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【TSMC_3Q26_決算深堀記事】|SEMICON.TODAYー売上467億ドル

2026.10.15
この記事を読むのにかかる時間: 6 分

この会社は、他社が設計した半導体チップを請け負ってつくる“受託製造(ファウンドリー)”の専業最大手だ。顧客から設計図を受け取り、回路を描き込んだウエハーとして納める。2025年には534社の顧客に向けて1万2,682品目を製造した。
2026年の第3四半期(7〜9月)は、売上が前年より+41%の467億ドルと、会社の想定の上限を上回った。1株あたりの利益は+69%の29.43台湾ドル。背景は最先端の製造技術への強い需要だと会社は説明する。注目すべきは“伸びの中身”で、最先端の2ナノ世代が本格的に立ち上がり、ウエハー売上の8%を占めた。地域別では北米の比率が79%へ上がり、中国は5%に下がった。なお今回の開示資料に、次の四半期(10〜12月)の数値見通しは含まれていない。

かんたん解説:むずかしい言葉を最小限にして説明します。
●ファウンドリー=他社が設計したチップを請け負って製造する会社。
●ウエハー=チップを切り出す前の円盤。出荷は12インチ換算の枚数で数える。
●2ナノ・3ナノ=回路の細かさを表す世代名。数字が小さいほど最先端。
●高性能計算(HPC)=サーバーやパソコン向けの高性能な計算用チップ。
●粗利率=売上から製造原価を引いた利益の割合。新しい世代の立ち上げ初期は下がりやすい。
●金額=売上は「億ドル」、利益は「億台湾ドル」の概数で示す。会計基準は台湾IFRS。
売上(第3四半期)
467億ドル
前年比 +41%
前四半期比 +16%
1株利益
29.43台湾ドル
前年比 +69%
ADR換算 4.60ドル
粗利率
66.4%
前年 59.5%
前四半期 67.7%
2ナノの比率
8%
ウエハー売上に占める割合
前四半期 3%・前年 0%
フリーキャッシュフロー
4,766億台湾ドル
前年 1,394億台湾ドル
前四半期 2,874億台湾ドル

1. まず結論——最先端品が伸び、稼ぐ力も一段上がった

今回のTSMC決算は、売上の伸び率だけで読むと半分しか見えない。何が、誰に売れたのかに目を向けると、この会社の立ち位置の変化が浮かぶ。要点は3つだ。

①売上は会社の想定を超えた。 売上は467億ドルで、会社が前四半期に示した想定(446億〜458億ドル)の上限を上回った。営業利益率も58.7%と想定の上限(58%)を超え、台湾ドル建ての利益は1年で7割近く増えた。

②主役は最先端の2ナノと3ナノ。 2ナノはウエハー売上の8%まで育ち、3ナノと合わせると4割を超えた。出荷枚数は前年より1割増にとどまる一方、売上は台湾ドル建てで5割増。より高価な最先端品へ売れ筋が移ったことが分かる(編集部の見立て)。

③用途は高性能計算、顧客は北米へ集中。 売上の68%を高性能計算(HPC)が、79%を北米の顧客が占め、どちらも前年から比率が上がった。成長が特定の用途と地域に集まる構図が、一段とはっきりした。

2. 会社全体の成績——想定を上回り、利益は売上以上に伸びた

売上は467億ドル(前年比+41%)、台湾ドル建てでは+51%の伸びだ。粗利率は66.4%と前年の59.5%から大きく上がり、営業利益率は58.7%に達した。純利益は7,631億台湾ドル(+69%)で、売上の半分以上が最終的な利益として残った。1株利益は米国上場のADR1単位あたりで4.60ドルだ。現金を生む力も強く、設備投資を差し引いたフリーキャッシュフローは4,766億台湾ドルと、前年の3倍を超えた(編集部算出)。手元の現金と有価証券は4兆台湾ドルを超えた。

図1:四半期の売上(棒)と1株あたり利益(線)。売上は会社の想定(点線)の上限を上回った。

3. 事業別——高性能計算が主役、スマホは脇役へ

TSMCは売上を用途別に開示している。最大の高性能計算(HPC)は売上の68%を占め、前年同期の57%から11ポイント上がった。前四半期比でも+22%と、全社の伸び(+18%)を上回る。一方、スマートフォン向けは30%→21%へ比率を落とした。ただ金額では前四半期比+10%と増えており、縮んだわけではない。HPCの伸びが速く、相対的に小さく見えるのだ。車載も前四半期比+23%と伸びたが、構成比は4%にとどまる。

図2:用途別の売上構成比(灰=前年同期、色=今期)。高性能計算が68%へ上がり、スマホは2割に。

4. 伸びの中身——最先端世代へ、売れ筋が一気に移った

この決算最大の論点は、回路の細かさ(世代)別の構成だ。最先端の2ナノは前年同期の0%から、前四半期3%、今期8%へと急速に立ち上がった。3ナノも23%→33%へ伸び、逆に5ナノは37%→28%、7ナノは14%→10%へ下がった。売れ筋が一段ずつ上の世代へ移っている。出荷枚数(12インチ換算)は前年より+10%なのに、売上は+51%。1枚あたりの売上は約4割上がった計算で(編集部算出)、最先端品ほど高く売れるこの会社の強みがよく表れている。

