過去最高益、粗利率67.7%。TSMC 2Q26が示す“AI製造”の実力売上・利益ともに会社計画を上回る——ただし利益の一部は一過性の株式売却益

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TSMCの2Q26は、売上高NT$1兆2,703.8億(US$40.20B)、粗利率67.7%、営業利益率60.3%、純利益NT$7,065.6億、EPS NT$27.25(US$4.31/ADR)。

売上は前年同期比+36.0%で四半期として過去最高を更新し、粗利率・営業利益率はいずれも会社ガイダンスの上限を上回った。世界のAIチップの大半を製造する企業の数字は、AIハードウェア需要の“最も澄んだ一枚の指標”でもある。もっとも、純利益の前年同期比+77.4%には、保有株式の売却に伴う一過性の利益が含まれる点は見落とせない。

売上高
NT$1.27兆
US$40.20B
YoY +36.0% / QoQ +12.0%
粗利率
67.7%
ガイダンス上限超
前年同期 58.6%
営業利益率
60.3%
ガイダンス上限超
前年同期 49.6%
純利益
NT$7,066億
YoY +77.4%※
EPS NT$27.25 / $4.31
ROE
45.9%
前年同期 34.8%
純利益率 55.6%

1.  結論——「過去最高」を、額面どおり受け取る前に

まず要点を三つ。第一に、2Q26の売上高NT$1兆2,703.8億は前四半期比+12.0%・前年同期比+36.0%で、四半期として過去最高である。第二に、粗利率67.7%・営業利益率60.3%はいずれも会社ガイダンス(粗利率65.5〜67.5%、営業利益率56.5〜58.5%)の上限を超えた。原動力はコスト改善と高い設備稼働率で、海外工場の立ち上げによる利益率希薄化を吸収した——と会社資料は説明する。

第三に、ここが読みどころだ。

純利益はNT$7,065.6億で前年同期比+77.4%だが、この中には保有するVIS(バンガード・インターナショナル・セミコンダクター)株の一部売却・時価評価に伴う一過性の営業外利益 約NT$632億が含まれる。本業の強さ(営業利益+65.4% YoY)とは別の“下駄”がある点は、増益率をそのまま連続成長と読み替えない慎重さを求める。

2.  業績の変遷——売上・利益率の同時上昇

売上高は2Q25のNT$9,337.9億から1Q26のNT$1兆1,341億、2Q26のNT$1兆2,703.8億へと二・四半期連続で最高を更新した。上半期の売上はNT$2兆4,044.8億。会社ガイダンス(US$39.0〜40.2B)の上限US$40.20Bで着地した。

Quarterly sales bar chart: 2Q25 9,338; 1Q26 11,341; 2Q26 12,704 (values shown); YoY +36.6%, QoQ +12.0%.

図1:四半期売上高(NT$億)。青=実績、オレンジ=今回(2Q26)。US$は換算値。

売上の伸びに利益率の上昇が伴う点が重要だ。粗利率は58.6%→67.7%へ+9.1pt、営業利益率は49.6%→60.3%へ+10.7pt改善した。会社資料はこれを「コスト改善と稼働率上昇」によるものとし、海外工場が希薄化要因と付言している。純利益率は55.6%に達した。

Donut chart showing semiconductor node mix with shares: 2nm 3%, 3nm 30%, 5nm 33%, 7nm 11%, other nodes 23%; core share ≤7nm = 77%.

図2:利益率の推移。粗利率・営業利益率・純利益率がそろって上昇(%)。

3.  会社計画と進捗の読み解き

今四半期は売上(ガイダンス上限)・粗利率・営業利益率のすべてで会社計画を上回った。TSMCは市場予想を8四半期連続で上回ってきたとされ、“ガイダンス超え”は同社の平時のパターンでもある。

テーブル形式の業績指標一覧。列は指標(2Q26)、会社ガイダンス(計画)、実績、評価。行は売上高、粗利率、営業利益率の数値と評価。

会社の従来見通し(1Q26説明時点)では、2026年通期のドル建て売上は前年比+30%超、設備投資は年間US$52〜56Bとされてきた。会社資料によれば、N2立ち上げと海外工場は通期粗利率を2〜3pt希薄化させ得る。通期見通しや設備投資枠の更新は決算説明会でのコメントを要確認。

4.  KPI・先行指標——「先端」と「HPC」への一段の集中

ウエハ売上に占める先端プロセス(7nm以下)は77%。うち2nm(N2)が初めて3%を計上し、3nm 30%、5nm 33%、7nm 11%と続く。最先端の量産が採算の中心に移りつつある。

Donut chart titled ウエハ売上構成 (技術ノード別 - 2Q26) showing node shares: 2nm 3%, 3nm 30%, 5nm 33%, 7nm 11%, other nodes 23%, with core 先端≤7nm at 77%.

