EV(電気自動車)や再生可能エネルギーの普及を背景に、電力変換効率を高める切り札としてシリコンカーバイド(SiC)パワーデバイスが注目を浴びている。高耐圧・高速スイッチングが可能で、充電時間の短縮や電力損失の削減といった効果は大きい。だが、2024年後半から2025年にかけて、業界全体では「SiC不足」が鮮明になった。理由は、SiC基板の製造難易度や歩留まりの低さ、200mmウエハ(8インチ)への移行遅れ、さらにコストの高さである。
この供給制約により、既存技術であるシリコンIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が再評価される流れが強まっている。IGBTは成熟した技術でありながら、最新世代では損失低減や小型化が進んでおり、コスト効率や調達の安定性を武器に用途を広げている。2025年に入り、国内外メーカーが次世代IGBTの量産やモジュール改良を相次ぎ発表し、EVや再エネ分野で「SiCとIGBTの棲み分け」が現実的な戦略として浮かび上がってきた。
本稿では、このIGBTの再評価について考察する。
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