荏原製作所決算、精密・電子で受注回復――需要はアジアへ

SEMICON.TODAY
この記事を読むのにかかる時間: 7

荏原製作所は2026年2月13日、2025年12月期(2025年1月1日~12月31日)の決算短信(IFRS、連結)を公表した。売上収益は9,582.9億円、営業利益は1,138.0億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は766.3億円となった。2026年12月期の通期予想では、売上収益10,200.0億円、営業利益1,250.0億円を掲げた。

同社は建築・産業、エネルギー、インフラ、環境、精密・電子などのセグメントで事業を構成し、半導体関連は精密・電子が担う。精密・電子はCMP(Chemical Mechanical Polishing、化学機械研磨)装置とコンポーネントを中心に受注高と売上収益を拡大させた。決算説明会資料は市場環境として、CMPとコンポーネントの需要回復、生成AI向け需要を背景にした顧客工場稼働率の回復を挙げた。

本稿では。この荏原製作所の決算から同社の状況を分析する。

連結決算の要点:増収増益と株主還元の更新

2025年12月期は、売上収益9,582.9億円(前年同期比10.6%増)、営業利益1,138.0億円(同16.2%増)、税引前利益1,109.8億円(同11.1%増)となった。営業利益率は11.9%で、前期の11.3%から改善した。資産合計は10,822.0億円、資本合計は5,216.7億円で、親会社所有者帰属持分比率は47.0%だった。

キャッシュ・フローでは、営業活動によるキャッシュ・フローが407.6億円、投資活動によるキャッシュ・フローが912.3億円減、財務活動によるキャッシュ・フローが168.4億円となり、現金及び現金同等物の期末残高は1,434.9億円だった。

株主還元では、2025年12月31日を基準日とする期末配当を1株当たり31円(従来予想28円)とし、中間配当28円と合わせた年間配当は59円とした。加えて、自己株式5,000,000株(2026年1月31日時点の発行済株式総数に対する比率1.08%)の消却を決議し、消却予定日は2026年2月27日とした。なお、前期は2024年7月に株式分割が行われており、配当の単純比較では分割影響の扱いに留意が必要となる。

精密・電子の実績:受注3,034億円、売上収益3,422億円

精密・電子の2025年12月期(通期)業績は、受注高3,034億円、売上収益3,422億円、営業利益577億円となった。前期(2024年12月期)通期は、受注高2,600億円、売上収益2,783億円、営業利益501億円で、受注・売上ともに増加した。精密・電子の売上収益3,422億円は連結売上収益の約36%に相当する。

製品別では、CMP装置の受注高が1,813億円、売上収益が2,126億円となり、コンポーネント(受注高1,096億円、売上収益1,149億円)を上回った。決算説明会資料は、CMPとコンポーネントの需要回復により、製品とサービス&サポート(S&S)が増加したと整理した。S&S比率は2025年12月期に54%(前期48%)と示され、装置納入後の保守・部品・改造などが売上の大きな部分を占める。地域別では国内4%、海外96%とされ、精密・電子の業績が海外の投資計画と装置稼働に連動する構図が明確になっている。

一方、受注残高(期末時点)は精密・電子が前期1,879億円から当期1,515億円へ減少した。売上収益が増加していることから、期中の納入・検収の進捗が受注残を押し下げた側面が大きいとみられる。加えて、会社側はCMP受注について「第4四半期に案件が集中し、年間を通して準備してきた案件が確定した」と説明しており、期末残高は四半期の確度・確定タイミングの影響を受けやすい。

決算説明会の質疑応答では、CMPの受注動向として、前年第3四半期の受注高331億円から第4四半期の685億円へ増加した点が取り上げられた。会社側は受注が伸びた地域はアジアが中心だと述べ、ロジックに加え、下期にメモリの受注が増えた結果として第4四半期に積み上がったとした。中国比率については、精密・電子全体の受注・売上に占める比率が「約3割弱の水準」と述べ、翌年度も同程度を見込むとした。

また、会社側は2025年から2026年にかけて、ロジック、メモリ双方の投資進展と微細化の進行を背景に、CMP工程数が増え、同社が強みとするメタル層向けCMPプロセスの割合も増えていると説明している。

2026年12月期の見通し:売上収益10,200億円計画と精密・電子の上方成長

2026年12月期の連結業績予想は、売上収益10,200.0億円(前期比6.4%増)、営業利益1,250.0億円(同9.8%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益866.0億円(同13.0%増)を示した。第2四半期(累計)では売上収益4,780億円、営業利益505億円を計画している。

