この会社は、半導体そのものではなく“半導体をつくるための装置”をつくる、世界最大級のメーカーだ。チップの材料を原子レベルで薄く積んだり削ったりする装置を、世界中の半導体工場に納めている。
2026年度の第3四半期(4〜7月)は、売上が前年より+25%の91億ドルと過去最高。1株あたりの利益(調整後)も+41%の3.50ドルと過去最高になった。背景はAIブームだ。AIチップをたくさんつくるために、世界の半導体メーカーが工場・装置への投資を増やしている。注目すべきは“伸びの中身”で、成長の主役がAI向けの高速メモリー(DRAM/HBM)へと移りつつある。また、これまで大きかった中国向けの比率が35%→28%へ下がり、代わりに台湾・韓国など先端分野が伸びた。次の四半期(8〜10月)はさらに加速し、売上102億ドル・1株利益4.02ドルを見込む。
かんたん解説:むずかしい言葉を最小限にして説明します。
●半導体製造装置=チップをつくる工場で使う機械。
●DRAM/HBM=データを一時的に記憶する“メモリー”。とくにHBMはAI向けの超高速メモリー。
●粗利率/営業利益率=売上100円あたりに残る利益の割合。
●調整後(Non-GAAP)=買収や一時費用を除いた“ならし”の数値。会社が「過去最高」と言うのはこのならし基準。金額はドル($1=約150円前後)。「B」は10億の意味。

1. まず結論——AIブームで“装置”が過去最高、伸びの中身が変わってきた
要点は3つだ。
①すべてが過去最高。 売上は前年より+25%の91億ドルで過去最高。1株あたりの利益(調整後)も+41%の3.50ドルと記録を更新した。営業利益率(調整後)も34.0%と高く、成長と利益の両立ができている。原動力はAIだ。AIチップを大量につくるために、世界の半導体メーカーが装置への投資を増やしている。
②伸びの主役がAI向けメモリーへ。 装置事業の中身を見ると、AI向けの高速メモリー(DRAM/HBM)の比率が22%→26%へ上昇。逆にスマホ等に使う別のメモリー(フラッシュ)は9%→7%へ低下した。AIサーバーに欠かせないメモリーづくりの装置が、成長を引っ張っている。
③地域では中国の比率が下がった。 売上に占める中国の割合は35%→28%へ低下。ただし中国向けの金額そのものはほぼ横ばいで、“急減”したわけではない。全体が伸びた結果、相対的に比率が下がっただけだ。代わりに台湾・韓国など、より先端の分野が伸びている。
2. 会社全体の成績——売上・利益・利益率がそろって記録更新
売上は91億ドル(前年比+25%)で過去最高。粗利率は50.3%と高水準を保ち、営業利益率は33.7%(調整後で34.0%)。最終利益も大きく伸びた。会社が生み出す現金も過去最高で、自社株買いと配当で合計8.6億ドルを株主に還元した。次の四半期は売上102億ドル・1株利益4.02ドルとさらに強い見通しを示している。

図1:四半期の売上(棒)と1株あたり利益(線)。次の四半期はさらに加速する見通し(点線)。
3. 事業別——装置が牽引、サービスも安定成長
事業は大きく3つ。中心は装置本体で、売上70億ドル(+27%)と全体を引っ張った。次に、納めた装置の保守・部品を提供するサービス事業が18億ドル(+22%)と、安定して伸びている(一度装置を売ると、その後も継続的に稼げる“ストック型”のビジネスだ)。一方、ディスプレイ等を含むその他部門は小さな赤字で、全体の伸びのなかでは数少ない弱点だ。

図2:事業別の売上(前年比)。装置本体(+27%)が全体を牽引。
4. 伸びの中身——AI向けメモリー(DRAM/HBM)へシフト
装置事業を“何向けか”で分けると、AIメモリーへの移り変わりがはっきりする。AI向けの高速メモリー(DRAM)の比率が22%→26%へ上昇する一方、スマホ等向けのフラッシュメモリーは9%→7%へ低下。最も大きいロジック(計算用チップ)向けは69%→67%とほぼ横ばいだ。実際この四半期には、AI向けメモリーを高く積み上げる技術や、先端の“チップの組み立て(パッケージ)”向けの新しい装置が相次いで投入された。AIの需要が、装置の中身まで変えていることが分かる。

