売上5.2倍、営業利益率75%。キオクシアが映す“NAND大復活”ー2026年4-6月は全項目が過去最高——AIデータセンター需要とNAND価格の急騰

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キオクシアの2027年3月期 第1四半期(2026年4-6月)は、売上収益1兆7,671億円(前年同期比+415.5%=約5.2倍、前四半期比+76.2%)、Non-GAAP営業利益1兆3,262億円(営業利益率75.0%。IFRS営業利益は1兆2,700億円・利益率71.9%)、親会社帰属四半期利益8,422億円、基本的EPS 1,539.91円。売上・利益ともに過去最高を大幅に更新し、会社ガイダンスもすべて上回った。会社資料によれば、けん引したのはNANDの販売単価(ASP)の急騰で、前四半期比で約70%上昇した。AIデータセンター向けの旺盛な需要が価格と数量の双方を押し上げ、財務面ではネットキャッシュ(実質無借金)も達成した。

横並びの財務KPI表。列ごとに売上1兆7,671億円、Non-GAAP利益1兆3,262億円、四半期利益8,422億円、自己資本比率50.8%、ASP+約70%とNAND価格急騰の動向を示す。

1.  結論——全項目が過去最高、ガイダンスも超過

まず要点を三つ。第一に、2026年4-6月は売上収益・営業利益・四半期利益・EBITDA・営業CFのすべてで過去最高を更新し、いずれも会社が5月に示したガイダンスを上回った。売上収益は前四半期比+76.2%、前年同期比+415.5%(約5.2倍)に達した。

第二に、原動力は「価格」である。会社資料によれば、NANDの販売単価(ASP)が前四半期比で約70%上昇した。AIデータセンター向け需要が需給を引き締め、価格と数量の双方を押し上げた。営業利益率(Non-GAAP)は前四半期の59.7%から75.0%へ高まった。なお、IFRSの営業利益は1兆2,700億円(利益率71.9%)で、Non-GAAP(1兆3,262億円)との差562億円には訴訟損失引当金繰入366億円・株式報酬194億円・PPA影響2億円が含まれる。

第三に、財務が様変わりした。過去最高の利益創出で自己資本比率は37.9%→50.8%へ改善し、社債・借入金を現預金が上回るネットキャッシュを達成。シニアローンは全額返済した。

なお、前年同期比が極端に大きいのは、前年同期(2025年4-6月)がメモリ市況低迷で売上3,428億円と底に近かった反動でもある。倍率の大きさは、前四半期比+76.2%の回復スピードと併せて読むのが妥当だ。

2.  業績の変遷——一四半期で前期通期の四分の三

四半期売上収益は、前年同期3,428億円、前四半期1兆0,029億円を経て、今回1兆7,671億円に達した。前期(FY2025)の通期売上は2兆3,376億円であり、今回はその約76%を一四半期で稼いだ計算になる。

四半期売上収益の推移を示す棒グラフ。青の過去実績は2025年4-6月3,428億円、前四半期比+2%。橙の今回は2026年4-6月17,671億円、前年比+415.5%。

図1:四半期売上収益(億円)。青=実績(過去分)、オレンジ=今回(2026年4-6月)。
前四半期比+76.2%、前年同期比+415.5%。

利益率の改善も急だ。会社資料によれば、営業利益率は59.7%→75.0%、当期純利益率(Non-GAAP)は40.9%→50.2%へ拡大。価格上昇が原価を上回るスピードで進み、収益性を押し上げた。

四半期売上高の推移。過去の同時期は3,428億円、前四半期は10,029億円、今回(2026年4–6月)は17,671億円。今回の前年比は+415.5%。

図2:利益率の急拡大(前四半期→今回、%、会社資料)。営業利益率は59.7%→75.0%。

3.  会社計画と進捗の読み解き

今回は、5月15日公表の第1四半期ガイダンス(売上収益1兆7,500億円、営業利益1兆3,000億円、当期純利益8,700億円)をすべて上回って着地。想定為替1ドル=159円に対し実績160円で、円安も追い風となった。

売上収益・営業利益・純利益を計画値と実績値で比較する棒グラフ。すべて実績が計画を上回る(例:売上収益 17,671 対 17,500、営業利益 13,262 対 13,000、純利益 8,870 対 8,700)。

図3:第1四半期の実績と会社ガイダンス(5/15公表、億円)。
琥珀の点線=計画、オレンジ=実績。三項目とも超過。

半期累計予想の表。売上収益は4兆1,571億円など、各指標と金額を示す。

累計値から逆算すると、第2四半期(7-9月)単独の売上収益はおおむね2兆3,900億円規模となり、第1四半期をさらに上回る計画だ。これらは会社公表の将来見通しであり、確定値ではない。

4.  KPI・先行指標——AIサーバー向けストレージが主役

アプリケーション別では、SSD&ストレージが66%、スマートデバイスが30%、その他4%。会社資料によれば全アプリで過去最高の売上を更新した。SSD&ストレージの内訳はデータセンター・エンタープライズ向けが6割超で、旺盛なAIサーバー需要により数量・単価ともに増加し過去最高となった。

売上構成のドーナツ図: SSD&ストレージ66%、スマートデバイス30%、その他4%で合計1兆7,671億円

図4:第1四半期のアプリケーション別売上構成。
SSD&ストレージが66%、うちDC・エンタープライズ向けが6割超。

製品世代の移行も進む。会社資料によれば、第8世代BiCS FLASH(3次元NAND)の生産比率が50%を超え、競争力の高い世代へのシフトが単価・原価の両面で効いている。SSD&ストレージは前四半期比+95.7%、スマートデバイスは同+55.8%と大幅増収だった。

