ルネサスの2026年12月期 第2四半期(2026年4-6月)は、Non-GAAP売上収益4,053億円(前年同期比+24.8%、前四半期比+8.8%)、Non-GAAP営業利益1,327億円(営業利益率32.7%)、親会社帰属四半期利益1,133億円。売上・利益ともに会社ガイダンスを上回った。最大の変化は事業構成にある。産業・インフラ・IoT向け事業(2,163億円、+40.0%)が、自動車向け事業(1,871億円、+15.9%)を売上で上回った。成長の主役が自動車から産業・インフラ・IoTへ移りつつある。ただし増収の相当部分は円安による面もあり、為替影響を除く売上の伸びは+15.4%である。

1. 結論——成長の主役が「自動車」から「産業」へ
まず要点を三つ。第一に、第2四半期は売上・利益ともに会社ガイダンスを上回った。Non-GAAP売上収益4,053億円(前四半期比+8.8%、前年同期比+24.8%)、Non-GAAP営業利益率32.7%と、前年同期の28.3%から大きく改善した。
第二に、最も重要な変化として事業の主役が交代した。産業・インフラ・IoT向け事業が2,163億円(前年同期比+40.0%)へ伸び、自動車向け事業の1,871億円(同+15.9%)を売上で上回った。データセンターやインフラ、産業機器向けの需要が、自動車を上回るスピードで牽引している。
第三に、数字の読み方に注意が要る。増収には円安の寄与が大きく、会社資料によれば為替影響を除く売上の伸びは+15.4%(自動車+7.3%、産業・インフラ・IoT+29.3%)にとどまる。なお、IFRS純利益は1,492億円とNon-GAAP(1,133億円)を上回るが、これはNon-GAAPが控除する非経常項目(買収に伴う償却や一過性損益など)の差による。
2. 業績の変遷——増収と高い利益率
四半期売上収益は、前年同期3,246億円、前四半期3,723億円を経て、今回4,053億円に達した。Non-GAAP営業利益は1,327億円で前年同期から409億円増え、営業利益率は32.7%と高水準を維持。円安と稼働率上昇、売上総利益の増加が利益を押し上げた一方、会社資料によればミックス悪化や製造費用増が一部相殺した。

図1:四半期売上収益(Non-GAAP・億円)。
青=実績、オレンジ=今回(2026年4-6月)、琥珀の点線=Q3ガイダンス(計画、±75)。
収益性も高い。営業利益率は前年同期の28.3%から32.7%へ4.4ポイント改善した(前四半期33.7%からは小幅低下)。売上総利益率は58.1%である。

図2:Non-GAAP営業利益率の推移。
青=実績、オレンジ=今回、琥珀の点線=Q3ガイダンス(計画、32.5%)。
3. 会社計画と進捗の読み解き
今回は、4月24日公表の第2四半期ガイダンス(売上中央値3,880億円)に対し、実績4,053億円と+4.5%上回って着地。営業利益率も予想比+3.7ポイントと大幅超過だった。第3四半期(7-9月)予想は、売上中央値4,300億円(±75、前年同期比+28.7%)、売上総利益率57.5%、営業利益率32.5%。

ルネサスは通期ではなく翌四半期予想を開示する方針をとる。為替前提は1ドル=159円で、会社資料によれば為替感応度は1円あたり売上約20億円・営業利益約9億円(米ドル)。円安・円高の振れが業績に相応に効く。これらは会社の将来見通しであり確定値ではない。
4. KPI・先行指標——「成長エンジンの交代」を数字で読む
本決算のハイライトはセグメント構成の変化だ。自動車向けは1,871億円(前年同期比+15.9%、為替除き+7.3%)、産業・インフラ・IoT向けは2,163億円(同+40.0%、為替除き+29.3%)。産業側が自動車を売上で上回り、伸び率でも大きく引き離した。

図3:セグメント別売上収益(Non-GAAP・億円)。
青=自動車、オレンジ=産業・インフラ・IoT。2026年に入り産業側が逆転。

図4:2026年4-6月のセグメント別売上構成。産業・インフラ・IoTが53%、自動車が46%。
収益性はセグメントで濃淡がある。会社資料によれば営業利益率は自動車34.4%、産業・インフラ・IoT31.9%。伸びの主役である産業側はやや低めの利益率だ。在庫面では、会社在庫は積み増しつつ在庫日数(DOI)は低下、チャネル在庫も自動車のセルスルー(最終需要)が想定を上回り在庫週数(WOI)が低下した。実需の底堅さを示す。

