2026年2月11日から13日まで韓国・ソウルで、半導体の製造装置、材料、検査、実装、関連ソフトウェアまでを対象とする国際展示会「SEMICON KOREA 2026」が開催される。会場はCOEXコンベンションセンターである。
半導体市場は、生成AIの普及を背景に需要の重心がデータセンターへ寄り、性能競争と同時に供給網の設計が問われる局面に入っている。調査会社ガートナーは2025年の世界半導体売上高を7,930億米ドル(前年比21%増)とし、AIインフラ需要が成長を押し上げたと報じた。AI関連の投資は、設計・製造の両面で「どの工程が制約になるか」を早期に顕在化させる。
本稿では今回のSEMICON KOREA 2026で、その制約条件を装置・材料・プロセスの観点からどのように見て取れるかを、予想する。
過去最大規模の開催と存在意義の変化

SEMICON KOREAは、韓国の半導体産業の世界における存在感を背景に、年々存在感を強めてきた。今回も出展社の拡大が見込まれ、AI投資の実装局面に合わせて、装置・材料側の提案が前面に出る構図が鮮明になりそうだ。
注目すべきは、展示会の存在意義が単なる「名刺交換の場」から、より実務寄りの「技術・調達条件の確認の場」へと比重を移している点である。AI向け需要は、前工程のキャパシティだけでなく、先端パッケージング、検査、真空・流体など周辺インフラのボトルネックを通じて供給能力をも左右する。結果として、展示会で問われる論点は、製品スペックの優劣というより、その製品の供給能力の高低を問われることになる。
また、日本企業の参加表明が相次いでいる。ニコンは出展を告知し、露光装置から検査装置、レーザー加工機まで半導体関連ビジネスを集約して展示するとしている。大阪真空機器製作所も出展を告知し、成膜・エッチングなどで不可欠とされる高流量の真空機器を中心に紹介するとしている。微粒子計測器のリオンも出展を告知している。装置・計測・真空といった「工程を止めない部材」の存在感が増すことを、出展構成自体が示している。
AI半導体とHBMが引き出す「製造と実装」の争点

展示の内容は、AI向け半導体の需要増を受けた製造・実装についてのものが多い。
市場はAIアクセラレーターやデータセンター向けの高性能プロセッサが牽引する一方、性能を引き出す鍵としてメモリ帯域の確保が不可欠になっている。ここで重要度が増しているのが、HBM(High Bandwidth Memory)である。
HBMは、複数のDRAMダイを縦方向に積層し、広いデータバスで接続することで、従来のDRAMより高い帯域を実現する。生成AIでは、計算そのものだけでなく、モデルのパラメータや中間データの移動が性能と電力に直結するため、HBMの供給能力と品質が、システム全体の競争力を左右する。
このとき重要になるのは、メモリ単体の性能だけではない。積層・接続・封止を含む実装工程、さらには歩留まり管理、検査・計測の仕組みが同時に問われる。すなわち、AI需要は「製造工程のどこが律速になるか」を工程単位で可視化するとも言えるのである。SEMICON KOREA 2026では、HBMや先端パッケージングに関係する装置・材料・検査の提案を同じフロアで見ることができるため、サプライチェーンの制約が技術課題として整理しやすくなるだろう。
性能競争より「量産条件」の共有を問うカンファレンス

SEMICON KOREAでは、展示に加えて各種フォーラムや技術セッションが併設される。ここで扱われるテーマは、単なる新製品紹介ではなく、量産へいたる条件をどこまで煮詰めているか、ということだ。
この意味で、装置・材料の展示とカンファレンスが、同じタイミングで行われること自体に価値があると言える。設計が求める性能要求が、製造にとってどの変数として現れるかを、同一の場で照合できるからだ。技術的な論点が「次の世代の夢」ではなく「来期の量産条件」へ寄っているかどうかは、展示会の温度感で読み取れるだろう。
SEMICON JAPAN 2025との比較で見る両展示会の役割分担