図3:世代別のウエハー売上構成。2ナノ(オレンジ)が0%→8%へ、3ナノ以下で4割を超えた。

5. 地域別——北米の顧客への集中が一段と進んだ

地域別(顧客の本社所在地ベース)では、北米が売上の79%を占め、前年同期の76%から上がった。アジア太平洋は9%→10%、日本と欧州・中東・アフリカは3%前後で大きな変化はない。中国は8%→5%へ下がった。ただしこれは構成比の話で、全体の売上が5割伸びるなかでの比率低下だ。中国向けの金額の目減りは、比率の下がり方ほど大きくない(編集部算出)。成長分のほとんどが北米に向かった、と読むのが正確だろう。

図4:地域別の売上構成比。北米が79%へ上がり、中国は8%→5%へ。成長分は北米に向かった。

「売上5割増」という見出しの内側で起きているのは、売れ筋の世代交代だ。2ナノ・3ナノという最先端の製造技術に、高性能計算向けの需要が集まっている——その需要を受け止める工場が、TSMCにある。
ワンポイント=TSMCは、他社が設計したチップを代わりにつくる“半導体の受託工場”。チップが細かく高性能になるほど、この会社の出番も増える。

6. 数字を読むときの注意点

■ 台湾ドル安が伸びをかさ上げ:台湾ドル建ての売上は+51%、ドル建てでは+41%。1ドル29.91→31.98台湾ドルへ動いた為替の分だけ差が出る。

■ 前四半期には一時的な利益:前四半期は保有していた他社株(VIS)の売却・評価益が乗っていた。今期の純利益が前四半期比+8%にとどまるのはこのためだ。

■ 粗利率の低下は2ナノの立ち上げ:粗利率は前四半期比1.3ポイント低下。会社は2ナノの量産初期による利益率の希薄化が主因と説明する。

■ 財務諸表は未監査:今回の数値は台湾IFRSにもとづく連結の速報値で、監査前のものだ。

7. この先のシナリオ

今回の開示資料には、次の四半期の売上や利益率の数値見通しは含まれていない。そのうえで資料から読める方向は2つある。1つは2ナノの立ち上げだ。会社は粗利率の低下を量産初期の希薄化と説明しており、2ナノの比率が上がる局面では、利益率の重しがしばらく残りうる(編集部の見立て)。もう1つは投資の継続で、設備投資は今期138億ドル、年初からの累計で406億ドルに達した。在庫日数は82日と前四半期より5日短く、出荷の増加が在庫を吸収している。次の決算では、2ナノの比率と粗利率の組み合わせをまず確かめたい。

8. この先のチェックポイント

■ 2ナノの比率:8%からどこまで上がり、粗利率の希薄化がどの程度で収まるか。

■ 高性能計算の比率:7割の大台に乗り、スマホ向けとの差がさらに開くか。

■ 設備投資の累計:年初から406億ドル。年間でどこまで積み上がるか。

■ 新しい提携の具体化:ASMLとの次世代露光向け大型マスク、ソニーとの画像センサー合弁の進み具合。

9. 市場環境

半導体の需要の中心は、データセンター向けの計算用チップに移っている(編集部の見立て)。そうしたチップは最先端の製造技術を必要とし、今期のTSMCでは高性能計算向けと2ナノ・3ナノの比率がそろって上がった。一方、売上の8割近くが北米の顧客に集まる構図は、少数の大口顧客の投資計画に業績が左右されやすいことも意味する。9月にはASMLと、次世代の露光装置向けの大型フォトマスクへの移行に取り組むと発表した。数字の伸び以上に、“最先端をつくれる工場”という立ち位置の重みが増した四半期だ。

10. 主要データ

注:本文・カード・図は概数、表は一次資料の正確値。売上はドルと台湾ドルの両方で開示されており、本文では前年比をドル建て(+41%)と台湾ドル建て(+51%)で区別した。構成比は会社開示の整数値。1枚あたり売上や地域別金額の増減の推計は編集部算出。

11. 出典・ご注意

■ 出典:TSMC 2026年第3四半期の決算発表資料、説明会資料、マネジメントレポート、財務諸表(台湾IFRS・未監査)。

■ 見通しは会社の見込み:資料内の将来に関する記述は会社の見込みで、実際の結果は異なり得る。

本記事は公表資料にもとづく決算の解説で、投資を勧めるものではありません。金額は「億ドル」「億台湾ドル」へ概数換算しており、丸めにより合計が一致しない場合があります。中国比率の低下は売上構成比の変化であり、金額の減少幅を示すものではありません。今回の資料に次の四半期の数値見通しは含まれていません。投資の判断はご自身の責任でお願いします。

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