この記事のポイント
- インドはIT人材を基盤に海外の大規模モデルを活用し、AI応用開発でイノベーションハブを目指す戦略をとっていた。
- 米国のAnthropic社が輸出規制を遵守し、海外ユーザーによる2つの新モデルへのアクセスを遮断したことで、この戦略の脆弱性が露呈した。
- インドではAI利用率が高いものの、先端チップや独自の大規模モデルの開発能力に乏しく、海外技術への依存度が高い。
- インド政府は半導体・AI開発計画やデータセンターへの税制優遇などで対応を進めているが、規模やスピードに課題が指摘されている。
- 算力確保の制限や深層技術への投資不足がインドAI開発の大きな障壁となっており、自主開発支援の強化を求める声が高まっている。
インドのAI戦略とその脆弱性
インドのAI戦略は、国内に豊富に存在するIT人材を活用し、海外で開発された大規模AIモデルを基盤として、様々な応用開発を通じてAIイノベーションの中心地となることを目指す、というシンプルかつ大胆なものでした。
しかし、その壮大な構想の脆さが、先週、露呈しました。米国のAI企業であるAnthropic社が、米国政府の輸出規制命令を遵守する形で、海外ユーザーによる同社の2つの最新モデルへのアクセスを遮断したのです。
あるAI分野のベテラン関係者は、「海外政府の一声で、最先端モデルへのアクセスが一夜にして断ち切られてしまう。これが根本的な問題だ」と指摘しています。
高まるAI利用率と技術的依存
米国自動データ処理研究所が6月11日に発表した報告書によれば、インドの従業員の41%がほぼ毎日AIを利用しており、これは中国の26%、米国の19%を上回る高い利用率です。しかし、この高い利用率は、自国で開発・制御できるAIの全スタック(基盤モデルから応用まで)が不足している現状を反映しており、インドがいかに海外技術に高度に依存しているかを示しています。
インドは、国内で最先端の半導体を製造する能力を持たず、米国や中国のトップレベルの大規模モデルに匹敵する独自の大規模基盤モデルもまだ開発できていません。国内のデータセンターは急速に発展していますが、全体的な能力は依然として米中両国に大きく遅れをとっています。
政府の取り組みと専門家の懸念
インド政府は、半導体開発計画やAI開発計画の推進、そしてインド国内にデータセンターを新設するグローバルな超大規模クラウドサービスプロバイダーに対する税制優遇措置など、3つの側面からAI分野の整備を進めています。
しかし、業界専門家の中には、インド政府のこうした取り組みの規模が小さすぎ、かつ手遅れになる可能性が高いと指摘する声もあります。インドが直面している最大の課題は、AI開発に必要なコンピューティングリソース(算力)の入手経路が限られていることと、深層技術への投資資金が不足していることです。
自主AI開発への期待
こうした状況を受け、インド国内では、政府が自主的なAIシステムの開発・研究を支援するために、より一層の投資を拡大すべきだという呼びかけが強まっています。
著名なベンチャーキャピタリストでありエンジェル投資家でもあるMohandas Pai氏は、モディ首相に対し、新たなAI開発計画の立ち上げを強く求めています。同氏は、現行の政府プロジェクトは「進展が遅く、影響を生み出すには力が弱すぎる」と批判しています。
出典: 元記事を読む
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