JSファンダリ破産から半年──稼働停止した新潟工場と国内パワー半導体供給網の現在地

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2025年7月14日、東京都港区に本社を置く半導体受託製造会社JSファンダリが、東京地方裁判所から破産手続開始決定を受けた。負債総額は約161億円。新潟県小千谷市にあった同社工場では、約500人超の従業員が即時解雇され、地方拠点型ファウンドリの破綻として大きく報じられた。

それからほぼ半年が経過した現在、当時注目を集めた「なぜ倒産したのか」という論点は一段落しつつある。一方で、工場資産や人材、周辺企業への影響といった“その後”の動きは、断片的にしか伝えられていない。

本稿では、JSファンダリ破産後の現状を整理し、日本のパワー半導体供給網に生じている変化を考察する。

新潟工場の現状──稼働停止したままの製造拠点

JSファンダリの事業の中核だったのは、新潟県小千谷市にある半導体製造工場である。同工場は旧三洋電機、のちに米ON Semiconductor(オン・セミコンダクター)が使用していた設備を引き継いだもので、主に6インチ(150mm)から一部8インチ(200mm)対応のラインを備えていた。

破産手続開始後、この工場は破産管財人の管理下に置かれ、生産活動は停止した状態が続いている。再稼働や第三者への事業譲渡について、公式に確定した発表は出ていない。現時点では、設備・建屋ともに“利用可能な産業資産”として温存されている段階にある。

半導体工場の新設には多額の設備投資と時間を要することから、既存クリーンルームをどう扱うかは、地域産業政策や企業の設備戦略にとって無視できない論点となっている。

周辺企業の動き──新潟拠点を巡る「再配置」の現実

JSファンダリの新潟工場は、同社だけの“単独工場”ではなかった。工場建屋やクリーンルームの一部を借りて操業する企業が敷地内に存在しており、破産の影響は同社の生産停止だけでは測れない。

半導体工場は装置だけでなく、電力・空調・純水・薬液・排水といった共通インフラ、さらには保全・安全・品質の運用が一体となって初めて成立する。主要な運営主体が崩れると、設備が残っていても「同じ条件で動かせる」とは限らない。

1.サンケン電気:敷地内“同居”が示す、分散した供給の形

パワー半導体メーカーのサンケン電気は、JSファンダリ新潟工場の建屋の一部を賃借する形で、地域内に生産機能を置いていた。

同じ敷地内でも、ユーティリティや保全、クリーン運用がどこまで独立しているかで、操業継続の難易度は変わる。倒産によって、地域の製造リソースが一気に消えるのではなく、切り出せる部分だけが“個別に残る”——それが今回の再配置の現実である。

2.JVCケンウッド:半導体“以外”の精密デバイスも巻き込む

新潟工場は、パワー半導体に限らず、精密デバイスの製造にも活用されていた。クリーンルームという資産は、用途を少し変えるだけで多様な製造に転用できる可能性がある一方、運用主体が失われた瞬間に、稼働の前提(品質体制、設備保全、安定供給)が揺らぐ。

この意味でJSファンダリ破産は、半導体サプライチェーンの問題にとどまらず、「クリーン環境を必要とする製造」全体に波及し得る出来事だった。

JSファンダリ破産は、単一企業の失敗というよりも、新潟という地域に分散して存在していた製造機能を、各社が“個別最適”で引き取る局面を生んだとも言える。大規模な再建劇ではなく、静かな再配置——その形こそが、倒産後の供給網の実像である。

雇用と地域経済への影響

JSファンダリ破産時、約500人を超える従業員が一斉に職を失った。新潟県や小千谷市、地元ハローワークなどは、破産直後から再就職支援や相談窓口を設置し、雇用対策を進めてきた。

報道によれば、地域内外の製造業や関連企業が一定数の受け入れを表明し、短期的には一部人材の再配置が進んだとされる。ただし、半導体製造に特化した技能をそのまま生かせる職場は限られており、技術の継承や産業集積の維持という点では課題が残る。

工場が再稼働しない限り、雇用面での回復は難しい状況が続いている。

工場資産は再利用されるか

JSファンダリの新潟工場は、パワー半導体やアナログ、特殊デバイスといった分野では、一定の用途適合性を持つ。

半導体業界では、設備投資の大型化と調達リードタイムの長期化が続いている。その中で、既存工場を取得・転用する動きは国内外で散発的に見られる。JSファンダリの工場も、用途を限定すれば再利用の余地がある資産といえる。

ただし、設備更新や運転再開には追加投資が不可欠であり、単純な「引き継ぎ」で成立する案件ではない。今後、事業譲渡や部分的な設備売却といった形で、段階的な再編が進む可能性がある。

供給網の再配置や地域産業の在り方を左右する静かに示す事例に

JSファンダリの破産は、日本における独立系ファウンドリ事業の難しさを示す象徴的な出来事だった。一方で、半年を経た現在、焦点は「失敗の検証」から「残された資産と影響をどう扱うか」へと移りつつある。

新潟工場という物理的資産、半導体製造に携わってきた人材、周辺企業との関係性──それらは消滅したわけではない。稼働停止したままの工場は、国内半導体産業の空白を映す存在でもある。

JSファンダリ破産後の動きは、華々しい再建劇は期待できないだろう。だが、供給網の再配置や地域産業の在り方を左右する静かに示す事例として、今後も注視されることになる。

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