ルネサスエレクトロニクスは2026年2月5日、2025年12月期(通期)の決算を公表した。Non-GAAPベースの売上収益は1兆3,185億円、売上総利益率57.6%、営業利益率29.3%と高水準を維持した。一方、IFRSベースでは親会社所有者に帰属する当期損失が518億円となり、同社がNon-GAAPで調整対象とする買収関連の無形資産償却やPPA調整、株式報酬費用等の影響が、利益の見え方を分けた。
同日、2026年1~3月期(1Q26)の見通し(Non-GAAP)として、売上収益3,675億~3,825億円(中央値3,750億円)、売上総利益率58.5%、営業利益率32.0%を提示し、為替前提も開示した。さらに、タイミング事業の発信器メーカーSiTime Corporationへの譲渡について最終契約締結を発表した。決算・需給(稼働率/在庫)・ポートフォリオ再編が同一タイムラインに重なった点が、今回の読みどころとなる。
利益率は維持、ただし車載用は減速

通期のNon-GAAP(企業が独自に算出した財務指標)売上収益は前年比で2.2%減(1兆3,185億円)と小幅な減収だったが、粗利率57.6%(前年比1.6pt増)、営業利益率29.3%(同0.2pt減)と利益率は高位を維持した。減収局面でも利益率を守ったこと自体は、短期のコスト構造とミックス管理が効いたことを示す。
ただし、セグメント別には濃淡がある。車載向けのNon-GAAP売上収益は6,397億円(前年比9.0%減)と減少した一方、Industrial/Infrastructure/IoT(I/I/I)は6,718億円(同5.5%増)と伸長した。車載比率が高い同社にとって、車載の弱含みが「数量の伸び」に直結しにくい局面であることが数字として表れた。
地域別(顧客所在地別)の外部顧客向け売上収益(IFRS注記)では、2025年通期に中国が増加する一方、日本・欧州・北米が減少し、アジア(日本・中国除く)は概ね横ばい圏となった。最終市場の循環だけでなく、地域×用途の偏りが、そのまま売上構造に影響している。
AI主導の拡大と「自動車用途の弱さ」が同居

世界市場の見通しは拡大基調だが、伸びの源泉は明確に偏っている。WSTSは2025年の世界半導体市場を7,722億ドル(前年比22.5%増)、2026年を9,755億ドル(同26.3%増)と予測し、上方修正の主因をAI関連アプリケーションとコンピューティング/データセンター需要に置いた。品目別でもロジックとメモリが伸びを主導し、ディスクリートは「自動車用途の弱さ」を背景に小幅減と整理している。
同じ構図はGartnerの統計でも強調される。Gartnerは2025年の世界半導体売上を7,930億ドル(前年比21%増)とし、AI関連(プロセッサ、HBM、ネットワーク等)が市場成長を押し上げたと説明した。さらに、AIインフラ投資が2026年に1.3兆ドル超へ拡大する見通しにも触れている。
ルネサスの決算に当てはめれば、車載(MCU/SoC、アナログ、パワー等)で減速の影響を受けやすい一方、I/I/Iはインフラ(通信、サーバ周辺、電源など)を含むため、AI・データセンター投資の波及を受け得る構造にある。通期で「車載が減り、I/I/Iが伸びた」という断面は、世界統計が示す“AI主導で伸びる領域”と“自動車用途の弱さが残る領域”の同居と整合する。
「需要予測」だけでなく「供給設計」へ軸足が移る

