この記事のポイント
- AIの進化に伴い、データセンターの電力消費抑制が急務となっています。
- 水冷技術は、従来の風冷システムより効率的にサーバーを冷却し、電力消費を大幅に削減する切り札として期待されています。
- 富士電機や日本電産などが、省電力化に貢献する水冷関連技術の開発・量産を加速させています。
- 初期投資はかかるものの、ランニングコスト削減や半導体寿命延長といったメリットがあります。
- 海外企業も水冷システムへの注力を強めており、技術競争が激化しています。
データセンターにおける電力消費問題と水冷技術の台頭
AI(人工知能)の発展に不可欠なデータセンターでは、その電力消費をいかに抑えるかが大きな課題となっています。
AIサーバーを冷却するために水を活用する「水冷技術」は、電力消費量削減の切り札として、現在、大きな注目を集めています。従来の風冷システムと比較して、水冷技術はより高い冷却効率を実現できるため、各メーカーは関連技術の開発を急いでいます。
データセンター全体の電力消費のうち、冷却システムが占める割合は30%から40%にも及ぶと推定されています。AIに必要な高度な計算処理を行うGPUなどの部品が発生する熱量は、過去5年間で倍以上に増加しており、エアコンなどの「風冷式」設備だけでは、もはや冷却需要を満たすことが困難になっています。
水冷技術の仕組みとメリット
水冷技術の仕組みは、GPUの周辺に配管を張り巡らせ、冷水を循環させることで熱を奪うというものです。熱源の近くで直接熱を吸収できるため、極めて高い冷却効率が実現され、結果として電力消費を効果的に低減することが可能です。
この分野では、従来から省エネ家電で培われてきた基本技術を活かし、日本企業が技術的優位性を確立しようと積極的に取り組んでいます。
現在最も一般的な実施方法としては、データセンター全体の空調システムによる環境温度の冷却に加え、サーバー内部の半導体部品を水冷システムで集中的に冷却する手法が挙げられます。サーバーラック内に給水配管を敷設するなど、初期投資は大きくなる傾向がありますが、電力消費の大幅な削減や、半導体チップの寿命延長といった効果により、運用コストの削減に大きく貢献します。
日本の主要企業による水冷技術開発
富士電機:噴射式冷却装置で省電力化を推進
富士電機は、今年6月に水冷式データセンター専用の「噴射式冷却装置」を正式に発売する予定です。この装置は、電力消費の多い従来の冷却設備に代わるもので、電力消費を最大85%削減できるとされています。
冷却プロセスでは、空気や水が熱を吸収し、それが冷媒に伝達されます。その後、冷媒を加圧し、急激に減圧することで熱を放出します。冷媒を圧縮するために使われる冷却機内のコンプレッサーは、多くの電力を消費します。
富士電機が開発した噴射式冷却装置は、冷媒の流速を精密に制御し、冷媒自身の運動エネルギーを利用して圧力を高めることで、電力消費の低減に成功しました。
日本電産:大型冷却液分配装置(CDU)の量産開始
日本電産は、水冷設備分野におけるもう一つの有力な国内メーカーです。同社は、2025年5月より、タイにある工場で大型冷却液分配装置(CDU)の量産を開始しています。
この機種は、10台以上のサーバーラックを同時に冷却できる強力な能力を備えており、従来の風冷システムと比較して約30%のエネルギー効率向上を実現すると同社は主張しています。
顧客には、米Super Micro Computerなどの著名なAIサーバーメーカーが含まれています。さらに、中国レノボ・グループの日本法人とも連携し、水冷システムをプリインストールしたサーバーの普及を積極的に進めています。
三菱重工:チップへの直接冷却技術
三菱重工は、「二相直接接触チップ冷却」システムを開発しました。このシステムは、導流板をGPUチップ表面に直接密着させることで、チップからの熱を直接吸収・排出することを可能にしています。
AI開発企業や海外企業の動向
東京都に拠点を置く「Prefer Network」社は、データセンターを活用したAI開発企業であり、現在、日本インターネットアセットマネジメント(IIJ)および北陸先端科学技術大学院大学と共同で水冷サーバーの開発に取り組んでいます。
海外企業の水冷システムへの注力
海外企業も、研究開発の重点を水冷システムへとシフトさせています。
フランスの電気設備製造大手シュナイダーエレクトリックは、空調設備から水循環システムまでを網羅する包括的な製品ポートフォリオを有しており、データセンター事業者の具体的なニーズに合わせて、最適な水冷ソリューションをカスタマイズし、実装することが可能です。
米Vertiv社も、この分野におけるリーダー企業の一つです。(翻訳/劉林)
出典: 元記事を読む
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