レゾナック主導の共創型評価プラットフォーム「JOINT3」始動!--半導体パッケージに新風を巻き起こすか

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2025年9月3日、レゾナックは、材料・装置・設計(EDA/IP)などの27社と共同で、次世代半導体パッケージ向けの共創型評価プラットフォーム「JOINT3(ジョイントスリー)」を設立した。拠点は茨城県結城市のレゾナック下館事業所内に新設される、先端パネルレベル・インターポーザーセンター(APLIC)。ここに、515×510㎜のパネルレベル有機インターポーザの試作ラインを構築し、2026年の稼働開始を予定する。

目的は、複数のDRAMチップを垂直に積み重ね、シリコン貫通電極(TSV)で接続する次世代の3D積層構造を持つ高速メモリ規格である「HBM(High Bandwidth Memory)」時代に顕在化した「大面積・高密度・短納期・低コスト」という課題に対し、円形ウエハではなく角パネルでパッケージを作る方式であるPLP(Panel Level Packaging)技術と、有機材料の組み合わせという選択肢を検証することにある。

従来主流のシリコン・インターポーザ技術は性能面で優位な一方、大面積化に伴う取り数・スループット・コストの課題があった。これに対し「JOINT3」は、PLP技術と、材料・装置・設計ツールを同一ラインで検証できる体制により、量産に近い条件でデータを蓄積することを目指す。

本稿では、始動した「JOINT3」の今後の展開と、半導体への影響を考察する。

HBM時代の主要課題への対応

AIアクセラレータの普及で、HBMとロジックを1パッケージに統合する2.5D実装が広がっている。ダイの並列配置や高密度再配線(RDL)の活用により、インターポーザの大面積化が進む。円形ウエハから矩形のデバイスを切り出す方式では取り数が減り、スループットも低下しやすい。しかし、PLPに切り替えると、同じ装置占有面積で取り数を改善できる余地ができる。

有機材料は、シリコンと比べて材料・加工コストの最適化余地があり、大型化にも対応しやすい。ただし、有機化には次のような課題がある。寸法安定性(熱膨張差による反りや位置ずれ)、サブミクロン級のRDL形成、実装信頼性(熱サイクル・機械強度)などである。

これらに対処するには、材料組成、露光・成膜・めっき・CMPなどの工程、設計ルールを同時に最適化する必要がある。JOINT3は、この同時最適化を実機ラインで反復できる場として設計されている。

同一ラインで進める「設計–製造–評価」の検証

JOINT3では、共通パネル規格(515×510㎜)を前提に、材料・装置・検査・EDA/IPの各社が同一ラインで検証を行う。検証対象は以下のとおり。

• 材料:レジスト、絶縁材、RDL用銅・めっき、キャリア/ガラスなどの物性と工程適合を評価

• 装置:露光・現像、成膜、ラミネーション、ドライ/ウエットプロセス、CMP、アライメント・検査のスループットと安定性を確認

• EDA/IP:設計ルール(DRC)、電気・熱・機械の協調解析、DFM(Design for Manufacturability)のフィードバックを、ライン実測と同期して更新

同じパネル規格の下で「設計–製造–評価」を進めることで、個別最適に偏りにくく、量産時に有効な品質安定のための許容範囲と設計自由度を整理しやすい。特に、アライメント精度、RDLの細線・狭ピッチ化、多層化に伴う反りの抑制、キャリア材の選択など、パネルスケールでの誤差要因を早い段階で把握できる点がメリットである。

515×510㎜規格が示す意味

規格サイズは生産性に直結する。515×510㎜は、露光・計測の視野設計(スキャン領域やオーバーラップ)、スピンやラミネーションの膜厚均一性、ステージ・チャック・搬送の機構設計、電気検査やプロービングのレイアウトに配慮した寸法である。

規格が固定されると、装置側はステージ、チャック、搬送系の仕様や露光・計測の視野設計を判断しやすくなる。

材料側は、シートやフィルム、キャリアの寸法と物性を合わせ込みやすく、熱履歴に対する寸法変化も見積もりやすい。

検査側は、パネル内の素子の分割やプローブ計画を標準化しやすくなる。結果として、層数、線幅、実装許容差などの設計自由度を数値で示しやすくなり、HBM×ロジックのフットプリントや配線長を現実の工程条件に沿って検討できるようになる。

試作から準量産まで橋渡しできる拠点が国内にあることの意義

JOINT3には、材料・装置・EDAの国内外の企業が参画している。そのため、特定企業の専用仕様ではなく、複数社が参照できる共通プロセスやルールを国内で整備できる点に意義があると言える。これにより、調達、治具、検査、ハンドリングの共通化が進み、立ち上げの再現性を高めやすくなるからだ。

先端パッケージは、キャパシティの制約が目立つ。試作から準量産までを橋渡しできる常設拠点が国内にあることで、装置・材料ベンダの投資判断や、EDA/IPの設計ルールの更新速度を上げやすくなる。AIチップの世代交代が速い現状では、設計・製造・評価の同期を初期段階から進められることが、結果的に競争力の確保につながる。

2026年以降の評価指標とは

JOINT3は、515×510㎜パネルと有機インターポーザを軸に、材料・装置・設計を同一の時間軸で検証する取り組みである。APLIC(茨城県結城市)を拠点に、2026年の稼働を予定する。

2026年以降に重視すべき指標は、次の3点に整理できる。①取り数とスループット、②微細RDLの歩留まり、③実装信頼性(熱・機械)。これらの数値と再現性をどの程度の頻度と粒度で示せるかが、取り組みの有効性を判断する材料になる。

先端パッケージは個別技術だけでなく、ライン再現性、部材の入手性、設計と量産の整合が成果を左右する。JOINT3が量産に近いデータを対外的に示せるかどうかが、パネル×有機という選択肢の実用性を評価するうえで重要になる。

*この記事は以下のサイトを参考に執筆しました。
参考リンク

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