表: アプリケーション別売上(第1四半期)。SSD&ストレージ66%、前四半期比+95.7%、スマートデバイス30%、前四半期比+55.8%、その他4%、前四半期比+2.3%」」

5.  財政状態——ネットキャッシュを達成

過去最高の利益で財務基盤は大きく改善した。総資産4兆7,305億円、資本合計2兆4,045億円、自己資本比率50.8%(前期末37.9%)。営業CFは8,663億円と過去最高、調整後コアFCF(営業CF−ネット設備投資)は8,272億円で前四半期の約3倍となった。

資金使途も明確だ。会社資料によれば、当四半期はシニアローンを4,075億円全額返済し、台湾ナンヤ・テクノロジー(NANYA)へ782億円を出資。設備投資(グロス)は524億円で第8・第10世代BiCS FLASH向け装置が中心。現預金は前期末4,707億円から6月末7,910億円へ増え、社債・借入金を上回るネットキャッシュを確立した。

6.  トピックス——株式分割と資本政策

株式分割(1→3株):2026年7月31日の取締役会で、10月1日を効力発生日として普通株1株を3株に分割することを決議。流動性向上が狙い。本記事のEPS等は分割前の数値。

配当:第1四半期末は無配(0円)。2027年3月期の配当予想も現時点で明示されていない。

NANYAへの出資:台湾NANYAへ782億円を出資。メモリ領域での連携・供給網の観点が注目される。

生産拠点:北上工場でBiCS FLASH第10世代の生産を開始。四日市工場は研究開発を兼ねた中核拠点。

7.  中期経営計画——AI需要を見据えた生産基盤の拡充

会社資料によれば、キオクシアはAI時代の需要拡大を見据え製造インフラの拡張を継続する。柱は、(1) AI活用による生産性向上、(2) 投資による世代移行(第8→第10世代BiCS FLASH)、(3) サンディスクとの合弁(JV)、(4) 四日市・北上のマルチサイト生産体制——の四点だ。

一四半期の売上が、前期通期の四分の三に達した。NANDの“大復活”を、生産能力と世代移行でどう受け止めるかが次の焦点だ。
用語=BiCS FLASH: キオクシアの3次元NAND技術。層を高く積むほど大容量・低コスト化が進む。

需要面では、AIによるデータ生成の拡大がフラッシュ記憶への構造的な追い風になるとの見立てを会社は示す。もっとも、供給能力の拡張ペースや世代移行の歩留まりが今後の採算を左右する変数となる。

8.  市場環境——AIがNAND需要を押し上げ、CY27は需要超過の予想

会社資料によれば、NAND市場はAI需要を追い風にデータセンター・エンタープライズがけん引する。とりわけエージェント型AI(agentic AI)向けが主要ドライバーとされ、従来型サーバー需要も押し上げるという。暦年2026のビット伸長率は「10%台後半」を見込み、キオクシアも市場並みのビット成長を計画する。

一方、コンシューマ側はまだら模様だ。スマホは高価格帯堅調・低価格帯減少でNAND需要はCY25比横ばい、PCは部材コスト上昇で出荷減・NAND需要は微減の見通し。会社は暦年2027に「需要が供給を上回る」状況を予想する。市況・需給・為替・通商政策(米中摩擦や関税)の変動はリスク要因で、会社も注意事項として明記している。

9.  今後のチェックポイント

第2四半期の着地:中間期累計4兆1,571億円(逆算で7-9月単独は約2兆3,900億円規模)を達成できるか。

ASP(販売単価)の持続性:前四半期比約70%上昇したNAND価格がどこまで続くか。メモリ市況はサイクル性が強い。

CY27の需給:会社が示す「需要が供給を上回る」見通しが増産計画とどうかみ合うか。

株式分割後の一株指標:10月1日の1→3株分割後、EPS等の表示が変わる点に留意。

投資と還元:設備投資の増加ペースと、無配継続か配当方針の見直しか。

10.  主要データ一覧

決算表の比較表。Non-GAAP指標の前期(1-3月)と本期(4-6月)の数値と前期比を示す表。売上収益・営業利益・EBITDA等を列、項目名を行に配置。
注:上段(会社資料)はNon-GAAP、下段(決算短信)はIFRSベース。Non-GAAP営業利益1兆3,262億円に対しIFRS営業利益は1兆2,700億円(訴訟損失引当金繰入366億円等の控除前)。EPSは株式分割(1→3株、2026年10月1日)反映前。第2四半期以降は会社の将来見通し。

11.  出典・免責

キオクシアHD「2027年3月期 第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)」2026年7月31日(売上・利益・EPS・財政状態・業績予想の一次数値)。

キオクシアHD「2027年3月期 第1四半期 決算説明会(補足資料)」2026年7月31日(QoQ・アプリ別・キャッシュフロー・ASP・市場見通し・生産基盤)。

NAND市場見通し(CY26「10%台後半」、CY27「需要が供給を上回る」)、ASP・ビット成長・生産計画は会社の将来見通しであり確定値ではない。市況・需給・為替・通商環境により実際の結果は異なり得る。

本記事はキオクシアHDの公表資料(IFRS連結)に基づく決算解説であり、投資勧誘または投資助言を目的としたものではない。将来見通しは会社公表資料に基づくもので、実際の業績は変動し得る。Non-GAAP指標は監査対象外の社内指標であり、IFRSを代替するものではない。EPS等は株式分割(1→3株、2026年10月1日予定)反映前。数値は丸め処理により端数が一致しない場合がある。投資判断はご自身の責任で行っていただきたい。
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