決算説明(2026年2月5日開催のカンファレンスコール要旨)では、需給局面を映す運用指標が具体的に示された。まず社内在庫(DOI:在庫日数)は、2025年10~12月期末で117日と説明された。加えて、DOIターゲットを従来の120日から150日に引き上げる方針を明示し、その理由として「AIやデータセンター周辺で需要が増加していること」と「サプライチェーンリスクを踏まえたバッファ確保(完成品・ダイバンク・リスク対象となり得る原材料の確保)」を挙げた。
販売チャネル在庫についても、2025年10~12月期末で7.5週(WOI)とし、2026年1~3月期は在庫水準の引き上げを計画すると述べている。需要が強い局面ほど供給制約や部材リスクが顕在化しやすいという前提に立ち、在庫を「効率」だけでなく「供給可能性(止めない・途切れない)」のために設計し直す意図が読み取れる。
稼働率については、2025年10~12月期は「50%近辺」、2026年1~3月期は「50%超」を見込むと説明した。見通し(1Q26)の中央値3,750億円、営業利益率32.0%というガイダンスは、数量回復を前提にしつつも、稼働率・在庫・チャネルの同時最適で利益率を守る設計思想が前面に出た形となる。
ポートフォリオを「組み込み中核」に寄せる再定義

ルネサスは2026年2月5日、連結子会社が保有するタイミング事業をSiTimeへ譲渡すると発表した。譲渡価額は30億ドルで、決済は現金15億ドルとSiTime普通株式413万株の組み合わせとした。譲渡実行は関係当局の承認等を経て2026年末までの完了を見込む。会社側は、2026年12月期に約15億米ドルの一時利益を計上する可能性にも言及した(時期・金額は未確定)。
決算説明の中では、タイミング事業(主にクロック)が、MEMSタイミングの技術潮流を踏まえるとSiTimeの下で成長させるのが合理的だとの説明があり、譲渡は「売却で終わり」ではなく、株式対価も通じて将来の成長果実を取り込む設計だと位置づけた。加えて、SiTimeのMEMS共振器を同社のMCU/SoCへ統合する可能性を検討する基本合意書でも触れた。
タイミングは幅広い市場で使われる“横串”製品である一方、同社が掲げる「組み込みコンピュート×アナログ×電源×接続」の束(Winning Combinations)を中核に置くなら、資源配分の優先順位をより鮮明にする必要がある。需要が二極化する環境では、成長市場で“どの部位を押さえるか”が収益力を左右する。今回の譲渡は、保有と拡張ではなく、提携・統合を含む形で中核領域へ寄せる、ポートフォリオ再定義の一手となった。
2026年の焦点は「需要予測」より「供給設計」と「資源配分」
ルネサスの2025年12月期決算は、利益率を維持しながら、車載の減速とI/I/Iの伸びという“需要の二極化”を数字で示した。WSTSやGartnerの統計が描くように、世界市場はAI・データセンター投資を軸に拡大が見込まれる一方、自動車用途の弱さもなお残る。
こうした環境下で、DOIターゲットの150日への引き上げ、チャネル在庫の積み増し方針、稼働率を50%近辺から段階的に引き上げる計画は、単なる調整ではなく「供給可能性」を競争力に組み込む運用へ重心を移した動きといえる。さらに、タイミング事業の譲渡は、事業の選別と提携を組み合わせ、資源配分を“組み込み中核”へ寄せる再定義でもある。
2026年は、(1)車載需要の底入れと回復速度、(2)AIインフラ周辺(電源・接続・インフラ用途)での取り込み、(3)在庫・稼働・投資のバランスが利益率とキャッシュ創出にどう反映されるか、の3点が焦点となる。
*この記事は以下のサイトを参考に執筆しました。
参考リンク
- 2025年12月期 決算概要 | Renesas ルネサス
- Renesas Reports Financial Results for the Year Ended December 31, 2025(PDF)
- 4Q/Full-year Ended December 31, 2025 Conference Call Presentation and Question & Answer Summary(PDF)
- 2025 Full Year Presentation Material(PDF)
- Consolidated forecasts for the three months ending March 31, 2026(PDF)
- 当社連結子会社による事業譲渡に関するお知らせ(タイミング事業の譲渡)
- WSTS News Release: Global Semiconductor Market Approaches $1T in 2026
- Global Semiconductor Market Approaches USD 1 Trillion in 2026 – Press Release – Autumn FC 2025(PDF)
- Gartner Says Worldwide Semiconductor Revenue Grew 21% in 2025
- 2026 Semiconductor Industry Outlook | Deloitte Insights
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