徹底したユーザーニーズ対応で再評価獲得へ!x86とIntelの未来とは?

競合他社の動向
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半導体関連メディア The Circuit の Ben Beharon 氏が、Intel の製品部門最高経営責任者 Michelle Johnston 氏に Intel の未来を聞く

米国の半導体関連ビジネスのポッドキャストサービスを展開する The Circuit の Ben Beharon 氏が YouTube 上で、Intel の製品部門最高経営責任者である Michelle Johnston 氏に、Intel の CPU「x86 シリーズ」の今後の展開や同社の今後の戦略について聞いたインタビューを行った。Michelle Johnston 氏は CRN(IT チャネルビジネスにフォーカスする米国コンサルティング会社)誌の「チャネル部門のトップ 100 女性」に 3 度選出されている人物。ここではこのインタビューの一部をお伝えする。

「顧客からのフィードバックは最高の贈り物」

Ben Beharon:
私は、Michelle Johnston さんのはじめての業績発表会見を拝見したのですが、そこでのあなたのリーダーシップスタイルに感銘を受けました。過去の Intel の課題をきちんと認め、顧客志向を重視し、厳しいフィードバックを真摯に受け止める姿勢は素晴らしいと思いました。あなたの考え方、リーダーシップスタイル、そして Intel の次なる成長についての一手をどう考えているのか、お聞かせ願えますか。

Michelle Johnston:
ありがとうございます。私は長年この業界にいますが、多くの弊社の製品部門のリーダーを見てきました。その経験から判断すると、これまではユーザー側が Intel が一方的に製品の方向性を決めていることに不満を感じているとわかったのです。しかし、今は変わったように感じます。
これまでのリーダーと比較すると、私は少し異質なタイプかもしれません。それには私が営業出身であることが影響しているのでしょう。私はその時代にユーザーが本当に望んでいるものを徹底的に考え、それに弊社は本当に応えられているのか自問自答を繰り返していました。
そこで はっきりしたのが「もっと耳を傾けよう。顧客からのフィードバックは贈り物」ということ、つまりユーザー側の要望にもっと耳を傾けるべきだということでした。そして、重要なのは、そのフィードバックをどう活かすかです。真摯に受け止め、方向転換し、市場のニーズに合わせて柔軟に動く必要があります。顧客の声に耳を傾け、変化し続ける必要があると考えています。

ユーザーが再評価する x86 という「王冠の宝石」

Ben Beharon:
では、Intel の主力製品である「x86 シリーズ」の今後についてお聞きしたいのですが、私は x86 シリーズについては、今こそこれまで以上に製品の優れた点や特徴をアピールし、再活性化することが必要なように感じます。かつて「IA‑32」「IA‑64」という言葉で御社のアーキテクチャが他より優れていることをアピールしていました。今こそ、再びこのアーキテクチャの差別化を明確にすべき時ではないでしょうか。x86 の再活性化と、新時代における Intel アーキテクチャの再定義について、考えをお聞かせください。

Michelle Johnston:
私が Pat Gelsinger の代行を務めていた際、普段は接点のないユーザーと話す機会が増えました。そのとき興味深かったのは、みんながカスタム ARM チップの開発を進めている一方で、x86 アーキテクチャとエコシステムには依然として価値を感じてくれているということでした。だから、ユーザーが不満に感じていたのは x86 アーキテクチャそのものではなく、弊社が彼らの差別化ニーズに応える製品を提供できていなかったことだとわかったのです。
そこで x86 コンソーシアムを立ち上げたところ、ユーザーの反応は一変しました。彼らはチップレット、たとえば I/O や特殊機能と組み合わせたカスタムチップを開発できるなら話は別だと、私たちを見直してくれました。
私たちは x86 について、特にハイパフォーマンスコンピューティングの分野においては力を発揮すると自信を持っています。この特徴にユーザーからのフィードバックを取り入れ、x86 をさらに進化させることができれば、さらに成長できる大きな可能性を秘めていると思います。
ユーザーは x86 を見捨てたわけではありません。Intel がニーズに応えられなかっただけなのです。ユーザーは x86 エコシステム、特にソフトウェアエコシステムの強力さを理解しています。それに対し、私たちは x86 という「王冠の宝石」をまだ十分に活用できていないのかもしれませんね。

ユーザー要望に最適化したファウンドリ戦略

Ben Beharon:
次に、ファウンドリ戦略についても詳しく教えてください。業績説明会でも言及されていましたが、あなたは製品に最適なファウンドリを自由に選択できることが重要だと考えていますね。具体的にどのように意思決定プロセスを進めているのですか?

Michelle Johnston:
最終的にはユーザーに最高の製品 SKU (在庫管理の最小単位)を提供することが目的です。製品 SKU を歩留まりと性能カーブが最適なノードに最適化したいと考えています。例えば短期間で大量に製品を供給する必要がある場合は TSMC など外部を選択する、○○ 製品は弊社のファウンドリで製造するといった具合です。

AI 分野にも 2026 年・2027 年・2028 年に新製品を投入

Ben Beharon:
近年は AI の存在が大きくなり、半導体でもこの分野を絶対に外せない状態になっています。この分野で Intel が再び存在感を示すためには、何が必要と考えていますか。

Michelle Johnston:
Intel は AI PC 分野ではすでに一定の存在感を示していますが、ここではアクセラレーターに焦点を当てます。弊社の AI アクセラレーター「Gaudi」は興味深い製品であり、IBM と協業もしています。しかしもちろん課題もあります。ユーザーからは「製品化は 2 年後になる。しかし AI の世界では 2 年は非常に長い時間」という残念なフィードバックも受けています。
Intel が AI 分野でリーダーシップを確立するためには、ユーザーと話し合うテーブルに着き、反復を続け、製品を開発し続ける必要があります。たとえ完璧でなくても、まずは製品を投入し、そこから学ぶことが重要と考えています。ユーザーと対話を続けることで初めてニーズに合致した製品を開発できるのです。この方針に則り 2026 年、2027 年、2028 年と新しい製品を投入していく計画です。

Michelle Johnston 氏は、とにかくユーザーニーズへの最適化にこだわっている。この戦略が今後の Intel をどう導くのか、そして AI 分野でリーダーシップを確立できるのか、注目したい。

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