤字を11億ドル縮小

Bar chart of segment sales (in billions). CCPG: 78.7 vs 88.8; DCAI: 39.4 vs 62.6; Intel Foundry: 44.2 vs 57.7, with green YoY gains +13%, +59%, +31%.

出典:プレスリリースのセグメント補足資料より作成。セグメント売上には内部取引を含む(連結消去△55億ドル)。CCPGは旧CCG(クライアント・コンピューティング)を改称。

セグメントの景色が変わり始めた。DCAI(データセンター・AI)は売上63億ドル(前年同期比59%増)、営業利益24.7億ドルと前年同期(6.3億ドル)の約3.9倍に急拡大し、営業利益の絶対額でCCPG(クライアント・コンピューティング&フィジカルAI、旧CCG)の23.4億ドルを初めて上回る構図となった。AIサーバー向けCPU(Xeon)需要の強さが、GPU中心のAI投資の陰で「ホストCPU」の需要を押し上げているという会社の主張(CEO:「AIがかつてない計算需要を生み、CPUフランチャイズ、ASIC、先端パッケージング、ファウンドリー網で持続的成長を捉える」)を裏づける数字である。

Intel Foundryは売上57.7億ドル(31%増)、営業損失は前年同期の△31.7億ドルから△20.9億ドルへ約11億ドル縮小した。技術面のマイルストーンも並ぶ。18Aファミリーでは初のサーバー向け製品「Xeon 6+」を投入し、性能強化版の「Intel 18A-P」は昨年顧客に示したスケジュール通りリスク生産入り。Core Ultraシリーズ3(開発コード名Panther Lake)の一部は、ASMLの高NA(High-NA)EUV露光装置「EXE」を用いた量産段階に入ったと明かした。高NA EUVの量産適用を公表したのは業界の先頭を走る動きであり、装置・材料サプライヤーにとっても重要なシグナルである。このほか、Xeon 6系の増産に向けIntel 3の製造能力へ50億ユーロの投資、マスク製造(Intel Mask Operations)を担うBowersキャンパスの能力増強、Fortinetのセキュリティプロセッサ第6世代を設計・パッケージング・製造まで請け負う専用シリコン協業の拡大も発表した。

クライアント側では、CCPGへの改称自体がメッセージである。エッジAI・ロボティクス向けにCore Ultraシリーズ3を採用・評価する顧客が130社超に達し、ロボティクス開発フレームワーク「OpenVINO Physical AI」をオープンソースで公開。携帯ゲーム機向けの新ファミリー「Arc Gシリーズ」、10G〜200GbEをカバーするEthernet E835ポートフォリオなど、PC以外の売り先を広げる製品発表が続いた。SambaNova・フォックスコンとのラックスケール推論インフラ、Xeon+SambaNova RDU+NVIDIA Blackwellを組み合わせたVC2のエージェント型クラウドなど、エージェンティックAI(自律的にタスクを遂行するAI)基盤へのXeon組み込みも進む。

5. 財政状態——営業CF70億ドルの一方、調整後FCFは△84億ドル

6月27日時点の現金及び現金同等物と短期投資の合計は297億ドル(前期末374億ドル)、負債(短期・長期借入等)は505億ドル(同466億ドル)である。上半期に130億ドルのタームデットを発行し90億ドルを返済した。棚卸資産は125億ドルへ8.7億ドル増加し、内訳では仕掛品が78億ドルから87億ドルへ積み上がっている。増産局面の仕込みと整合的な動きである。

キャッシュ・フローの読み方には注意がいる。当四半期の営業キャッシュ・フローは70億ドルの収入と大きく改善した一方、会社が開示する調整後フリー・キャッシュ・フローは△84億ドルである。差の主因は、SCIP(半導体共同投資プログラム=工場への外部パートナー出資スキーム)に係るパートナーへの純分配△122億ドルで、上半期の財務活動ではパートナーからの拠出+41億ドルに対し分配が△143億ドルにのぼる。総設備投資は当四半期26.5億ドル(グロス)と前年同期(44.9億ドル)より抑制されているが、CFOは「今年・来年の製品とファウンドリーの成長を支えるため、装置・クリーンルーム・基板への投資を大幅に増やす」と述べており、下期以降の投資増加が示唆されている。従業員数はIntel本体で7.76万人と1年前(9.64万人)から大幅に減少し(Altera非連結化による約3千人の除外を含む)、2025年リストラ計画に伴う費用は当四半期1.7億ドルまで縮小した。

Bar and line chart of quarterly revenue (left axis) and non-GAAP EPS (right axis) from Q2'25 to Q3'26e: revenues rise from 12.9 to 16.3 (billions), EPS moves from -0.10 to 0.38 with intermediate values shown.

