半導体工場の競争力を語る際、その中心は露光や成膜などの装置に置かれがちである。しかし2025年後半から2026年初にかけての企業動向を追うと、存在感を高めているのは装置本体ではなく、「装置の外側」で量産を支える部材群であることが見えてくる。
2025年11月に日本ガイシがチップレット向け支持材の増産を公表し、2025年12月には京セラが高放熱ソリューションを前面に出し、2026年2月には半導体製造装置向けの真空シールで世界シェア約7割を誇るフェローテックが北京で新工場投資を打ち出した。
ここでいう「継続需要型」とは、サブスクリプションのような契約形態を指すものではない。量産ラインが稼働し続ける限り、支持材、放熱部材、部品洗浄といった領域では、交換、補修、再生、工程安定化、熱対策といった需要が繰り返し発生する構造を意味する。
本稿ではこの構造を「交換部材経済」と捉え、3社の動きを通じて、収益の重心が装置投資から継続需要型の部材へ広がっている実態を考察する。
日本ガイシ:支持材は脇役から重要な基盤部材へ

日本ガイシは2025年11月14日、チップレット集積に対応する「ハイセラムキャリア」の生産能力を2027年度までに現在の約3倍へ増強すると公表した。ハイセラムキャリアは半導体チップを一時的に固定するサポートウエハである。
透光性セラミックス「ハイセラム」の採用により、高い剛性と耐久性を確保し、従来のガラス製支持材で課題となっていた反りや破損を大幅に低減できるとされる。
ここで重要なのは、この製品が単なる材料ではなく、工程安定化の機能と一体で価値を持っている点である。反りや破損の低減は、そのまま製造工程の安定性向上や製品ロス削減につながる。
つまり顧客が購入しているのは支持材そのものではなく、歩留まり改善と品質安定化である。チップレット技術が拡大するほど、支持材は補助的な部材ではなく、工程成立を支える基盤へと位置付けが変わっていく。
京セラ:熱対策部材はAI時代の常設テーマに

京セラは2025年12月16日、「nano tech 2026」において高放熱ソリューション製品を出展すると発表した。セラミックパッケージに加え、熱伝導率1,700W/m・Kのグラファイト材料などを組み合わせた提案を行っている。
注目すべきは、単一部材の性能ではなく「熱課題の解決」という形で価値を提示している点である。高性能半導体では、演算密度の上昇がそのまま発熱増加につながるため、放熱は補助ではなく性能維持の前提条件になる。
その結果、放熱部材は新設設備だけでなく、既存ラインの改善や設計見直しでも需要が生まれる。これは装置投資とは異なる時間軸で市場が継続することを意味する。
京セラの動きは、部材が単品販売ではなく、システム全体の課題解決ソリューションとして再定義されていることを示している。
フェローテック:洗浄・金属加工・セラミックスを一体で増強

フェローテックは2026年2月12日、中国北京市に約5億4,000万元を投じて新工場を建設し、部品洗浄、金属受託加工、セラミックスの3分野を強化すると発表した。
特に注目されるのは、投資の中で最も大きな比重が部品洗浄に割かれている点である。これは新設ファブ向けの単発需要ではなく、既存ラインの高稼働に連動した継続需要が大きいことを示している。
実際に同社の決算では、半導体装置関連事業において、真空部品、金属加工、セラミックスに加え、部品洗浄サービスの売上が伸長していることが示された。
洗浄は装置更新とは無関係に発生する需要であり、ラインが稼働する限り繰り返し発生する。この構造こそが「交換部材経済」の典型例である。
「交換部材経済」が変える半導体部材市場の見方

3社の事例を並べると、製品は異なりながらも共通点が見えてくる。それは、いずれも量産現場のKPIに直結する領域を担っている点である。
支持材は工程安定化、放熱部材は性能維持、洗浄は稼働維持に関わる。顧客が購入しているのは単なる部品ではなく、歩留まり、品質、稼働率といった成果である。
この構造では、価格競争だけでなく、反り低減、熱伝導率、洗浄精度、耐久性といった性能差がそのまま付加価値になる。
結果として、半導体サプライチェーンの評価軸も変化する。重要なのは装置販売額ではなく、どれだけ既設ラインに入り込み、継続的な需要を確保できるかである。
今後の注目点は、どこまで継続需要の源泉として存在感を強めるか

半導体部材市場の成長軸は、「新規装置の納入」から「稼働ラインへの深い関与」へと広がっている。支持材、放熱、洗浄はいずれも装置の外側にありながら、量産の安定性に直結する領域である。
これらは定額契約ではなくとも、交換、補修、再生、改善といった形で繰り返し需要が発生する。そのため、半導体産業の収益構造を考える上で無視できない存在となっている。
今後の焦点は、装置投資の規模だけでなく、工場を止めず、品質を維持し続けるための部材が、どこまで継続需要の源泉として存在感を強めるかにある。
*この記事は以下のサイトを参考に執筆しました。
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