【ローム_2027年3月期第1四半期決算深堀記事】前期の低迷から明確に回復——売上+16.8%、営業利益は1.95億円→96.4億円へ。自動車・生成AIサーバー向けが牽引、SiC(半導体素子)の損失も大幅縮小

この記事を読むのにかかる時間: 7

ロームの2027年3月期第1四半期(2026年4-6月)は、売上高1,357億39百万円(前年同期比+16.8%)、営業利益96億35百万円(前年同期は1億95百万円)、経常利益112億43百万円(前年同期比+352.6%)、親会社株主に帰属する四半期純利益90億06百万円(同+203.6%)となった。自動車市場の増収に加え、産業機器の回復、生成AIを背景としたコンピュータ&ストレージ(サーバー向け)の大幅増が牽引し、粗利率は22.2%から25.5%へ改善。パワー半導体(SiC等を含む半導体素子)の損失も△62億63百万円→△9億45百万円へ縮小した。ただし前年同期の利益水準が極めて低かったこと、営業利益の回復に前期減損に伴う減価償却費の減少が寄与している点には留意が要る。会社は通期予想を据え置いた。

売上高1,357億円、営業利益96.4億円、経常利益112.4億円、半導体素子損失△9.4億円、通期予想300億円の要約表。

1.  結論——回復は本物、ただし“低ベース”と“減損の反動”を差し引く

まず要点を三つ。第一に、業績は前期の低迷から明確に回復した。売上高は前年同期比+16.8%の1,357億円、営業利益は1億95百万円から96億35百万円へ、粗利率は22.2%から25.5%へ改善。会社の説明では、自動車市場の増収に加え、産業機器の回復、生成AIを背景としたコンピュータ&ストレージ(サーバー向け)の大幅増が牽引した。

第二に、伸び率は割り引いて読む必要がある。前年同期は営業利益1億95百万円、経常利益24億84百万円と極めて低い水準だった。このため経常利益+352.6%、純利益+203.6%、営業利益は約49倍という伸び率は“かさ上げ”されている。実勢は、売上+16.8%、粗利率+3.3ポイント、営業利益率7.1%という絶対水準で捉えるのが妥当だ。加えて営業利益の回復には「前期の減損処理に伴う減価償却費の減少」が寄与している(会社明記)点も、純粋な収益改善と会計要因を分けて見る必要がある。

第三に、戦略事業のSiCはなお赤字だが改善が続く。SiC等を含む半導体素子セグメントは、セグメント損失が前年同期の△62億63百万円から△9億45百万円へ大幅に縮小した。黒字化の前段階ではあるが、SiC収益化に向けた前進が数字に表れている。会社は通期予想を据え置いた。

2.  業績の変遷——粗利率・営業利益率がともに改善

第1四半期の連結損益は、売上総利益が257億75百万円→346億60百万円へ増加し、粗利率は22.2%から25.5%へ。販管費は255億79百万円→250億25百万円とむしろ減少し、営業利益率は0.2%から7.1%へ大きく改善した。会社の説明では、増収に加え前期の減損処理に伴う減価償却費の減少が営業段階の利益を押し上げた。EBITDA(営業利益+減価償却費)は184億67百万円(前年同期比+38.5%)だった。

FY25 Q1とFY26 Q1の比較を示す棒グラフ。左は粗利率が22.2%→25.5%で+3.3pt、右は営業利益率が0.2%→7.1%で+6.9pt。概要の説明付き。

図1:利益率の改善(%)。粗利率は+3.3ポイント、営業利益率は0.2%→7.1%へ。

経常利益は112億43百万円で、営業利益(96億35百万円)を上回る。営業外の受取利息16億91百万円などが寄与した。もっとも前年同期にあった為替差益(11億98百万円)は今回計上されず、逆に為替差損(4億82百万円)となっており、為替は前年からは逆風に転じている点は差し引いて見たい。

