調査会社Gartner(ガートナー)は2026年1月12日、2025年の世界半導体売上高が7,934億4,900万米ドル(前年比21.0%増)に達し、サプライヤランキングでNVIDIA(エヌビディア)が首位になったと発表した。あわせて、AI半導体(プロセッサ、HBM、ネットワーキング部品を含む)の売上が市場成長の中心になったと報じた。
本稿では、同統計が示す「供給制約が利益と売上計上に直結する箇所」を、(1)HBM(2)先端パッケージと先端ロジックの製造集中(3)輸出管理と操業継続性、の3点に分けて考察する。
2026年初の勢力図:売上高世界トップのエヌビディアと「AI半導体の一体化」

ガートナーの集計では、2025年の半導体売上高でエヌビディアは1,257億米ドル(市場シェア15.8%)とされ、以下Samsung Electronics(サムスン電子)(725億米ドル、9.1%)、SK hynix(SKハイニックス)(606億米ドル、7.6%)、Intel(インテル)(479億米ドル、6.0%)が続いた。市場規模の拡大と同時に、上位の構成が「AI向け計算基盤の供給能力」を色濃く反映する形になった。
象徴的なのが、AI半導体の定義が「演算器だけ」でなく、メモリ帯域とネットワークまで含む“一式”として扱われている点である。ガートナーは、AI半導体(プロセッサ、HBM、ネットワーキング部品を含む)が2025年の総売上の約3分の1に達したと説明し、AIプロセッサの売上が2,000億米ドルを超えたことも示した。
この「一体化」は、ボトルネックの位置を明確にする。AI学習・推論はメモリ帯域に強く制約されるため、HBMの供給量がGPUの出荷計画と結びつく。実際、ガートナーはHBMが2025年にDRAM市場の23%を占め、売上が300億米ドルを上回ったとした。統計が示すのは、チップ単体の競争から、演算・メモリ・ネットワークを束ねた供給能力の競争へ、評価軸が移っているという事実である。
HBMとNAND:供給体制整備が進む

HBMの逼迫は、企業決算と採用発表の両面から確認できる。SKハイニックスは、2025年7月23日、2025年第2四半期の売上高が22兆2,320億ウォン、営業利益が9兆2,129億ウォンになったと発表し、AI向けメモリ需要が業績を押し上げていると説明した。HBMは「高性能品の設計」よりも「量を揃えて出荷できるか」が問われやすく、供給能力が市場支配力に直結しやすい。
供給能力の争点化は、採用ニュースにも現れた。Micron Technology(マイクロンテクノロジー)は2025年6月12日、12層積層のHBM3E 36GB製品がAMDの次世代「Instinct MI350」シリーズに採用されたと発表した。発表文では、MI350シリーズが288GBのHBM3Eを統合し、最大8TB/sの帯域幅を示した点も記載されている。GPU単体の性能向上と並行して、メモリ帯域をどう確保するかが製品価値の中核に入っている。
NANDフラッシュでも、AI需要を意識した供給体制整備が進む。キオクシアとサンディスクは2025年9月29日、岩手県の北上工場で第2製造棟(Fab2、K2棟)の稼働開始を発表し、第8世代BiCS FLASH(218層)の生産能力を持つとした。発表は、免震性を意識した建屋構造や省エネ設備、AIを用いた生産効率化にも言及しており、増産局面の投資条件として「操業継続性」と「ユーティリティ効率」が織り込まれていることを示した。
先端ロジック:TSMCの先端比率上昇と製造拠点の集中

