
半導体業界のトップたちは今、何を語り、どこへ足を運んでいるのか。その一挙手一投足を追いかけると、すばやく半導体の新しい潮流を把握することができる。本企画では、半導体の主要企業やメモリ企業のCEOなどトップたちの動向を追い、それが業界と読者にどんな示唆を与えるのかを読み解く。
今回は、Micron Technology|サンジェイ・メロートラ(Sanjay Mehrotra)会長兼CEO、SK hynix|クァク・ノジョン(Kwak Noh-Jung)社長兼CEO、そして、サムスン電子|チョン・ヨンヒョン(Jun Young-hyun)副会長・DS部門長の2026年9月の動きや発言をまとめる。
第2部|メモリ編
Micron Technology|サンジェイ・メロートラ(Sanjay Mehrotra)会長兼CEO
「AIはスーパーインテリジェンスになる」
【今月の主な動き】
- 9月30日:2026年度Q4・通期決算を発表。Q4売上高542.3億ドル(前四半期比+31%、前年同期比+379%、6四半期連続の過去最高)、非GAAP EPS 33.42ドルでガイダンス上限を全項目で超過。通期売上は1,331.9億ドルと前年度(373.8億ドル)の3.6倍、営業キャッシュフロー896.8億ドル、調整後FCF 623.1億ドル。
- データセンター売上は前年の11倍に拡大し、クラウドメモリ部門は売上162.8億ドル・粗利率83%。2027年度Q1ガイダンスはEPS約38ドルと、さらなる記録更新を見込む。
- メロートラ氏は「AIはスーパーインテリジェンス(SI)になりつつあり、メモリがその知能と顧客プラットフォームの競争力を高める」と表明。NVIDIAと「業界初のカスタムHBM実装」で協業中であることも明らかにした。
- 決算前後には、トランプ大統領主催のAI規制サミットやホワイトハウスの夕食会に出席。
| 【この動きが示唆するもの】 年間売上が1年で3.6倍、FCF 623億ドル——「メモリ=景気循環株」という評価体系はもはや通用しない。FY27の強気ガイダンスは、少なくとも向こう数四半期は需給が崩れないという経営側の見立ての表明だ。NVIDIAとの「業界初のカスタムHBM」協業は、メモリが標準品から顧客別設計品へ進化する転換点となる。カスタム化はベースダイ設計と先端パッケージの比重を高め、競争を「作れる量」から「設計で組み込まれる力」の勝負へ変えていく。ホワイトハウスへの出入りが常態化したことは、メモリが米半導体政策の中心議題に昇格した証左。 |
SK hynix|クァク・ノジョン(Kwak Noh-Jung)社長兼CEO

「完売が続く本業の次は『AIエコシステムを買う』フェーズへ」
【今月の主な動き】
- 9月18日:シリコンバレーでコーポレートベンチャーキャピタル「SK hynix Ventures」を設立。グローバルAIエコシステムへの出資・提携を本格化させる。
- 9月21日:「2026 Global Forum」を開催し、AI時代の技術ビジョンと将来戦略を提示。
- 市場環境では、NVIDIAのサーバー価格引き上げ報道などを背景に、2027年のHBM価格がさらに大きく上昇する可能性が報じられ、メモリ各社への追い風が続いた。
| 【この動きが示唆するもの】 8月のインディアナ起工・巨額還元に続き、9月は大型発表の谷間となったが、CVC設立は見逃せない。完売が続く本業の巨額キャッシュを、次のAIエコシステム(スタートアップ・周辺技術)の囲い込みに回し始めた——NVIDIAの出資戦略のメモリ版であり、「顧客と技術の未来に先回りして出資する」動きが業界全体に広がっている。静かな月は「打つべき手は打った」ことの表れでもある。Q3決算(10月末)で営業利益率70%台が維持されるか、そしてHBM価格の2027年交渉がどの水準で決着するかが、次の試金石になる。 |
サムスン電子|チョン・ヨンヒョン(Jun Young-hyun)副会長・DS部門長

「テキサスでTesla「AI5」の試作開始」
【今月の主な動き】
- 9月中旬:テキサス州テイラー工場で、Teslaの次世代自動運転チップ「AI5」の試作(2nmプロセス)を開始したと報道。当初想定より約2カ月の前倒しで、年内に量産検証を完了し、2027年から本格供給・同年半ばに量産拡大を目指す計画とされる。
- テイラーの2nm能力はTesla・Broadcom・Armの発注で埋まったと報じられ、1.4nmプロセスを担う第2工場(テイラー2)の建設も年内に開始する計画。
- 来月(10月)にはAMDのスーCEOがソウルの同社を訪問しチョン氏と会談する予定と報じられ、HBM4供給の拡大とファウンドリ受注の深耕が議題になる見通し。
| 【この動きが示唆するもの】 テイラーでの2nm試作開始は、「米国で最先端ロジックを量産する」競争における大きなマイルストーンだ。長年「顧客不在」と揶揄された工場が、Tesla・Broadcom・Armの発注で満杯になった逆転劇は、サムスンファウンドリの潮目の変化を象徴する。2nmの歩留まりが計画水準に達するかが、165億ドルのTesla契約と巨額投資の採算を決める。年末までに「量産検証完了」を宣言できるか——この一点が、ファウンドリ事業の黒字化シナリオの成否を分ける。メモリ(HBM4)・ファウンドリ(2nm)・先端パッケージの3正面で同時攻勢をかける総合力戦略は、AMDトップの訪問が示すように、調達側から「NVIDIA・TSMC一極依存のヘッジ先」として必要とされ始めた。 |
編集部の視点(まとめ)|
日本の読者への視点:2nm立ち上げ・HBM増産・後工程の米国展開が同時進行する現在、装置・部材のフル稼働は当面続く。加えてカスタムHBMの登場は、設計・後工程・材料の付加価値を押し上げる構造変化だ。来月はTSMCのQ3決算(10月15日)、スーCEO訪韓後のHBM供給網の再編、そして韓国メモリ2社のQ3決算に注目したい。
※本記事の事実関係は各社の公表情報・報道(2026年8〜9月時点)に基づく。示唆・見解の部分は編集部の分析である。
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