WSTS春季予測、世界半導体市場は2026年に1.5兆ドルーAI投資がメモリとロジックを押し上げ、市場の成長軸が鮮明に

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世界半導体市場の成長見通しが、再び大きく上方に振れた

Close-up of a motherboard with a central processor displaying a world map graphic.

WSTS日本協議会が2026年6月2日に公表した「2026年春季半導体市場予測」によると、2026年の世界半導体市場は前年比89.9%増の1兆5,112億ドルとなる見通しだ。2025年の市場規模は前年比26.2%増の7,956億ドルであり、2026年はそこから一気に1.5兆ドル台へ拡大する予測となった。

今回の予測で最も重要なのは、成長の中心が明確にメモリとロジックへ集中している点である。AI利用の拡大に伴い、大手IT企業によるデータセンター投資が続き、AIサーバー向けのメモリ、GPUを含むロジック、さらに汎用サーバーの更新需要に伴うMPUが市場を押し上げる形となった。

一方で、すべての用途向けが同じ勢いで回復しているわけではない。WSTSは、産業用途では需要回復を織り込む一方、スマートフォンなど個人向け電子機器は、部品不足やインフレの影響を受けやすく、低調になると見ている。半導体市場は全面的な均一成長ではなく、AIインフラを中心とした選別的な高成長局面に入っている。

ここでは、WSTSの予測を解説する。

注目すべきは2026年の伸び率。2026年には1.5兆ドルへ

Person in a gray shirt holds a large blue arrow pointing up, surrounded by small blue and yellow arrows, with '2026' on the chest, symbolizing growth toward 2026.

前述のようにWSTSによると、2025年の世界半導体市場は7,956億ドル、前年比26.2%増となった。2024年も前年比19.7%増であり、2023年の調整局面から市場はすでに回復軌道へ入っていた。

ただし、今回の春季予測で注目すべきは2026年の伸び率である。2026年の世界市場は1兆5,112億ドル、前年比89.9%増と予測された。さらに2027年も1兆9,137億ドル、前年比26.6%増とされ、高水準の成長が続く見通しである。

WSTSは、2026年3月までの実績が2025年12月発表の前回予測時点の想定を大幅に上回ったと説明している。そのため、2026年の市場規模は前回予測から5,300億ドル以上の大幅な上方修正となった。

この修正幅は、単なる景気循環の回復ととらえるには大きすぎる。AIサーバー、アクセラレーテッドコンピューティング、高帯域メモリ、データセンター向けロジックなど、特定用途に需要が集中し、市場全体の規模感を押し上げているからだ。

主役のメモリは前年比249.5%増に

Young businessman in a suit looking upward beside glass office buildings, suggesting ambition or opportunity.

製品別で最も大きな変化を示したのはメモリである。この予測では、メモリ市場は2025年の2,300億ドルから、2026年には8,039億ドルへ拡大する。前年比は249.5%増であり、今回予測全体の伸びを決定づける最大要因となった。2027年も1兆621億ドル、前年比32.1%増で、メモリ単体で1兆ドルを超える市場規模が見込まれている。

この伸びは、AIサーバー向けメモリ需要の拡大を強く反映している。生成AIや大規模言語モデルの運用では、演算性能だけでなく、GPUやAIアクセラレーターに接続されるメモリ帯域と容量がボトルネックになりやすい。HBMに代表される高付加価値メモリの需要拡大が、メモリ市場全体の金額成長を押し上げている。

技術者目線で見れば、この数字は単なる市況回復にとどまらない。メモリは、かつての汎用品サイクルから、AIシステムの性能を左右する戦略部品へと位置付けを変えているのである。メモリメーカーだけでなく、材料、前工程装置、後工程装置、検査、先端パッケージ、熱設計に関わる企業にとっても、このように需要の質が変わっている点が重要である。

ロジックも高成長、GPUとサーバー投資がけん引

'Action' text with a red upward arrow suggesting growth and momentum against a blue motion-blur background.

メモリに次いで市場を押し上げているのがロジックである。予測では、ロジック市場は2025年の2,995億ドルから、2026年には前年比37.3%増の4,114億ドルへ拡大する。2027年も5,228億ドル、前年比27.1%増で、成長継続が見込まれている。

このようなロジックの伸びは、GPUを含むAIサーバー向け半導体の需要拡大と強く結びついている。データセンター投資が継続するなか、AIアクセラレーター、ネットワーク関連IC、サーバー向けプロセッサ、カスタムASICなどの需要がロジック市場を押し上げている。

また、WSTSは汎用サーバーもアップグレードサイクル(廃棄されるはずの製品に新たな価値を与えて再生すること)にあるとし、MPUの成長にも寄与すると見ている。マイクロ製品は2026年に1,017億ドル、前年比19.8%増、2027年には1,220億ドル、前年比20.0%増と予測している。

これは、AI市場をGPUだけで捉えると見落とされやすい点といえる。AIデータセンターでは、演算チップだけでなく、CPU、メモリ、ネットワーク、電源、周辺制御、センサ、冷却関連システムまでが一体で更新されるからだ。市場統計上はメモリとロジックの数字が目立つが、その裏側にはサーバー・データセンター全体の再投資サイクルがあるのである。

アナログ、ディスクリート、センサは回復基調だが伸びは限定的

Three-dimensional yellow curved arrow pointing to the right.

