株式会社アイテス|後編(第3回・第4回)ミクロの世界の探偵たち── 「犯人探し」に挑む、解析エンジニアの現場

SEMICON.TODAY
この記事を読むのにかかる時間: 6

SEMICON.TODAY 特別インタビュー ── 半導体の挑戦者たち

意図しないどこかに、故障が潜んでいる。お客様も原因が分からず、困り果てている。そこに、あらゆるツールと自分のノウハウで挑み、ミクロの領域から「犯人」を突き止める――。アイテスの故障解析エンジニアの仕事を、社内では「ミクロの世界の探偵」と表現することがある。第3回は、この探偵たちがどんな仕事に向き合い、どう一人前になり、何にやりがいと難しさを感じるのかを、五十嵐靖行社長に聞いた。

「犯人探し」という仕事

故障解析という仕事は、業界の外にいる人にはイメージしづらい。分析や故障解析と聞いても、日々どんな作業をしているのか、なかなか像を結ばないだろう。そこで五十嵐社長が挙げたのが、「探偵」というたとえだ。

実際、以前この解析を率いていた課長やリーダーたちも、10年以上前からセミナーなどで自分たちの業務を紹介する際、「自分たちは犯人探しをやっているようなものだ」と説明していたという。分かりやすく、かつ本質を突いた比喩だ。

「故障解析は、意図しないところに何か故障がある。お客様が非常に困っている。そこを、いろんなツールや自分の持っているノウハウで、実際にミクロな領域で『ここにこういうものがあった』と突き止める。それができると、技術者としての大きな達成感を感じる部分はあると思います」

原因がなかなか分からない事象を、自らの手で解析し、答えを出す。その達成感が、この仕事の大きな魅力の一つになっている。

前処理から始まる ── 一人前への道筋

では、若手はどのように技術を身につけ、一人前になっていくのか。ここに、アイテスの解析部隊ならではの考え方がある。

お客様が求めるのは、ミクロな領域で真実を明らかにすること。ただ、一人の技術者が全方位に、あらゆる解析をオールマイティにこなせるようになるわけではない。最終的には、ある分野・ある特定の装置のエキスパートになるのが、一つの道筋となる。

だが、いきなり「あなたはこの装置の担当」と割り振るわけではない。同社が出発点に据えるのは、解析装置にかける前の「前処理」――試料をいかに加工し、真実や故障を見つけやすい状態に整えるか、という工程だ。

「前処理がきっちりできないと、解析装置の能力を引き出すことができないんです」

もし前処理を人に任せてしまえば、本人はそこが分からないまま解析することになる。材料の特性や試料の加工方法を理解したうえで解析するのとでは、どこまで結果を引き出せるか、視野の広さに大きな差が出る。だからこそ、試料を確保し、きっちり加工できるようになり、基本的な観察ができるようになる――このプロセスを、部隊の技術者全員が最初の段階で経験する。

共通の基礎技術、素材の特性、前処理の知識。それらを習得したうえで、初めて自分の専門分野の解析装置・解析領域へと入っていく。まず下地をつくり、その先で専門性を深めていく。この順序こそが、アイテスの技術習得の特徴だと五十嵐社長は語る。経験者であればこの段階をさらりと抜けることもあるが、素材の特性を「知っている」か「知らない」かは、その後、解析装置を使いこなせるかどうかに大きく効いてくる。

地味さと、孤独と ── それでも続けられる理由

やりがいの一方で、この仕事には相応の難しさもある。五十嵐社長は、自身の経験と想像を交えながら、正直に語ってくれた。

必要な技術的知識がベースになるのは当然として、実際の作業には「かなり地味な部分」があるという。決まったプロセスがあるわけではなく、装置によっては「ここはこれだけ待たなければならない」「この工程はこう気を使わなければならない」といった、装置の律速に従う場面も多い。

しかも、お客様の試料は、場合によっては一個しかないこともある。やり直しがきかない。だからこそ、冷静さ、客観的に判断する力、真っ当に科学的に向き合う力が求められる。時には、一人でじっくりと向き合わなければならない作業もある。

この仕事を長く続けられるかどうか――。五十嵐社長は、それは本人次第だと考えている。自分が取り組んだものに対して、あるいは出したアウトプットに対するお客様の反応に対して、どれだけやりがいを感じられるか。そこにかかっている、と。

壁を、別の角度から越えていく人

では、アイテスではどんな人が活躍しているのか。五十嵐社長の答えは明快だった。他の分野でも同じかもしれないが、と前置きしたうえで、こう続ける。

解析の現場には、一筋縄ではいかないケースが非常に多い。そうした時に、できない理由を並べて「できません」と言うのではなく、ぶつかった壁をどうすれば一つ越えられるか、どうクリアできるかを、淡々と、前向きに考えてくれる人。

「このやり方ではもう無理です、と諦めるのではなく、別の手法ならできそうだ、と自分なりに考えて進めていける人ですね」

そういう人は、自然と応用力もついてくるし、物事を多面的に見られるようになる。一つの課題に対して、どんな解決手段があるかをいろんな角度から考えられる――。そういう人にこそ期待したいし、実際に実績も上げている、と五十嵐社長は語る。