図3:2Q26ウエハ売上構成(技術ノード別)。先端(7nm以下)が77%。N2が初計上。

プラットフォーム別ではHPCが66%(前四半期61%)で+20%と伸長。スマホは22%(−4%)。地域別は北米78%で、AI・データセンター投資と米国顧客への集中が表れる。ウエハ出荷は4,336千枚(12インチ換算、YoY+16.6%)。在庫日数は87日と7日増だが、会社資料は主にN2立ち上げによるものと説明する。

プラットフォーム別売上構成比と QoQ の推移(2Q26)。HPC 66%・+20%、スマートフォン 22%・−4%、IoT/車載/その他 5%/4%/1%/2%・+4〜15%

5.  財政状態とキャッシュフロー

総資産はNT$9兆3,756.6億(US$293.74B)、株主資本NT$6兆4,744.7億。現金・市場性証券NT$3兆5,180.1億、ネット現金NT$2兆4,863.3億(前四半期比 約+1,600億)。流動比率2.5倍、受取債権日数29日と健全だ。

一方、投資は加速。当四半期の設備投資はNT$4,960億(US$15.70B、上半期累計US$26.80B)。営業CF NT$7,833.6億に対し、フリーCF(営業CF−設備投資)はNT$2,873.6億へ前四半期から約610億減少した。会社資料は設備投資の増加が営業CFの増加を上回ったためと説明する。AIインフラの供給制約を解く“先行投資”局面だ。

Bar chart of cash flow (NT$ billions) by quarter: 2Q25, 1Q26, 2Q26. Blue: Operating CF (4,971; 6,990; 7,834). Navy: Capex (2,972; 3,508; 4,960). Green: Free CF (1,998; 3,482; 2,874).

図4:四半期キャッシュフロー(NT$億)。設備投資増でフリーCFは縮小。用語=フリーCF: 営業CFから設備投資を引いた手元資金。

6.  トピックス——関連開示(本編組み込み)

VIS株の一部売却(2026/05/15):VIS株の8.1%を売却。売却・時価評価益 約NT$632億が当四半期の営業外利益(計NT$958.3億)を押し上げ、純利益の高い伸びの一因となった。

配当(2026/05/12):取締役会が1Q26に対する1株当たりNT$7.00の現金配当を承認。権利落ち9/16、基準日9/22、支払日10/8。

ソニーとの提携(2026/05/08):ソニーセミコンダクタソリューションズと、次世代イメージセンサーの戦略的パートナーシップで予備的合意。

A13技術を公開(2026/04/23):北米技術シンポジウムで次世代プロセス「A13」を披露。

7.  中期の技術ロードマップ

会社資料および直近の会社説明によれば、N2(2nm)は2025年第4四半期に量産開始、2拠点で立ち上げ中で、当四半期に初めてウエハ売上の3%を占めた。最先端は最も高い価格と採算を見込める領域で、N2採算が全社粗利率に及ぼす影響が焦点。さらに先の「A13」も公開済みだ。

もっとも先端化と海外展開はコストも伴う。会社資料はN2立ち上げと海外工場(米アリゾナ等)が通期粗利率を2〜3pt希薄化させ得るとしてきた。「稼ぐ力の拡大」と「先行コスト」の綱引きが中期の利益率を左右する。

8.  市場環境——AI需要とCoWoSのボトルネック

需要側の追い風は強い。会社はAI関連需要を「極めて旺盛」と表現してきた(C.C. ウェイ会長兼CEO、1Q説明)。生成AIから“エージェント型AI”への移行が計算量を押し上げ、先端ロジック需要を厚くしている。

AIアクセラレータが通らねばならない“関所”は、いまや微細加工そのものより先端パッケージング(CoWoS)にある。

 用語=CoWoS: プロセッサと広帯域メモリ(HBM)を1つのパッケージに統合する先端実装技術。AIチップの必須工程。

各種報道・調査会社によれば、CoWoSは2026年分がほぼ完売で、リードタイムは2027年に及ぶ。TSMCはアリゾナと台湾で実装能力を増強しているとされる。これら能力・受注はTSMCが正式開示した数値ではなく報道・推計である点に留意。地域別で北米78%という構造は、米ハイパースケーラーの投資動向への感応度の高さも意味する。

9.  今後のチェックポイント

利益の“質”:純利益+77.4%にはVIS株の一過性益(約NT$632億)が含まれる。継続的な本業の利益成長(営業利益+65.4% YoY)と切り分けて評価する。

粗利率の持続性:N2立ち上げと海外工場の希薄化(会社は通期2〜3ptの影響を示唆)を吸収し、60%台後半を保てるか。

通期見通しと設備投資:会社の従来目標(ドル建て売上+30%超、設備投資US$52〜56B)が説明会で更新されるか。

CoWoS/N2の供給:先端パッケージング能力の増強とN2採算の改善ペース。

フリーCFの推移:設備投資の加速でフリーCFは縮小傾向。投資と還元のバランス。

10.  主要データ一覧

Informational table of quarterly financial metrics (2Q25, 1Q26, 2Q26) with YoY and QoQ changes in NT$ and US$; rows include sales, gross profit margin, operating margin, net income, and EPS in multiple currencies.
注:粗利率・営業利益率は会社ガイダンス(65.5〜67.5%/56.5〜58.5%)を上回って着地。2Q25フリーCFは営業CF−設備投資により算出。

11.  出典・免責

TSMC「2026年 第2四半期 財務諸表(Unaudited)」2026年7月16日。

TSMC「2026年 第2四半期 業績分析(Quarterly Management Report)」2026年7月16日。

TSMC「2026年 第2四半期 決算説明会資料」2026年7月16日。

CoWoS能力・受注、AI需要の定性評価、通期見通し・設備投資枠の位置づけ、株価は各種報道・調査会社資料に基づく推計であり、TSMCが正式開示した確定値ではない。

本記事はTSMCの公表資料(TIFRS連結・NT$建て)に基づく決算解説であり、投資勧誘または投資助言を目的としたものではない。将来見通しは会社公表資料に基づくもので、実際の業績は変動し得る。US$は換算値。数値は丸め処理により端数が一致しない場合がある。投資判断はご自身の責任で行っていただきたい。
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