3.  会社計画と進捗——通期は据え置き、Q1で約32%を消化

会社は2027年3月期の通期予想を据え置いた。売上高5,100億円(前期比+6.0%)、営業利益300億円(同+176.1%)、経常利益360億円(同+87.3%)、親会社株主に帰属する当期純利益290億円、1株当たり当期純利益75.12円。第1四半期の営業利益96億円は、通期予想300億円に対して約32%の進捗。第1四半期としては順調だが、通期は前期比+176.1%という大幅増益を見込む計画であり、下期の回復度合いが鍵となる。会社資料によれば、下期以降の見通しが不透明であることから、第1四半期が好調でも現時点では予想を修正していない。

Bar chart of segment sales year over year in billion yen: LSI 548→621 (+13.3%), Semiconductor devices 471→589 (+25.2%), Modules 80→81 (+1.0%), Others 63→66 (+4.4%).

図2:2027年3月期 通期業績予想(億円)。営業利益は前期比+176.1%。会社予想(据え置き)。

前年比の“見かけの急増”ではなく、粗利率25.5%・営業利益率7.1%という水準と、SiC損失の縮小、そして通期+176.1%増益計画の進捗こそが、ロームの回復の質を映す。
用語=構造改革: ロームが進める生産拠点再編・事業ポートフォリオ適正化・価格適正化などの収益性改善策。

4.  KPI・先行指標——LSIが利益の柱、半導体素子(SiC)は損失縮小

セグメント別に見ると回復の中身がより鮮明になる。LSI(車載・民生・産業向けのアナログ/ロジックIC)は売上高621億28百万円(前年同期比+13.3%)、セグメント利益73億14百万円(同+69.0%)と利益の柱として伸びた。会社の説明では、自動車(ボディ・インフォテインメント)に加え、コンピュータ&ストレージ市場のサーバー向け製品が大幅に増加した。

セグメント別売上高の前年同期比を示す棒グラフ。LSI、半導体素子、モジュール、その他の前期比と今期の売上を比較。

図3:セグメント別売上高の前年同期比(億円)。
半導体素子(+25.2%)が最大の伸び、LSI(+13.3%)が続く。

SiC・Siパワーデバイスを含む半導体素子は売上高589億32百万円(前年同期比+25.2%)と最も伸び、セグメント損失は△9億45百万円(前年同期は△62億63百万円)へ大きく縮小した。会社の説明では、SiCパワーデバイスは自動車のxEV向けやサーバー向けが堅調、Siパワーデバイスもサーバー向けが大幅増。モジュールは売上高80億73百万円(+1.0%)・利益10億15百万円(+18.1%)、その他(抵抗器等)は売上高66億04百万円(+4.4%)・利益9億03百万円(△11.3%)だった。

Bar chart showing segment profit changes (in billions of yen). Comparison between last year and this year: LSI increases (43 to 73), semiconductor elements show a loss reduction, modules rise, and others increase. Specifics: LSI +69.0%, semiconductor elements loss reduced, modules +18.1%, others +11.3%.

図4:セグメント別利益の変化(億円)。
LSIが利益を牽引し、半導体素子(SiC等)の損失は△62.6億→△9.4億へ縮小。

5.  財政状態

2026年6月末の総資産は1兆2,982億02百万円(前期末1兆2,835億59百万円)、純資産は7,747億92百万円、自己資本比率は59.6%(前期末59.1%)と財務は健全だ。会社の説明では、投資有価証券などが減少した一方、現金及び預金や受取手形及び売掛金などが増加した。なお当四半期の包括利益は258億18百万円と、四半期純利益(90億15百万円)を大きく上回るが、これはその他の包括利益(為替換算調整・有価証券評価差額等)が大きかったためで、純利益とは水準が異なる点に留意したい。

6.  トピックス——構造改革とSiC収益化、AIサーバー攻略

構造改革の推進:市況変動に左右されない事業基盤の構築と収益性改善を目指し、生産拠点再編・事業ポートフォリオ適正化・価格適正化などを推進。前期の減損処理に伴う減価償却費の減少が、今期の営業利益回復に寄与した。

SiC事業の収益化:SiCパワーデバイスは自動車のxEV向け・サーバー向けが堅調で、半導体素子セグメントの損失が大幅縮小。会社はSiC事業の収益化を重点施策に掲げる。