SEMICON KOREA 2026をより深く理解するために、直前に開催された「SEMICON JAPAN 2025」との比較で見てみよう。
両展示会は同じSEMI主催でありながら、扱われる論点や展示の重心には明確な違いがある。SEMICON JAPAN 2025は、2025年12月に東京ビッグサイトで開催され、日本国内の装置・材料・部材メーカーの技術力を広く示す場となった。展示の中心には、成膜、洗浄、検査、材料、後工程装置など、工程単位での完成度や信頼性を訴求する展示が多く並んだ。とりわけ、量産現場での安定稼働、省エネルギー、保守性といった「製造の継続性」に関する提案が目立ったのが特徴である。
一方、SEMICON KOREA 2026では、同じ装置・材料分野であっても、視点が「どの工程が供給能力を規定しているか」に寄る傾向が強い。AI向け需要の急拡大により、HBMや先端パッケージングを含む一部工程に負荷が集中しており、その制約条件をいかに解消するかが展示や議論の前提となる。
言い換えれば、SEMICON JAPAN 2025が「各工程をどこまで高い完成度で支えられるか」を示す場であったのに対し、SEMICON KOREA 2026は「供給網全体の中で、どの工程が次の制約になるのか」を点検する色合いが強い。展示の並びや来場者の関心も、単一装置の性能より、工程間のつながりや量産条件に向きやすい。
日本企業の動きも、この違いを補完する形になっている。SEMICON JAPAN 2025では国内顧客や既存ライン向けの提案が多く見られたのに対し、SEMICON KOREA 2026では、ニコン、大阪真空機器製作所、リオンといった企業が、韓国やグローバル市場を前提に、自社技術が「どの工程の制約解消に寄与するか」を示す展示構成を取っている。
両展示会は競合関係にあるというより、役割が分かれていると捉えるのが適切である。SEMICON JAPANは工程技術の厚みと信頼性を確認する場であり、SEMICON KOREAはその工程が世界の供給網の中でどの位置に置かれているかを確認する場である。2025年末から2026年初頭にかけて両方を見比べることで、技術と市場の距離感がより立体的に見えてくる。
政策・供給網の再設計が、技術選択を左右する

半導体の供給網は、需要の増減だけでなく、政策と地政学の影響を強く受ける。韓国政府は2025年に半導体分野の支援策(支援パッケージ拡充)を公表し、戦略産業として後押しする姿勢を明確にした。こうした政策環境は、設備投資のスピードと、国内での量産・研究開発の厚みを左右する。
AI向け需要は、供給網の「偏り」を拡大しやすい。特定の装置・材料・工程に需要が集中すると、納期・在庫・保守体制が、製品競争力と同じくらい重要になる。展示会はその歪みを映す鏡でもある。どの領域に人が集まり、どの領域の提案が増えているかを観察すると、供給網の制約がどこに移ったかが分かる。
加えて、調査会社オムディアは2026年に半導体売上高が初めて1兆米ドルを超えるとする見通しを示している。市場規模が拡大する局面では、価格や数量の変動だけでなく、供給網の設計が競争力を規定しやすい。SEMICON KOREA 2026は、その設計条件が「技術の言葉」で議論される場になる。
調達条件の再設計を、技術と市場の両面から考察できる場に

SEMICON KOREA 2026は、生成AIを起点とする需要構造の変化が、製造装置・材料・検査・実装へどのように波及しているかを同時に確認できる機会となる。
AI向け需要は、演算性能の向上と引き換えに、電力・熱・実装・検査といった“製造側の条件”を厳しくし、工程のどこが供給能力を決めるかを明確にする。この結果、競争軸は「高性能なチップを作れるか」から、「高性能を量産で維持できるか」へ比重を移している。
HBMを含むメモリと先端パッケージングは、その象徴であり、装置・材料・計測の存在感が増すのは必然である。実際に、日本企業でもニコンや大阪真空機器製作所、リオンが出展を告知しており、工程を支える領域が国境を越えて調達・比較される局面が進んでいる。
市場側では、ガートナーが2025年の世界半導体売上高を7,930億米ドルとし、AIインフラ需要が成長を牽引したと説明した。オムディアは2026年に1兆米ドル超を見込んでいる。
規模拡大が続く局面では、製品戦略と同じ重みで、供給網・保守・調達条件を設計し直す必要がある。SEMICON KOREA 2026は、その設計を技術と市場の両面から考察できる場となるだろう。
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