図3:装置事業の“何向けか”の内訳(%)。AI向けメモリー(DRAM)が22%→26%へ上昇。
5. 地域別——中国の比率が下がり、先端の台湾・韓国へ
地域別では、中国が売上の28%で最大だが、その比率は前年の35%から下がった。ここで大事なのは、中国向けの金額はほぼ横ばいで、“急に減った”わけではない点だ。全体が伸びたので、相対的に比率が下がっただけである。代わりに、先端の計算用チップをつくる台湾(22%)や、AI向けメモリーの韓国(17%)が伸びている。中国依存が下がったことは、米中の輸出規制リスクという観点でも注目される変化だ。

図4:地域別の売上の内訳。中国は28%(前年35%)へ低下、成長は台湾・韓国など先端分野へ。
| 「過去最高」という見出しの内側で起きているのは、需要の“質”の変化だ。AI向けメモリー(DRAM/HBM)と先端の組み立て技術、そして中国から先端地域へのシフト——アプライドマテリアルズはその中核装置を握っている。 ワンポイント=アプライドマテリアルズは“半導体をつくる装置”のメーカー。AIチップが増えるほど、その製造装置の出番も増える。 |
6. 数字を読むときの注意点
- 「過去最高」は“ならし”ベース:会社が強調する記録は、一時費用を除いた調整後の数値。会計そのままの1株利益は3.17ドル、調整後は3.50ドル。
- 中国は“比率低下”で“急減”ではない:金額はほぼ横ばい。全体が伸びて比率が下がっただけ。
- 次の四半期の利益には税メリットを含む:見通しの1株利益4.02ドルには、数セント分の税金の一時的なプラスが含まれる。
- 小さな赤字部門もある:ディスプレイ等のその他部門は赤字。
7. この先のシナリオ
会社は次の四半期に売上102億ドル・1株利益4.02ドルと、さらに強い見通しを示した。AI向けメモリー、先端の計算用チップ、先端の組み立て(パッケージ)が、下半期の成長を引っ張る見込みだ。会社は「市場全体を上回る成長」に自信を見せ、2027年も力強い成長が続くと期待している。10年代末までの需要を見据えて、装置をつくる自社の生産能力への投資も進めるとしている。
8. この先のチェックポイント
- AIメモリー需要の持続:DRAM/HBMや先端パッケージ向けの装置需要が続くか。
- 営業利益率の維持:高い利益率(調整後の営業利益率34%)を保てるか。
- 地域バランス:中国の比率低下と、台湾・韓国など先端地域の伸び。
- 政策リスク:米中の輸出規制など、地域・政策の動向。
9. 市場環境(用語のかんたん整理)
会社によれば、AIの急速な普及が“半導体をつくる装置”の需要を強く押し上げており、とくにAI向けメモリー(DRAM/HBM)、先端の計算用チップ、先端の組み立て技術が主役になっている。成長の中心は中国から台湾・韓国など先端分野へと移った。リスクとしては、米中の輸出規制などの政策、メモリー市況の波、特定地域・顧客への集中、為替の変動などがある。装置ビジネスは、需要の見通しと実際の出荷・検収のタイミングにズレが出やすい点も覚えておきたい。
10. 主要データ(数字の一覧)



注:会社が「過去最高」と呼ぶ利益は一時費用を除いた調整後の数値。中国は金額ほぼ横ばいだが全体増で比率が35%→28%へ低下。次の四半期の1株利益4.02ドルには税金の一時的なプラスを含む。金額は会社開示にもとづく。
11. 出典・ご注意
| 本記事は公表資料にもとづく決算の解説で、投資を勧めるものではありません。「過去最高」は調整後(一時費用を除いた)ベースを含みます。中国比率の低下は金額の急減ではなく構成比の変化で、次の四半期の1株利益見通しには税金の一時的なプラスを含みます。金額は丸めにより合計が一致しない場合があります。投資の判断はご自身の責任でお願いします。 |
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