先端ロジック側では、量産の中心が限られた供給網へ集中することが数字で示された。TSMCは2026年1月15日、2025年第4四半期の連結売上高が1兆460億9,000万新台湾ドル、純利益が5,057億4,000万新台湾ドル、希薄化後1株当たり利益が19.50新台湾ドルと発表した。売上総利益率は62.3%だった。
同社は2025年10–12月期(4Q25)のウエハ売上高に占める3nm比率が28%、5nmが35%、7nmが14%で、7nm以下の先端技術が77%を占めた。前四半期(2025年7–9月期、3Q25)比では3nmが23%から28%へ5ポイント上昇し、先端技術比率も74%から77%へ3ポイント上昇した一方、5nmは37%から35%へ2ポイント低下し、7nmは14%で横ばいだった。
AI向けSoCやGPUで求められる高集積化が、先端ノードの稼働を押し上げる構造が見える。先端ノードはEUVを含む装置群、材料、プロセス統合、電力・用水、人材が同時に必要であり、どこか一つの制約が「供給量」の上限になる。
米国では、製造能力の確保がサプライチェーン設計と結びつく。インテルは2025年4月29日、Intel 18Aがリスク生産段階にあり、2025年に量産に到達する見込みだと発表した。また、HBM需要を意識した先端パッケージの拡充(例:EMIB-T)や、Foveros Directを用いたハイブリッドボンディング(5µm未満ピッチ)にも言及している。先端ロジックと先端実装は、別工程ではなく一体の供給能力として評価されやすい状況にある。
装置・操業リスク:設備があるだけでは供給できない

供給能力は、チップ設計やプロセスだけで決まらない。装置の供給・立ち上げ、規制、災害対応まで含めて初めて「出荷できる」。オランダの装置メーカーASMLは2025年10月15日、2025年第3四半期の総売上高が75億ユーロ、純利益が21億ユーロになったと発表した。受注面ではEUVを含む受注が示され、先端投資の強さが確認できる一方、装置は輸出管理の対象にもなり得る。ASMLは2025年7月16日の決算発表で、環境の不確実性に触れ、2026年の成長を現時点で確約できないとの姿勢を示している。
操業リスクの側面では、自然災害が供給の前提条件になる。ルネサスエレクトロニクスは2025年11月26日、熊本県阿蘇地方を震源とする地震発生後、川尻工場・錦工場・大分工場の建屋や用役、生産設備に被害は見られず操業を継続していると公表した。一部設備停止があったが、生産への影響はないとしている。
輸出管理(地政学)と自然災害(地学)は、いずれも「設備があるだけでは供給できない」ことを示す。2026年初の競争は、性能とコストに加え、規制対応・装置供給・操業継続・供給地域設計を同時に満たす体制差として現れている。
競争の争点は「工程」ではなく「運用設計」に移った

今回のエヌビディアの売上高トップは同時に、AI半導体が「プロセッサ+HBM+ネットワーク」という軸で評価され、供給の弱点がチップ性能ではなく“供給の成立条件”へ移っていることも示した。
今後問われるのは①必要数量を確保できるか(HBM配分と先端実装の収容力)②許可の取れる地域に届けられるか(輸出管理とSKU運用)③止めずに作り続けられるか(装置・用役・災害対応)である。
競争の焦点は、技術優劣よりも、規制・契約・BCPを織り込んだ供給設計の成熟度として表面化し始めたのである。
*この記事は以下のサイトを参考に執筆しました。
参考リンク
- Gartner Says Worldwide Semiconductor Revenue Grew 21% in 2025
- TSMC Reports Fourth Quarter EPS of NT$19.50
- NVIDIA Announces Financial Results for Second Quarter Fiscal 2026
- NVIDIA Announces Financial Results for First Quarter Fiscal 2026
- NVIDIA CEO Jensen Huang Promotes AI in Washington, DC and China
- AMD Unveils Vision for an Open AI Ecosystem
- マイクロンのHBM、AMDの先進AIプラットフォームに採用
- Kioxia and Sandisk Announce Beginning of Operation of Fab2 at Kitakami Plant, Japan
- ASML reports €7.5 billion total net sales and €2.1 billion net income in Q3 2025
- ASML reports €6.2 billion total net sales and €1.6 billion net income in Q2 2025
- 「熊本県阿蘇地方地震」による当社事業活動への影響について
- Intel Foundry Gathers Customers and Partners, Outlines Priorities
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