「水がある」だけでは足りない!──半導体拠点が進める水マネジメント

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半導体や電子部品の製造で水が重視されるのは、冷却のためだけではない。微粒子やイオン汚染が歩留まりに直結する前工程(ウエハ工程)では、洗浄・すすぎに使う水の純度が品質そのものになる。加えて、超純水(UPW:Ultra Pure Water)の製造、排水処理、回収・再利用は、操業継続(止めない製造)を支えるインフラでもある。

国内で主要拠点が一定地域に集まって見える背景には、水源の有無に加え、超純水と排水処理を連続運転できる設備設計と、24時間の監視・再処理を前提とした運用、地域・行政との合意形成が揃うかどうかがある。

本稿では、このような半導体に欠かせない「水」について業界がどうマネジメントしているかを考察する。

工程は「洗う」「流す」「冷やす」でできている

半導体の前工程では、成膜・露光・エッチングなどの合間に洗浄工程が繰り返し挟まる。表面の残渣や汚染を除去し、次の工程に影響を残さないためで、水は「消耗品」ではなくプロセスの一部として扱われる。

後工程(組立・検査)や電子部品の製造でも、めっき・表面処理、切削後の洗浄など水の用途は広い。結果として工場側の課題は「大量の水を確保する」ことにとどまらず、「規格どおりの水を安定供給し、排水を適切に処理して放流する」ことへと広がる。

求められるのは超純水と排水処理の両輪

工場が求めるのは、①原水の連続確保、②超純水の安定製造、③回収・再利用(循環)、④排水の監視と再処理(逸脱防止)を一体で進められる能力である。

この「水マネジメント一式」は設備投資だけで完結しない。24時間監視、性状別の分別、工程変動に合わせた流量・水質の制御、基準逸脱時の自動遮断と再処理など、運用設計が操業安定に直結する。以下では、国内主要拠点で公表されている取り組みを、地点別に整理する。

拠点別に見る「水の取り組み」

1.熊本:JASMが示した「再利用率・分別処理・涵養」の同時運用

熊本県菊陽町のJASM(Japan Advanced Semiconductor Manufacturing、TSMC子会社)第1工場では、2025年12月6日付の報道で、水処理施設の運用が紹介された。工場では1日当たり最大3万トンの水を使用しつつ、平均約75%の水リサイクル率を掲げ、外部から新たにくみ上げる地下水は1日当たり最大7,500トンとして取水量の抑制に取り組むとされた。くみ上げた地下水を平均4回利用する運用も説明されている。

排水については性状を36種類に分類して管理し、放流基準を超える水が流入した場合は自動弁で遮断し、処理の前段に戻して再処理する仕組みが示された。地下水涵養についても、田んぼを使った涵養などに取り組み、2024年の実績として取水量の100%超に相当する涵養を行ったとしている。

ここで注目されるのは、単一の節水策ではなく、(再利用・循環)×(排水の逸脱防止と再処理)×(地域側の水収支への配慮)を、運用として同時に成立させようとしている点にある。

2.四日市:キオクシアが進める「分別集水」「24時間監視」「超純水の再循環」

キオクシアホールディングスは、水資源を重要課題に位置づけ、法規制に加えて自主的な管理を行う方針を示している。国内の製造事業場では、排水を性状別に分別して集水し、化学的酸素要求量(COD)、浮遊物質(SS)、フッ素、水素イオン濃度(pH)などについて、24時間連続の自動監視を実施しているとしている。構内の分析センターで年間約47,800件の水関連分析を行うという説明もある。

また、超純水について未使用分を回収して再循環させる施策や、工程変動に合わせた流量調整で水質と適正水量を維持する運用も示されている。分別、連続監視、再循環を組み合わせ、排水リスクと取水量の双方を管理する設計が前提になっている。

3.広島:マイクロンが示す「地域の水質改善」と「全社目標のローカル実装」

Micron Technology(マイクロンテクノロジー)は、日本における取り組みとして、広島県東広島市の三津湾の水質改善を目的とした「泥干潟改善プロジェクト」への寄付を紹介している。牡蠣殻を干潟の砂質土壌に混入し、水質改善を目指す複数年計画と位置づけている。

あわせて同社の環境目標資料では、水について「再利用・リサイクル・水資源回復(restoration)による水保全」を指標化し、2030年までに75%を目標とし、FY2024の実績を66%として整理している。工場内の水循環(オペレーション)と、地域側の水環境(外部の取り組み)を、同じ「水マネジメント」の枠で扱う考え方が読み取れる。

4.北海道・千歳:「ラピダスよる水利用の先回り」

新設拠点では、設備が動く前から水利用の枠組みを固め、操業開始後に取水・排水が不確実性として残らないようにする必要がある。Rapidus(ラピダス)は2025年2月4日付で、北海道と水利用に関する協定を締結したと公表している(協定締結日は2025年1月30日)。量産前の段階から協定を公表することで、操業の前提条件としての水利用の位置づけを明確にする狙いがうかがえる。

水の取り組みは「設備」ではなく「運用」と「合意」で差が付く

地点別の取り組みを並べると、共通項は「水を多く持つ土地か」ではなく、次の3点に収束される。

・回収・再利用で取水依存を下げる(循環を前提にする)

・排水を分別し、連続監視と再処理で逸脱を防ぐ(操業の前提条件を崩さない)

・地域・行政との協定や枠組みづくりを前倒しする(外部条件を不確実性にしない)

工場立地の議論は「名水かどうか」から、水のガバナンス(設計・監視・合意形成)をどこまで実装できるかへ重心が移りつつある。水量・水質の条件が良好でも、超純水と排水処理を連続運転で回す運用体制や合意形成が不足すれば、操業リスクが残りやすい。一方で、これらを前提として組み上げられる地域では、水は制約ではなく競争力の一部として扱われやすい。

*この記事は以下のサイトを参考に執筆しました。

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