インド半導体革命の夜明け!タタが初の12インチ半導体ファブ建設へ

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2024年、インドのグジャラート州ドレラで、インドの大手半導体製造企業Tata Electronics(タタ・エレクトロニクス)と台湾のPSMC(力晶積成電子製造)が、共同でインド初の12インチ半導体ファブの建設を開始した。このプロジェクトは、インドの半導体産業における重要なマイルストーンであり、世界的なサプライチェーンの多様化と強化を目指す動きの一環である。本稿では、このプロジェクトによる両企業の戦略やインドの半導体産業に与える影響を考察する。

タタとPSMCの戦略的提携とは

まずは、このプロジェクトの概要を紹介する。

・所在地:インド、グジャラート州ドレラ

・投資額:約9,100億ルピー(約110億ドル)

・生産能力:月産5万枚の12インチウエハ

・完成予定:2026年

・雇用創出:直接・間接的に2万人以上の雇用を創出予定

このファブでは、自動車、AI、データストレージ、ワイヤレス通信などの分野に向けて、電源管理IC、ディスプレイドライバ、MCU、高性能コンピューティングロジックなどのチップを製造する。

1.PSMCの役割:成熟プロセス技術をタタに提供

PSMCは、成熟したプロセス技術(28nm、40nm、55nm、90nm、110nm)をタタ・エレクトロニクスに提供し、設計支援、建設支援、エンジニアのトレーニングを行う。これにより、インド国内での先進的な半導体製造技術の確立が期待されている。

2.インド政府の支援とインフラ整備

インド政府は、インドの製造業振興のスローガンである「Make in India」を通じて、製造業全体の底上げを図っている。このような中、半導体産業を最重要分野と位置づけている。その象徴とも言えるのが、グジャラート州ドレラにおける「特別投資地域(Special Investment Region, SIR)」指定である。このSIRスキームは、製造業誘致を目的とした国家戦略の一部であり、工業インフラを包括的に整備することで、外国・国内企業の大規模投資を呼び込む制度なのだ。

3.ドレラSIRの特徴

・用地の即時供給:ドレラSIRでは、約920km2の開発用地が段階的に整備されており、工業団地・都市インフラ・交通網が統合的にデザインされている。

・電力・水インフラの優遇:半導体製造に不可欠な安定電力と純水供給に関しては、州政府が直接運営する電力・水道公社が長期供給契約を用意。これにより操業リスクの軽減が図られる。

・物流アクセスの向上:ドレラは、インド西部の主要港カンドラ港およびムンドラ港に近接しており、空港と高速鉄道(Dholera International Airport、Delhi–Mumbai Industrial Corridor)とも接続予定。製造後の物流効率も重視されている。

・税制優遇措置:法人税の軽減、設備投資に対するキャッシュインセンティブ(最大50%補助)、関税免除などが整備されており、台湾や韓国に匹敵するインセンティブパッケージを形成している。

中央政府の半導体インセンティブ政策との連携

このプロジェクトは、中央政府の「India Semiconductor Mission(ISM)」とも連動しており、総額76億米ドル規模の補助金パッケージが活用される予定。ISMは、製造ファブの設立だけでなく、設計・研究開発・人材育成・先端パッケージング施設の整備にも資金を投じる包括的な国家プログラムである。

このように、ドレラSIRでの半導体ファブ建設は、単なる企業主導のインフラ整備にとどまらず、国家戦略と直結したプロジェクトとして、財政・法制度・インフラの三位一体で推進されている。

インドの半導体産業の未来

タタとPSMCの提携は、インドが世界の半導体製造拠点として台頭するための重要なステップと言える。このプロジェクトは、インド国内の半導体エコシステムの構築を加速し、世界的なサプライチェーンの多様化に寄与することが期待されている。

今後、インドがどのようにして半導体産業の中心地として成長していくのか、引き続きその動向に注目する必要がある。

                この記事は SEMICON.TODAY 編集部の坂土直隆が構成を担当しました。

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