5. 在庫・設備投資・稼働率
需要回復を受け生産・投資も動く。会社資料によれば当四半期の設備投資は226億円。前工程の稼働率(ウェハ投入量ベース)は回復基調で、需要増に応じ仕掛品の投入を増やしている。在庫は会社・チャネルとも積み増しつつ、売上増により在庫日数・週数はむしろ低下した。第3四半期はさらに在庫を拡充し供給力を高める方針だ。
6. トピックス——ポートフォリオの再編
■ タイミング事業の譲渡:2026年2月に譲渡を発表。同月以降Non-GAAP業績から除外され、報告セグメントも従来の「自動車」「産業・インフラ・IoT」から「その他」へ再区分。選択と集中を進める動きだ。
■ 研究開発投資:当四半期の研究開発費は581億円(売上比14.3%)。売上増に伴い増額しつつ売上比は前年同期から低下し、投資効率が改善している。
■ 開示方針:ルネサスは通期予想に代えて翌四半期予想をレンジ形式で開示。市況変動の大きい半導体事業の特性を踏まえた方針だ。
7. 中期の方向性——産業・インフラ・IoTシフト
今回の決算が示すのは、成長ドライバーが自動車一辺倒から産業・インフラ・IoTを含む多面的構造へ移りつつあることだ。産業・インフラ・IoTは前年同期比+40.0%(為替除き+29.3%)と力強く、上期でも4,122億円(+38.1%)と自動車(3,587億円)を上回った。
| 「自動車のルネサス」から「自動車と産業のルネサス」へ。成長の重心が動いた四半期として記録される。 用語=産業・インフラ・IoT: 産業機器、データセンター・通信インフラ、IoT機器などに用いられる半導体。AI関連のインフラ投資が追い風になりやすい領域。 |
もっとも、増収に占める円安の寄与は小さくない。為替が反転すれば表面の成長率は縮む。実質(為替影響除き)ベースの伸びと、産業側の勢いが続くかが中期の評価軸になる。
8. 市場環境——実需は底堅く、為替は両刃
会社資料によれば、自動車では最終需要(セルスルー)が想定を上回り在庫週数が低下。産業・インフラ・IoTでも在庫拡充を進めつつセルスルーは好調で、実需の底堅さがうかがえる。一方、増収の相当部分は円安による面があり、為替は業績の振れ要因(両刃)だ。半導体市況のサイクル性、為替、通商環境の変化はリスクとして残る。
9. 今後のチェックポイント
■ 第3四半期の着地:売上4,300億円(前年同期比+28.7%)の達成可否。増収基調の持続性。
■ 実質成長(為替影響除き):円安を除いた伸び(今回+15.4%)が保てるか。為替反転時の耐性。
■ 産業・インフラ・IoTの勢い:+40.0%の高成長が続くか。データセンター・インフラ需要の持続性。
■ 自動車の回復:自動車向けの需要とセルスルー、在庫の正常化。
■ 利益率とミックス:産業側の構成比上昇が全社の利益率にどう効くか。
10. 主要データ一覧

注:Non-GAAPは会社開示の社内指標(監査対象外)。IFRS純利益がNon-GAAPを上回るのは、Non-GAAPが控除する非経常項目(買収関連の償却・一過性損益等)の差による。
為替影響除きは会社開示値。Q3は会社の将来見通し。
11. 出典・免責
■ ルネサス「2026年12月期 第2四半期(中間期)決算短信〔IFRS〕(連結)」2026年7月31日(売上・利益・IFRS/Non-GAAP調整・業績予想の一次数値)。
■ ルネサス「2026年12月期 第2四半期 決算説明資料」2026年7月31日(セグメント別・四半期推移・在庫・稼働率・設備投資・為替・Q3予想)。
■ 為替影響除きの伸び率、Q3業績予想、在庫・需要の評価は会社の開示・見通しであり確定値ではない。市況・為替・通商環境により実際の結果は異なり得る。
本記事はルネサス エレクトロニクスの公表資料(IFRS連結・Non-GAAP)に基づく決算解説であり、投資勧誘または投資助言を目的としたものではない。将来見通しは会社公表資料に基づくもので、実際の業績は変動し得る。Non-GAAP指標は監査対象外の社内指標であり、IFRSを代替するものではない。数値は丸め処理により端数が一致しない場合がある。投資判断はご自身の責任で行っていただきたい。
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