事業別の見通しでは、精密・電子の売上収益を2026年12月期通期4,000億円(第2四半期累計1,800億円)とし、営業利益は通期735億円(第2四半期累計280億円)を予想した。受注高は通期4,050億円(第2四半期累計1,900億円)を掲げ、製品別ではCMP装置の受注高通期2,700億円、売上収益通期2,670億円、コンポーネントは受注高通期1,220億円、売上収益通期1,210億円とした。

投資指標では、資本的支出は2025年12月期1,007億円、2026年12月期計画990億円で、精密・電子の内訳は2025年12月期340億円、2026年12月期計画180億円となった。減価償却費は2025年12月期348億円、2026年12月期計画420億円で、精密・電子は99億円から120億円へ増加計画となっている。研究開発費は2025年12月期232億円、2026年12月期計画250億円で、精密・電子は120億円から110億円へと示された。

精密・電子の生産キャパシティに関して、決算説明会の質疑応答では、熊本K3工場を2025年に竣工し、2030年までの需要は現体制で賄えるとの見通しを示した。急激なフォーキャスト上方修正の勢いは注視しつつ、中期経営計画の期間内で必要な追加投資があれば判断するとしている。

装置市場の外部環境:需要の分散と輸出管理の更新

装置市場の外部環境では、SEMIが2025年7月に公表した中期見通しとして、半導体製造装置(OEMベース)の世界売上が2025年に1,255億米ドル(前年比7.4%増)、2026年に1,381億米ドルへ拡大するとした。うち前工程のWFE(Wafer Fab Equipment)は2025年1,108億米ドル、2026年1,221億米ドルとされ、AI需要と先端技術移行が成長要因に挙げられた。

国内関連では、SEAJ(日本半導体製造装置協会)が2026年1月に公表した予測で、日本製半導体製造装置の販売額を2025年度4.91兆円(前年度比3%増)、2026年度5.50兆円(同12%増)とした。背景として、台湾ファウンドリの2nm投資や、HBMを中心とするDRAM投資を挙げている。日本国内市場向けの販売についても、2025年度1.31兆円、2026年度1.38兆円とした。

荏原製作所の地域別売上収益(売上先所在地別)では、中国が2024年12月期1,902億円(構成比21.9%)から2025年12月期1,811億円(同18.9%)に減少した一方、台湾・韓国・その他アジアが1,291億円(同14.9%)から1,935億円(同20.2%)へ増加した。売上の分布は、顧客の投資計画が中国一極ではなく、台湾・韓国などを含む複数地域へ分散していることを示唆する。

規制面では、経済産業省が2025年3月に外為法に基づく輸出管理のリスト改正(重要・新興品目等)を公布し、2025年5月28日に施行した。米国では米商務省産業安全保障局(BIS)が2026年1月13日、特定の先端計算向け半導体の対中輸出について、一定の要件を満たす場合にライセンス審査をケースバイケースとする方針を公表した。装置メーカーにとっては、需要の地域分散に加えて、輸出管理の更新を織り込んだ契約・出荷・技術提供の運用が、事業運営の条件として重なる局面となる。

決算が示す「受注回復」と供給条件

2026年2月13日に公表された荏原製作所の2025年12月期決算は、連結で増収増益となり、精密・電子で受注高3,034億円、売上収益3,422億円と受注・売上の回復を示した。S&S比率が54%まで上昇し、稼働・保守を含むストック型の比重も確認された。地域別売上収益(売上先所在地別)では、中国比率が低下する一方、台湾・韓国・その他アジアが拡大し、需要が複数地域へ分散する構図が浮かぶ。2026年12月期は精密・電子の売上4,000億円を見込み、熊本K3竣工によるキャパシティを2030年までの需要に充てる見通しを示した。外部環境では装置市場の拡大見通しが示される一方、輸出管理の更新が重なり、地域分散と規制対応が装置ビジネスの前提条件となる。

*この記事は以下のサイトを参考に執筆しました。

参考リンク

この記事で取り上げた分野では、現在も採用が活発です。以下は、semicon.todayの編集部が記事のテーマをもとに選定した求人情報です。広告・PRではありません
※採用状況により求人内容が更新される場合があります
TOP
CLOSE
 
SEARCH