出典:プレスリリース「Other information」より作成。

6. トピックス——米政府・人事・パートナーシップ

当四半期の主な開示事項

①米政府との株式契約に伴うエスクロー株式の時価評価損125億ドル(非現金)を計上、②リーダーシップ刷新:CCPG責任者にアレックス・カトゥージアン氏、CTOにプシュカル・ラナデ氏、先端パッケージング責任者にソクヒ・リー氏、法務・人事等の統括にアパルナ・バワ氏を起用、③SambaNova・フォックスコン・VC2とのエージェント型AIインフラ、シーメンス・日立等との業種特化AI協業、Google Cloudとの社内AI活用拡大、④Intel 3能力への50億ユーロ投資、Bowersマスク能力増強、Fortinet向け専用シリコン、⑤Altera非連結化(2025年9月12日、51%売却)による前年同期比較への影響。

とりわけ米政府の資本参加は、損益のボラティリティ要因(エスクロー株式の時価評価)としてだけでなく、リスク要因の項でも「米政府による重要な持分取得」として明記される、インテル固有の論点である。政府出資・SCIPパートナー出資・政府補助金(上半期の設備関連受領1.7億ドル)と、資本構成の多層化が進んでおり、株主にとっての持分価値の読み解きは従来より複雑になっている。

7. 中期方針——「CPU・ASIC・先端パッケージ・ファウンドリー網」の4本柱

CEOのタン氏が示す成長の柱は、①CPUフランチャイズ、②ASIC(特定用途向けカスタムシリコン)、③先端パッケージング、④広大なウエハーファウンドリー網——の4つである。当四半期の発表は、Fortinet向け専用シリコン(②)、ソクヒ・リー氏の先端パッケージング責任者起用と18A/High-NA EUVの進展(③④)、Xeon 6+と物理AI展開(①)と、各柱に対応する布石が揃う。リスク要因には次世代プロセス「Intel 14A」の追求と、その大口外部顧客の設計採用・需要コミットメント獲得が明記されており、ファウンドリー事業の成否を測る次の関門は14Aの顧客獲得であることを会社自身が示している。財務面では投資拡大とキャッシュ創出の両立が課題であり、「装置・クリーンルーム・基板への投資拡大」宣言と調整後FCFマイナスの同居が、この移行期の姿を象徴している。

8. 市場環境——AIコンピュートの需要超過と「基板・メモリ不足」

会社の認識では、AIが基盤モデルから推論、エージェント型へと進化する中で計算需要は「かつてない」水準にあり、Q1時点では顧客需要が出荷能力を上回る状態が続いていた。リスク要因の記載には「業界全体の基板(サブストレート)およびメモリの不足」が現に生じている供給制約として挙げられており、CFOが投資対象に「基板」を名指ししたことと符合する。前工程だけでなく後工程・部材まで含めた供給網全体の逼迫が、インテルの投資判断を規定する環境認識である。地政学面では米中貿易摩擦・関税・輸出規制、中東・台湾情勢等が引き続きリスクとして列挙されている。

9. 今後のチェックポイント

  1. Q3ガイダンス(売上158〜168億ドル)の達成と「上振れ」の継続。保守的にも見えるEPS想定0.38ドルを実績が上回るか。ガイダンス超過の連続記録が、再建の信認を測る最短の物差しになる。
  2. Intel Foundryの赤字縮小ペース。△20.9億ドルまで縮んだ営業損失が、18A量産・Panther Lake立ち上げでどこまで改善するか。そして次の関門であるIntel 14Aの外部顧客獲得。
  3. エスクロー株式評価損の推移。自社株価に連動する非現金項目であり、GAAP損益は今後も大きく振れ得る。四半期報告書(10-Q)での負債残高・交付状況の確認を。
  4. 投資拡大とキャッシュのバランス。装置・クリーンルーム・基板への投資増強宣言に対し、調整後FCF(当四半期△84億ドル)とSCIPパートナー分配、債務残高505億ドルの推移。
  5. DCAIモメンタムの持続力。59%増収・利益4倍の反動の有無と、エージェント型AIインフラでのXeon採用拡大。
  6. 供給制約の帰趨。業界全体の基板・メモリ不足と自社の歩留まり・サイクルタイム改善が、数量上振れの再現性を左右する。

10. 主要データ一覧

財務指標の比較表(US GAAP/Non-GAAP)—Q2 2026とQ2 2025の売上高、利益率、成長率を示す表。要約と成長値を含む。外観は青と白のテーブル。

増減率はプレスリリースの開示値。セグメント売上は内部取引を含む。
DCAI営業利益の倍率・営業CF増減は編集部算出。

出典・免責

本記事は、以下のインテル公表資料(SEC提出Form 8-K添付のプレスリリース等)に基づき作成した。なお同梱資料のファイル名等には対象四半期を「3Q26」とする表記があるが、原本の記載どおり本記事は「2026年第2四半期決算(Q3はガイダンス)」として扱っている。

1. Intel Corporation「Intel Reports Second-Quarter 2026 Financial Results」(2026年7月23日、Form 8-K Exhibit 99.1)※同梱資料

2. Intel Corporation「Intel Reports First-Quarter 2026 Financial Results」(2026年4月23日)※Q2ガイダンスおよびQ1’26実績の参照

3. Intel Corporation「Intel Reports Fourth-Quarter and Full-Year 2025 Financial Results」(2026年1月22日)※Q4’25・2025年通期実績の参照

4. Intel Corporation「Intel Reports Third-Quarter 2025 Financial Results」(2025年10月)※Q3’25実績の参照

5. 同梱の決算速報記事(半導体銘柄 決算速報ツール自動生成、2026年7月23日)

免責事項:本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の有価証券の取得・売却等を勧誘するものではない。記載したガイダンス・投資計画・市場環境の見通しはすべて会社公表資料に基づくものであり、既知・未知のリスクや不確実性により実際の結果と大きく異なる可能性がある。Non-GAAP指標はUS GAAPに基づく指標の代替とみなすべきではなく、会社開示の調整表と併せて評価される必要がある。投資に関する最終判断は、読者自身の責任において行っていただきたい。
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