TSMC期末決算で見えた「AI需要の実需化」――次の競争軸は工程横断へ

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2026年1月15日、台湾積体電路製造(TSMC)は2025年12月期(2025年1月〜12月)の第4四半期(10月〜12月)および通期の連結業績を公表した。第4四半期の連結売上高は1兆460億9,000万台湾ドル(337億3,000万米ドル)、純利益は5,057億4,000万台湾ドル、希薄化後1株当たり利益は19.50台湾ドル(ADR換算3.14米ドル)となった。前四半期(2025年7月〜9月)比では、売上高が5.7%増、純利益が11.8%増である。売上総利益率は62.3%、営業利益率は54.0%だった。

通期の連結売上高は3兆8,090億5,000万台湾ドル(1,224億2,000万米ドル)、純利益は1兆7,178億8,000万台湾ドル、希薄化後1株当たり利益は66.25ニュー台湾ドルとなった。決算資料を追うと、需要の重心がHPC(高性能計算)へ寄ったこと、売上の先端ノード比率が高止まりしていること、設備投資が前工程だけでなく先端パッケージングや試験・マスク製造まで含めて示された。

注目点は、AI需要が「期待」ではなく売上構成として定着しつつある一方、供給側の勝負が先端ノード単体ではなく、先端パッケージング・試験・マスク製造を含む工程横断の能力設計へ移っていることにある。

売上構成が示す需要の中心

プラットフォーム別売上比率を見ると、通期でHPCは58%となり、スマートフォン29%を上回った。第4四半期でもHPCは55%で、スマートフォン32%を上回る。決算説明会では、AIアクセラレータの売上が2025年に総売上の「10%台後半」を占めたと説明された。HPCはAIアクセラレータに加えてネットワークや一般サーバーなども含む分類であり、データセンター投資の波が業績に反映されやすい構造が、分類上も確認できる。

第4四半期の内訳変化も濃淡が出た。プラットフォーム別売上は前四半期比で、スマートフォンが11%増、HPCが4%増、IoTが3%増、その他が14%増だった一方、車載は1%減、デジタル・コンシューマーは22%減とされている。同一四半期の中で、伸びる領域と鈍る領域が同時に進んだ。

地域別(顧客所在地)では、第4四半期が北米74%、中国9%、アジア太平洋9%、欧州・中東・アフリカ4%、日本4%だった。通期は北米75%、中国9%、アジア太平洋9%、欧州・中東・アフリカ4%、日本4%である。比率が少数地域へ寄るほど、調達条件、品質認証、輸出管理といった要求の変更が、供給網全体へ波及しやすい。

市場全体の裏付けとして、調査会社ガートナーは2025年の世界半導体売上高を7,934億米ドルと公表し、AI向け半導体が成長のドライバーになっていると位置づけた。AIプロセッサの売上が2,000億米ドル超、HBM(高帯域幅メモリ)の売上が300億米ドル超でDRAM売上の23%を占めた、という説明も同資料に含まれる。

ウエハ売上は3nmが通期24%、第4四半期は28%

プロセス別のウエハ売上構成は次のとおり。通期の3nmは24%、5nmは36%、7nmは14%だった。TSMCは「先端技術(7nmおよびそれより微細)」の売上比率を通期74%としている。第4四半期単体では、3nmが28%、5nmが35%、7nmが14%で、先端技術は77%に達した。

この比率は、微細化の進展そのものに加え、装置・材料・マスクなど上流制約と直結する。決算説明会では、2nm(N2)の立ち上げに伴い、2026年の減価償却費が「10%台後半」増える見通しが語られた。増勢の焦点が単なる数量増ではなく、先端ノードのコスト構造を伴うことを示す発言である。

さらにCFOは、月産能力1,000枚(12インチ換算)当たりの投資額(CapEx per k WSPM)が、N2はN3より「大幅に高い」と述べ、A14はN2より「著しく高い」と説明した。ロードマップが進むほど、同じ能力増でも資本集約度が上がるという整理が、決算の言葉で明示された。

利益率とキャッシュ創出。四半期の改善と通期の資金余力

第4四半期の利益指標は、数量・製品ミックス・為替の影響を同時に映す。第4四半期の売上総利益は6,519億9,000万台湾ドル、営業利益は5,649億0,000万台湾ドルで、純利益率は48.3%とされる。平均為替レートは1米ドル=31.01台湾ドルで、前四半期(1米ドル=29.91台湾ドル)から変化した。

通期の資金面では、営業キャッシュフローが2兆2,749億8,000万台湾ドル、投資活動によるキャッシュアウト(純額)が1兆1,443億9,000万台湾ドル、フリーキャッシュフローが1兆25億7,000万台湾ドルだった。期末の現金および短期投資は3兆685億9,000万台湾ドルとされる。先端投資の増勢を織り込みつつ、手元流動性を厚く残す構図が数値で確認できる。

TSMCは2025年に「305のプロセス技術」を提供し、12,682製品を534社向けに製造したとも記載した。先端ノード比率が高い局面でも、製造ポートフォリオの裾野を維持していることが資料上で示される。

投資計画のポイントとは

投資計画は、供給網の制約点を最も明確に示す。決算説明会でCFOは、2025年の設備投資が409億米ドルだったと述べたうえで、2026年は520〜560億米ドルとした。配分は、先端プロセス技術に70〜80%、特殊プロセスに約10%、先端パッケージング・試験・マスク製造などに10〜20%と説明された。

「後工程」に投資枠が明示される点は、今回の決算で特に示唆が大きい。決算説明会では、先端パッケージングの売上寄与が2025年に「10%強」だったことも語られた。微細化の競争は、後工程の能力・歩留まり・供給制約と不可分になったという位置づけが、業績と投資の同一資料で示された形だ。

地政学と供給網の観点では、米国投資計画も同じ流れに置かれる。TSMCは2025年3月4日、米国での先端半導体製造投資を追加1,000億米ドル拡大し、総投資額が1,650億米ドルに達する計画を公表した。内訳には3つの新工場、2つの先端パッケージング施設、研究開発拠点が含まれる。決算で示された「後工程への投資配分」と、米国投資で掲げられた「先端パッケージング施設」が同一の公式情報として整合して並ぶ点は、供給能力の設計が工程横断で進んでいることを示す。

競争軸は「製造単体」から「工程横断の供給設計」へ移る

2025年12月期の決算資料は、需要の中心(HPC)と供給の中心(先端ノード+後工程)を同時に示した。通期のHPC比率58%と、7nm以下の先端技術比率74%は、AI向け需要がどの製品群に集まりやすいかを売上構成として表す。さらに2026年の設備投資計画では、先端プロセスに70〜80%を充てつつ、先端パッケージング・試験・マスク製造に10〜20%を割り当てる方針が明記された。

先端半導体の供給は、微細化だけで完結しない。後工程の能力と品質の確保、マスクを含む周辺工程のボトルネック解消が、同じ投資計画の中で優先順位として示された。TSMCの期末決算は、AI需要の実需化が進む局面で、競争軸が「製造単体」から「工程横断の供給設計」へ移っていることを示す資料となった。

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