生成AI・サーバー向けの拡販:生成AIの普及で需要拡大が期待されるサーバー向け製品の開発・拡販に一層注力。LSI・パワーデバイスの両面でサーバー向けが売上増に貢献。

配当:2027年3月期は年間50円(中間25円・期末25円)を予想し、前期と同額を維持する方針。

7.  中期の方向性——市況に左右されない基盤と、パワー×AIの取り込み

会社の説明では、ロームは市況変動に左右されない強固な事業基盤の構築と、将来の企業規模拡大に向けた収益性改善を目指し、構造改革とSiC事業の収益化を推進する。パワー半導体(SiC/Si)を軸に、自動車(xEV)・産業機器の回復需要を取り込みつつ、生成AIの普及で拡大するサーバー向け(電源・アナログ・パワー)を新たな成長ドライバーに据える方針だ。前期に大きな減損・構造改革費用を計上した“調整局面”を経て、収益体質の改善が数字に表れ始めた段階といえる。

8.  市場環境

会社の説明では、自動車市場ではボディ・インフォテインメント・xEV向けが伸長し、産業機器市場は需要回復で堅調、コンピュータ&ストレージ市場では生成AIを背景にサーバー向けが大幅増。一方、民生機器市場では家電向けが調整局面にある。為替は前年の差益から今回は差損に転じ、市況・下期見通しの不透明感も残る。パワー半導体は中期的にEV・再エネ・AIデータセンター電源が需要の柱とされ、SiCの収益化スピードが各社共通の焦点となっている。

9.  今後のチェックポイント

通期進捗:通期営業利益300億円(前期比+176.1%)に対し、下期にかけ回復が続くか。第1四半期は約32%の進捗。

SiCの黒字化:半導体素子セグメントの損失(△9.4億円)が、xEV・サーバー需要でいつ黒字転換するか。

AIサーバー需要:生成AI関連のサーバー向け(LSI・パワー)の伸びが持続するか。

“実力”の見極め:前期減損の反動(減価償却費減)が一巡した後の、素の収益力。

為替・市況:為替の逆風、民生調整、下期の市況不透明感。

10.  主要データ一覧

財務データの表。売上高・利益などの数値が年度ごとに示されている。日本語の列見出し付き。
2027年3月期の通期予想表(百万円)。売上高510,000、営業利益30,000、経常利益36,000、当期純利益29,000、配当50円。
注:前年同期(Q1 FY25=2026年3月期第1四半期)は営業利益195百万円・経常利益2,484百万円と低水準で、伸び率はその反動を含む。営業利益の回復には前期減損に伴う減価償却費の減少が寄与。半導体素子はSiC等を含み損失(黒字化前)。通期の当期純利益は前期比「-」(前期がマイナス圏だったことを示す)。総資産1,298,202、純資産774,792、自己資本比率59.6%。通期は会社予想(据え置き)。

11.  出典・免責

ローム株式会社「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」2026年8月5日(売上・利益・セグメント・財政状態・通期予想・配当の一次数値)。

同「決算補足説明資料」「業績説明資料(2026年度 第1四半期)」「Fact Book FY2026 Q1」2026年8月5日(セグメント別・市場別、EBITDA等)。

通期業績予想・市場見通しは会社の開示・見通しであり確定値ではない。市況・為替・SiC収益化の進捗により実際の結果は異なり得る。

本記事はローム株式会社の公表資料(日本基準)に基づく決算解説であり、投資勧誘または投資助言を目的としたものではない。将来見通し(通期予想)は会社公表資料に基づくもので、実際の業績は変動し得る。前年同期比は前年の利益水準が低かったこと、および前期減損に伴う減価償却費減少の影響で伸び率が大きく出る点に留意されたい。半導体素子セグメントは損失(黒字化前)である。数値は百万円未満切捨てのため合計等が一致しない場合がある。投資判断はご自身の責任で行っていただきたい。

この記事で取り上げた分野では、現在も採用が活発です。以下は、semicon.todayの編集部が記事のテーマをもとに選定した求人情報です。広告・PRではありません
※採用状況により求人内容が更新される場合があります
応募前に。履歴書アップだけでマッチ度がわかる。
TOP
CLOSE
 
SEARCH