日本初の女性総理大臣誕生が現実味を帯びている。自民党総裁選で勝利した高市早苗氏は、経済安全保障と積極財政を軸に据えた新たな国家像を描こうとしている。
その中心に据えられるのが、AIや半導体をはじめとする先端産業だ。「危機管理投資」という概念を掲げる高市氏の政権構想は、これまでの産業支援をどのように再定義し、日本の半導体政策をどこへ導いていくのか――。
第1章 危機管理投資が描く国家戦略の再定義

高市早苗氏の経済思想の核にあるのは、「危機管理投資」という言葉だ。これは単なる景気刺激策ではなく、食料・エネルギー・医療、そして半導体のような国家の生存に直結する分野に対して、国が主体的に資金を投下するという考え方である。
従来の成長投資が「市場の効率性」に軸を置いていたのに対し、危機管理投資は「供給の安定性」と「技術主権」に焦点を当てる。すなわち、国家が産業の“最後の支え手”となるモデルであり、経済安保担当相を務めた経験を持つ高市氏ならではの政策哲学といえる。
彼女は総裁選中の政策討議で、AI、量子、半導体、次世代通信などを“成長の基幹”と位置づけた。アベノミクスの金融緩和・財政拡大路線を継承しつつ、より明確に「戦略分野への重点配分」に舵を切る構想だ。
日本経済を支える屋台骨としての半導体を、もはや「一企業の事業領域」ではなく「国家インフラ」として扱う時代が到来している。
第2章 Rapidus・TSMC・装置材料――国家投資の次フェーズ

岸田政権下で始まった半導体復興政策は、すでに実体を伴い始めている。北海道千歳ではRapidusが2nm世代の量産実証を進め、熊本ではTSMCが第2工場を建設中だ。いずれも国家補助金によって支えられた、前例のない規模の公的投資である。
高市政権において注目されるのは、これらの「点」の取り組みを、装置・材料・設計・人材育成を含む「面」の政策体系へと昇華できるかどうかだ。
これまでの支援は、国内生産能力の確保と供給網の再構築に焦点を当ててきた。しかし今後は、AIや自動車、エネルギーなど複数産業の競争力を左右する産業連関全体の最適化が求められる。
例えば、装置メーカーや素材メーカーに対する税制優遇・補助金の再設計、大学や国立研究機関との連携強化、人材の再教育など、“裾野”を含む包括的政策への拡張が不可欠となる。
Rapidusの2nm技術が単なる象徴に終わるか、産業エコシステム全体を牽引するか――。その分岐点となるのが、まさにこれから発足する高市内閣なのである。
第3章 ノンレッド・サプライチェーンとアジア戦略
半導体はもはや経済政策にとどまらず、地政学の核心である。高市氏は経済安保担当相時代から、「ノンレッド・サプライチェーン(非中国依存供給網)」の重要性を繰り返し強調してきた。2025年春には台湾を訪問し、日台の半導体連携を「民主主義圏のテクノロジー協力」として位置づけている。
今後の政策では、日米・日台の連携を軸にしつつ、ASEANやインドを含む“シリコン・アジア構想”が浮上する可能性が高い。設計・材料・製造・後工程をアジア各国に分散させ、地政学リスクを分散しながら、日本がその中核として技術・品質・人材を支える――そんな長期構想だ。
また、経済安全保障の観点からは、輸出管理・技術移転・人材交流の新ルール整備も避けて通れない。高市政権はおそらく、同盟国間での情報共有や共同投資の枠組みを拡充し、“技術民主主義圏”としてのサプライチェーンを制度的に確立する方向に動くだろう。
半導体立国の“第二章”へ

日本の半導体産業は、この数年で再び国際舞台の中央に戻りつつある。しかし、RapidusやTSMC熊本の成功が単発のイベントに終わるのか、あるいは持続的な技術競争力と人材循環を生む基盤となるのかは、これからの政策設計にかかっている。
高市早苗氏の政権構想が示す「危機管理投資」は、単なる補助金政策ではない。それは、国家が自らの将来を設計するという意思の表明だ。短期の為替や株価の動きに惑わされず、“安全保障と成長が両立する半導体政策”を本気で構築できるかどうか。その成否が、日本の次の10年を決定づける。
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