意図しない故障という「事件」に、装置とノウハウで挑む。壁にぶつかっても、別の角度から回り込んで越えていく。ミクロの世界の探偵たちの現場は、そんな粘りと工夫の積み重ねでできている。

業績は、世の中の評価の裏返し── 人が減る時代に、そしてAIの時代に、選ばれ続けるために

日本全体で労働人口が減っていく。半導体業界の人手不足も、避けられない現実だ。そんな時代に、企業が人材から、そして顧客から選ばれ続けるには何が必要なのか。さらに、あらゆる問いにAIが答える時代、専門的な技術の価値はどう変わるのか――。全4回の最終回は、五十嵐靖行社長が見据えるアイテスの未来と、変化の時代を生き抜く姿勢を聞いた。

選ばれ続けることは、生き残り、成長すること

人口減少が進むなか、企業は人材から選ばれ続けなければならない。では、人を惹きつけるために何が大事になるのか。この問いに、五十嵐社長はまず、シンプルな一つの真実を返した。

「いかに生き残っているか、成長を遂げているか、ということだと思います」

業績が上がらないのは、それだけ世の中に評価されていないことの裏返しだ、と五十嵐社長は言う。世の中に期待されている部分に対して、きちんと応えられているか。それができているかどうかが、事業を続けていけるかどうかを分ける。

そして、その「期待」は時々刻々と変わっていく。企業も生き物であり、世の中も生き物だ。だからこそ、変化を捉え、遅れをとらないことが欠かせない。狙う顧客が「こういうことをやってほしい」と望むものに、応えられるものを出せるか――。それが、大きな問いになる。

「ここならアイテス」を、鮮明にする

では、どんな道筋でそこに到達するのか。答えは、これまでの3回で語られてきた同社の歩みと、まっすぐにつながっている。

「一つの技術の柱としてやってきた会社なので、他社にできない独自の技術やサービスで、お客様に提供していく。『この分野、この部分であれば、やっぱりアイテスに頼りたい』というところを鮮明にしていく。それが必須ではないかと思います」

液晶検査から太陽電池へ、そしてSiCの欠陥解析へ。装置だけでは届かない前処理と断面加工の技術。第1回から語られてきたアイテスの強みは、いずれも「ここならアイテス」と名指しされる領域を、一つひとつ鮮明にしてきた積み重ねだった。人が減る時代の生き残りの鍵もまた、この延長線上にある。

AIは、奪う脅威か ── それとも進化の道具か

もう一つ、避けて通れないのがAIの存在だ。ある一定の問いには、AIに聞けばほぼ答えが返ってくる。そんな時代に、「AIに仕事を奪われる」という風潮も広がっている。分析解析という専門技術は、この波にどう向き合うのか。

五十嵐社長は、AIの活用を「一つ新しい時代に入った」と受け止めている。そのうえで、歴史を引く。

「よく言われる話ですが、産業革命が起きた時にも『仕事がなくなる』という同じような議論がありました。では人類がおかしくなったかというと、決してそんなことはなかった」。分析解析や評価試験も、まったく同じだと五十嵐社長は考える。AIはAIで別のもの、と切り離すのではなく、この分野でもAIをいかに活用するかが、大きな鍵になる。

「任せられるところはどんどん任せて、その過程でAIというツールをいかに活用していくか。それを早くできるかどうかです」

大胆に活用したうえで解析をさらに進化させ、自分たちにしかできない部分を磨いていく。そのスピードが、同業他社との差になる。逆に、ぼやぼやしていれば、他社が先へ行ってしまう。世の中にある最新のツール、便利なものをいかに活用し、いま自分がやっていることをさらに進化させられるか――。AIを脅威ではなく、進化のための道具として使いこなす。それが、アイテスの描く生き残りの姿だ。

裏を返せば、それは求職者にとっての意味も持つ。AIに任せられない専門技術――装置に依存しない解析手法、前処理や断面加工の勘所――を、現場で身につけられる場所。ミクロの世界の探偵の技は、AI時代にこそ、その価値を増していく。


取材を終えて

IBM解体の波の中で生まれ、幾多の淘汰を生き抜いてきたアイテス。その歴史は、「一つの技術を、世の中にどう活かすか」という問いを、手を替え品を替え問い続けてきた道のりだった。寄せ集めだった4つの事業は、いまSiCという新市場と九州という新天地で、一つの武器へと束ねられようとしている。変化を生き物として捉え、AIさえも道具として飲み込みながら――。「ここならアイテス」を鮮明にし続けるその歩みは、これから

この記事で取り上げた分野では、現在も採用が活発です。以下は、semicon.todayの編集部が記事のテーマをもとに選定した求人情報です。広告・PRではありません
※採用状況により求人内容が更新される場合があります
応募前に。履歴書アップだけでマッチ度がわかる。
TOP
CLOSE
 
SEARCH