一方で、AI関連ほどの急拡大を示していない製品群もある。アナログ市場は2026年に前年比10.2%増の954億ドルと予測された。ディスクリートは前年比8.0%増の332億ドル、センサ&アクチュエーターは前年比3.0%増215億ドル、オプトエレクトロニクスは前年比2.7%増の442億ドルである。

これらの製品群は、産業機器、自動車、民生機器、電源、制御、計測など幅広い用途に使われる。WSTSは産業用途の需要回復を織り込んでいるものの、成長率はメモリやロジックに比べて小さい。

この差は、半導体市場の二極化を示している。AIインフラ関連では投資が集中し、メモリやロジックの金額成長が急加速している。一方で、産業、自動車、民生向けの幅広い半導体は、在庫調整や最終需要の回復ペースに左右されやすい。

技術者や事業企画担当者にとって重要なのは、「半導体市場が成長している」という一言で全領域を同じように捉えないことである。AI関連では供給能力、先端プロセス、先端パッケージ、HBM対応が焦点になる一方、アナログやディスクリートでは、品質、長期供給、コスト、産業・車載向けの堅牢性が引き続き競争軸となる。

地域別では米州とアジア太平洋が大きく伸長

American flag waving in warm sunlight, red and white stripes visible in the breeze

地域別では、米州とアジア太平洋の伸びが目立つ。予測では、米州は2026年に前年比112.0%増の5,437億ドルとなる。アジア太平洋は前年比87.4%増の8,239億ドル。欧州は前年比58.4%増の866億ドル、日本は前年比27.6%増の571億ドルとしている。

米州の大幅成長は、AI関連半導体需要やクラウドインフラ投資が集中していることを反映している。アジア太平洋は、半導体製造、メモリ、ファウンドリ、パッケージング、電子機器サプライチェーンの集積が大きく、市場規模でも引き続き最大地域である。

日本市場は、2025年にはドルベースで前年比4.3%減の447億ドルとなった。しかし、2026年には前年比27.6%増の571億ドルと回復が見込まれている。円ベースでは2026年には前年比33.9%増の8兆9,626億円としている。

※ここでは、為替前提として、2025年は1ドル149.7円、2026年以降は1ドル157.1円としている。

日本企業にとっては、世界市場の急拡大がそのまま国内市場の急拡大を意味するわけではない。むしろ、グローバルで伸びるAI関連需要に対し、日本企業が材料、装置、部材、計測、パッケージ、パワー、センサなど、どのレイヤーで接続できるかが焦点になる。

市場拡大の読み方は「AI一極」ではなく「構造変化」

Back view of a person in a dark sweater looking at a chalkboard filled with colorful light-bulb drawings deresigned as brainstorming sketches.

今回のWSTS春季予測は、世界半導体市場が2026年に1.5兆ドルを超えるという強い数字を示した。市場の押し上げ役は明確である。AIデータセンター投資を背景に、メモリとロジックが突出して伸びる。

ただし、この数字を「半導体市場全体が同じ速度で好況に入る」と簡単に捉えるのは危うい。メモリ、ロジック、MPUはAIインフラ投資の恩恵を強く受ける一方、アナログ、ディスクリート、センサ、オプトエレクトロニクスは回復基調ながら伸び率に差があるからだ。スマートフォンなど個人向け電子機器についても、WSTSは低調な見方を示しているのである。

どちらにせよWSTSの春季予測は、2026年の半導体市場を読むうえでの基準点になる。次に問われるのは、この成長がどの企業、どの工程、どの技術領域に落としこまれるかである。市場は大きくなる。しかし、その成長を享受できる企業は、AIインフラの要求仕様に上手く対応できる企業に限られるであろう。

用語解説

WSTS

World Semiconductor Trade Statisticsの略。世界の半導体メーカーが加盟する市場統計機関。半導体製品の販売額や販売数量を、製品別・地域別に同一基準で集計している。

メモリ

データを記憶する半導体。DRAM、NAND、HBMなどが含まれる。AIサーバーでは演算チップに大量のデータを高速に供給する必要があり、高帯域メモリの重要性が高まっている。

ロジック

演算や制御を担う半導体。CPU、GPU、AIアクセラレーター、ASICなどが含まれる。生成AIの普及により、データセンター向けGPUやカスタムチップの需要が市場を押し上げている。

MPU

Micro Processing Unitの略。コンピュータやサーバーで中心的な演算処理を担う半導体。WSTSは汎用サーバーの更新サイクルがMPU成長に寄与すると見ている。

AIサーバー

AIモデルの学習や推論に使われる高性能サーバー。GPU、HBM、CPU、ネットワークIC、電源、冷却機構などを組み合わせて構成され、半導体需要の新たな中心になっている。

参考リンク

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