1. CESという場の再定義(事実ベースの整理)
CES(Consumer Electronics Show)は、米国CTA(Consumer Technology Association)が主催する、世界最大級のテクノロジー展示会である。毎年1月、ラスベガスで開催され、家電・モビリティ・AI・半導体・通信・ヘルスケアといった幅広い分野を横断しながら、「次の技術潮流」を可視化する場として機能してきた。
CESはしばしば「家電見本市」と誤解されるが、実態は異なる。近年のCESは、
- BtoC製品の完成度を競う場というより
- 技術の方向性、産業構造の変化、アライアンスの兆しを示す
BtoB色の極めて強いイベントへと変貌している。
つまりCESとは、「来月売れる製品」を見る場ではなく、「数年後にどこへ向かうのか」を読むための“産業の定点観測点”である。この前提に立たなければ、CES 2026で起きていた変化を正しく捉えることはできない。
2. CES 2026を貫いた一本の軸――フィジカルAI
CES 2026を貫いた最大のキーワードは、間違いなく「フィジカルAI」だった。
この言葉を強く印象付けたのが、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOによる基調講演である。
フィジカルAIとは、生成AIがテキストや画像といったデジタル空間に閉じず、ロボット、車、家電、工場設備など「物理世界」で動作する知能へと拡張される段階を指す。
重要なのは、これは突発的なトレンドではないという点だ。
- 半導体の演算性能向上
- エッジAI向けSoCの高度化
- ソフトウェアスタックと学習環境の成熟
これらが積み重なった結果、「AIを動かせるかどうか」ではなく、「AIをどこに実装し、どう使うか」というフェーズに産業全体が移行した。その到達点を、CES 2026は明確に示していた。

3. 表のCES:生活を変えるAIという“わかりやすい未来”
Notebook LMで整理された第三のインプットが描くCES像は、非常に直感的である。
AIはもはや専門家だけのものではなく、家庭や移動空間に溶け込み、生活体験そのものを変えていく――という物語だ。
韓国勢が示した完成度の高さ
この文脈で際立っていたのが、SamsungとLGである。
Samsungは「AIを、どこにでも、誰にでも」を掲げ、冷蔵庫、テレビ、洗濯機といった家電群をAIで横断的につなぐ世界観を提示した。個々の機能は延長線上に見えるが、「家庭全体を一つのAIシステムとして設計する」という思想は明確だ。
一方のLGは、「ゼロ・レイバー・ホーム」という、より踏み込んだ概念を打ち出した。ロボットを含め、人間の家事労働そのものを代替する方向性である。
両社に共通しているのは、AIを“機能”ではなく“体験”として見せ切る展示力であり、これはCESという場との相性が極めて良い。
4. 裏のCES:現地視点で見えた冷静な現実
しかし、実際に現地を歩いた第二のインプットからは、まったく異なる温度感が伝わってくる。
ビッグテックの存在感低下
まず目立ったのは、いわゆるビッグテックの巨大ブースが大幅に縮小、あるいは姿を消していた点だ。
理由はシンプルである。
- 勝負の主戦場がハード展示ではなく、アルゴリズムとデータに移った
- 自社イベントや開発者向けカンファレンスで十分に情報発信できる
- CESの高コストに見合わなくなった
トッププレイヤーほど、CESで「派手に語る必要がなくなっている」という逆説的な構図が浮かび上がる。
ロボット展示への違和感
ロボットは確かに多い。だが、
- 本当に環境に応じて判断して動いているのか
- あらかじめ訓練された動作を再生しているだけなのか
この違いは、事業性を考える上で決定的だ。
SNSでは“映える”が、収益化や量産、保守の絵が見えない展示も少なくなかった。
5. 国別に見たCES 2026のコントラスト
CES 2026では、国ごとのスタンスの違いも鮮明だった。
- 中国:
先端半導体などセンシティブ領域は避けつつ、非制裁分野での展示を着実に拡大。存在感は明らかに回復基調にある。 - 韓国:
単なるスマート化から一歩進み、「労力をどう代替するか」「どのAIと組むか」という実装思考へ移行。複数AIとの戦略的距離感も冷静だ。 - 日本:
大規模展示は姿を消し、かつての象徴的ブランドが海外資本の一部として並ぶ構図が目立つ。
6. SEMICON.TODAYとしての解釈
――CES 2026は「夢」と「選別」が同時に進んだ年
CES 2026は、
- 表では「AIが生活を豊かにする未来」を語り
- 裏では「どのAIが産業として成立するのか」という選別が始まっていた
この二層構造で理解すべきだ。
SEMICON.TODAYの視点で重要なのは、AIそのものではなく、その実装構造である。
半導体、製造装置、部材、保守、運用――
AIはそれらの価値を引き出す“機能部品”へと近づいている。
派手な展示よりも、
- どの工程に
- どのAIを
- どの半導体構成で組み込むのか
- その後のLTVや保守をどう設計するのか
ここにこそ、産業としての勝敗が分かれるポイントがある。
7. 結論:CESは「答え」ではなく「問い」を突きつける場になった
CES 2026は、「AIがすごい」ことを証明する場ではなく、
「そのAIは、誰にとって、どこで、どう価値を生むのか」
を静かに問いかける場へと変化している。
夢はある。
だが、夢だけでは生き残れない。
その夢を、構造として、事業として、産業として成立させられるか。
その覚悟と設計力を持つ企業だけが、次のCES、そして次の産業の主役となるだろう。
SEMICON.TODAYは、来年もその“差”を追い続ける。
SEMICON.TODAY編集部
参考文献