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SEMICON.TODAY 5 min · 2026.10.20

AMD Helion、NVIDIA一強に挑む“オープンAIラック”の現実味―Agentic AI時代に、AMDはラックスケールで勝負する

この記事を読むのにかかる時間: 5 分

AI半導体市場ではNVIDIAの存在感が圧倒的だ。AMDがこの市場で存在感を高めるには、GPU単体ではなく、システム全体で対抗軸を示す必要がある。AMDが2026年10月12日に発表した「AMD Helion」は、AIが自ら考えて動く「Agentic AI」向けに、OCP仕様をベースにしたラック単位の参照設計である。

この記事のポイント
■ AMDは2026年10月12日、Agentic AI向けのラックスケール基盤「AMD Helion」を発表した
■ HelionはOCPの仕様をベースにしたオープンな参照設計で、AMDはその仕様をOCPに提供する計画
■ CPUだけのラック(最大32,768コア)と、CPUとGPU(Instinct MI350P)を組み合わせたラックの構成を示した
■ 構成は2026年11月の提供開始を予定。Dell、HPE、Lenovo、Supermicroなどがパートナーとして名を連ねる
■ 実際の採用規模、性能、ソフトウェアの成熟度は今後の検証が必要である

Agentic AIは、GPUだけでなくCPUを大量に使う。AMDは、得意のサーバー向けCPU「EPYC」を軸に、業界標準の仕様で組める“AIラックの設計図”を示し、NVIDIAとは違う選択肢を顧客に提示した。

何が発表されたのか

AMDは10月12日、Agentic AI向けのラックスケール基盤「AMD Helion」を発表した。AMDはHelionを「Agentic AIインフラのオープンなブループリント(設計図)」と位置づけ、OCPの仕様をベースに設計したうえで、Helionの仕様をOCPに提供する計画を示している。

構成は大きく2つある。1つは、ハイパースケーラーやネオクラウド向けのCPUだけのラックで、第6世代EPYC(EPYC 9006シリーズ)を搭載し、1ラックで最大32,768のCPUコアを扱える。もう1つは企業向けで、CPUとGPUを1つのラックにまとめた構成だ。GPUにはInstinct MI350Pを使い、1ラックに最大16基を搭載できる。

図1 AMD Helionの構成AMD発表製品ページより

出典:各社・各団体の公表資料をもとにSEMICON.TODAY編集部作成

図2 AMD Helionの主な数値

出典:各社・各団体の公表資料をもとにSEMICON.TODAY編集部作成

基礎から理解する:なぜAgentic AIでCPUが重要なのか

Agentic AIは、AIが質問に答えるだけでなく、検索、計画、コード生成、外部ツールの呼び出し、検証を組み合わせて作業を進める形態である。この処理では、GPUの計算に加え、ツールの実行や処理の段取り(オーケストレーション)、データの出し入れをCPUが担う場面が増える。KV Cache、RAG、検索用データベース、モデルデータの保存も扱うため、ラック全体の設計が問われる。

図3 Agentic AIでCPUの役割が大きくなる理由

出典:各社・各団体の公表資料をもとにSEMICON.TODAY編集部作成

NVIDIAとの違いは“オープン”の打ち出し方

NVIDIAの強みは、GPU、CUDA、NVLink、DGX/HGX、Spectrum-Xを組み合わせた垂直統合にある。これに対しAMDは、OCPの標準に基づく参照設計を前面に出し、サーバー大手やODMとともに構成を作る。顧客にとっては、調達先の多様化やカスタマイズの選択肢になり得る。

AMDはHelionのパートナーとして、Cisco、Dell Technologies、Hon Hai Technology Group(Foxconn)、HPE、Lenovo、QCT、Supermicro、Wiwynnを挙げている。

注意すべき点

オープンであることは採用を保証しない。AIインフラでは、ドライバ、ライブラリ、分散処理、推論サーバー、監視、障害対応、モデルの最適化といったソフトウェアの成熟度が重要になる。Helionの評価は、発表資料ではなく、実運用での性能、TCO(総所有コスト)、採用事例で決まる。

発表時点で、Helionの採用顧客は公表されておらず、性能のベンチマークも示されていない。なお、AMDには名称の似た別のラック製品「Helios」があり、混同しないよう注意が必要だ。

まとめ

AMD Helionは、AIインフラ競争がGPU単体からラック単位へ移ったことを示す。Agentic AIでは、GPUに加え、CPU、メモリ、ネットワーク、ストレージ、ソフトウェアが一体で必要になる。AMDはEPYCとInstinctを組み合わせ、OCP仕様ベースのオープンなAIラックを提示した。

NVIDIA一強が続く中で、Helionは顧客にとって重要な選択肢になり得る。ただし勝負は、11月以降の実際の提供、ソフトウェアの成熟度、TCO、採用実績で決まる。

用語解説

用語説明
AMD HelionAMDが発表したAgentic AI向けのラックスケール参照設計。OCP仕様をベースとする。
Agentic AIAIが複数ステップで計画、検索、実行、検証を行う形態。CPU、メモリ、ネットワークの負荷が増えやすい。
EPYCAMDのサーバー向けCPUブランド。
InstinctAMDのデータセンター向けGPU(AIアクセラレータ)ブランド。
ラックスケールサーバー単体ではなく、ラック全体を1つの計算単位として設計する考え方。
ハイパースケーラー/ネオクラウドハイパースケーラーは超大規模クラウド事業者、ネオクラウドはAI向けGPUクラウドに特化した新興事業者。

出典(Sources)

・S1|AMD|Introducing AMD Helion, Agentic AI Compute at Rack Scale|2026-10-12

本文での主な参照箇所:AMD Helion、OCP仕様ベース・仕様提供計画、第6世代EPYC、MI350P、32,768コア、11月提供予定、パートナー

・S2|AMD|AMD Helion Agentic AI Rack|2026

本文での主な参照箇所:構成(Hyperscale/Enterprise)、EPYC 9006、MI350P最大16基

※本記事は各社・各団体の公表資料および報道をもとに作成したものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の公開情報に基づきます。
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